形式:単行本
出版社:白水社
どうでもいいような雑学だが、マトリョーシカ人形が日本の人形を真似た19世紀末の産物だというのは初めて知った。伝統的と思い込んでいたものの意外な新しさ。
どうでもいいのですが、ロシア人の美食エピソードとして「彼は鶏にはトリュフを与え、ザリガニを水ではなくクリームとパルメザンチーズのなかで飼っていた」というのがあって、ザリガニはあっという間に昇天しそうだなと思いました。あと、ムソルグスキーがペテルブルク(西洋的な音楽)から離れてモスクワに惹かれていくところで「友人たちはみな」「生真面目なサンクトペテルブルクの作曲家たちよりも彼の飲酒癖に対して寛容であった」とあり、”ちょっと待って、その人たち悪い人よ?”みたいな気持ちになりました(※アル中が遠因で死にます)。
それから本当にどうでもいいのですが、トルストイが出てくるあたりで、「農民のように大地に生きることを夢見た」トルストイが、「豚の世話が嫌いで飢え死にさせてしまった」「すぐに彼はうんざりしてしまい、農業労働者を雇ってすべて任せることにした」「日中はヤースナ・ポリャーナの畑で働くが、その後は屋敷に戻ると、白手袋をはめた給仕にかしずかれて夕食をとったのである」みたいなことが書かれていて、レフ……! そんなあなたが好き! みたいな気持ちになりました。
ペテルブルクはアンシャンレジームの貴族的ヨーロッパを思わせる都市でり、モスクワこそが我々の想像する熊と変わらない大酒飲みが暴れ回る都市だったようだ。トルストイやチェーホフなど自分でも知ってるような文豪や、絵描き、工芸品の担い手、バレエなど舞台芸術を作っていた人の伝記に交えて文化状況が語られるのも、まったく疎い分野の話だけれどどうにかこうにかついていけてる理由か。農村の話は過酷すぎて大変つらい。下巻はソビエトの時代に入るのかな。
2021年7月の新刊。『戦争と平和』読み返したくなるな。文化史は面白い。読むのに苦労するけれど。
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どうでもいいような雑学だが、マトリョーシカ人形が日本の人形を真似た19世紀末の産物だというのは初めて知った。伝統的と思い込んでいたものの意外な新しさ。