形式:単行本
出版社:立東舎
カメラマンの石原興にとっては現場の苦し紛れで、スケジュールが怪しいためダブルでも誤魔化せるようにとの発想からだった緒形拳の顔の黒塗りは、製作補の佐生哲雄に言わせれば「気狂いピエロ」のオマージュである、という齟齬なども興味深い。現場の声とは自ずと異なるであろう、メインのプロデューサーや監督、脚本家のインタビューが可能であればもう少し立体的な観点で改めてシリーズを俯瞰できたろうが、今となっては叶わぬ願いだしそこが本の眼目でもない。しかしそれより個人的に物足りなさ過ぎるのは、音楽に関する言及がほとんどないこと。
必殺シリーズの魅力の60パーセントくらいは音楽だと思っているし、その功績のほとんどは平尾昌晃ではなくアレンジャーの竜崎孝路にあるのではないか。必殺シリーズが始まった70年代以前のポップミュージックといえば、ロックでも歌謡曲でもなくジャズであり、作曲や編曲、スタジオミュージシャンにもジャズフィーリングが残っていた時代である。従って、サウンドトラックでもセッションやヘッドアレンジが主体になるであろうことは想像に難くない(尤も平尾もジャズ出身だが)。続巻では比呂公一のインタビューが予告されているが、どうなるか。
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