形式:単行本(ソフトカバー)
出版社:イースト・プレス
もちろん自分も自民党政権の虚偽や異邦人たちへの差別に対する途方もない嫌気には同意する。だが、それだけだ。ここにはそれしかない。そして小説は本当にそれだけでいいのか。本当に問題はそんな簡単なことなのか。むしろそれは一見自民党や差別を憎む私たちの中にすらあるものこそが最も難しくて厄介なものではないのか。この小説を読んでも自分は自分の中にある自分ではない「相手」への軽蔑や憎しみ、それらに対するくだらない感情が確認されただけだった。
読む前と読んだ後で自分はなにも変わらなかった。それこそこの小説で愚かな人間として描かれた語り手となにも変わらないのではないか。この小説は中野正彦を徹底的に愚かしい「他人事」だと思っている。書き手が本当に描きたかったことは中野正彦は自分たちだということではないのか。いや皮肉なことにそれは成功している。中野正彦は中野正彦にとって他人事なのだ。だから中野正彦を他人事だと思う作者も読み手である僕らも「中野正彦」なのだ。そしてこの本はそうした私たち「中野正彦」によってこの社会から葬られたのだろう。
しかしこの小説の主人公はいわゆる「ネトウヨ」とは違う。博識である。ネトウヨである時点でアホなので、アホなことは確かなのだが知識はある。ネトウヨはWILLやHanada、産経くらいしか読まないだろうし、映像はYoutubeが限界だろうが、主人公は映画や文学にも通じている。いや、だったらネトウヨならんだろーって思うがそこをツッコんだらお話にならないか?安倍政権持ち上げが過ぎて、「褒め殺しと見せかけた痛烈な皮肉」にしか見えない箇所がいくつかあった。終盤の展開は自分のなかでは賛否両論。悪くはないが。
正直、思ってたのと違った。もっとリアルなネトウヨの脳内が覗けると思っていた。まあ、ネトウヨの日記をやったら小説にならんのだろうけど。逆にこれのリベラル版もあったら面白いのではないかと思った。日本のリベラル陣営のアホさも深刻だからな。
うわぁコレ楽しみにしてたんだけど自主回収なのですかー…。幻の本になっちゃった…残念
おかむらさん。まさに「幻の本」といわれて、高額がついてます。自主回収も、転売も、残念。
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