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兆民先生 他八篇 (岩波文庫 青125-4)

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壱萬参仟縁
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エフ文庫。誕生日の今日、この本の解説に書いてあることで私は救われた。幸徳秋水は中江兆民の人生を、基本的に失敗と受けとめている。革命家、政事家、商人に敗れ、文壇にも受け入れられることなく死んでいった悲劇の人生。しかし、兆民はみずからの失敗を笑い、団欒を楽しみ、酒を愛し(今、私も呑んだ)、文楽、義太夫を楽しむ余裕があった(167-8頁)。俺みたいな人なのかもしれない。「窮困し、尽(ことごと)く其蔵書を売尽すや(略)読むを楽めり」とある(40頁)。貧乏さは、豆腐のかけらに野菜の浸物は少し(89頁)に垣間見れる。
0255文字
棕櫚木庵
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1/3) 兆民のある伝記を読んで,兆民その人も印象的だったが,兆民を師と慕う人々の兆民への思いにも感動した.たとえば透谷の「兆民居士安くにかある」(短い文章で青空文庫で読めます).表面的には激しい言葉で兆民を批判しているが,その根底に深い敬愛の念があることは明らかだろう.そして,この秋水.秋水がここで描き出す兆民の言動の多くは,すでにあの伝記でも述べられていたが,初めて聞く話もあり,兆民の姿を彷彿とさせる.本書に描かれている兆民の姿から,突飛だけど,「坊ちゃん」を連想した.
棕櫚木庵

2/3) しかし,なによりも兆民と秋水の師弟関係が印象的.たとえば,「秋水」の名をもらい受ける際,兆民と秋水との間にこんなやり取りがあったという.兆民,秋水に,汝,義理明白に過ぐ,春藹を雅号するがよかろう.秋水答えて,我,甚だ朦朧を憎む.別の名を選む所を乞う.秋水笑って,では,秋水を用いよ.これは「春藹」の反対で,自分が若い頃使っていた号だ・・・(p.49, 大意).自分と似て「義理明白に過ぐ」秋水を危ぶみ,かつ愛した兆民の姿が目に浮かぶ.その危惧が的中してしまっただけに一層痛ましい.

02/13 18:17
棕櫚木庵

3/3) 【余談】ある兆民伝にあった話.兆民たちが討幕方法を議論しているのを聞いた龍馬: 幕府は倒れる.だから,倒す方法を議論するのではなくて,夢でも見ないか.こんな日本になってほしいという夢をよ・・・.龍馬の魅力を彷彿とさせる逸話だが,本書にこの話はなかった.出典は何だろう?

02/13 18:18
0255文字
NAGISAN
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NHKの「100分de名著」で『三酔人経綸問答』を取り上げていたので読書。ルソーの思想を広めた人物としていつかは読みたいと思いながら、最近はルソー思想自体も下火になり、機を逸してしまった。漢文調なので読みづらいが、江戸末期から明治にかけて活躍された方の人生や思想・行動は面白い。本書は、弟子の幸徳秋水の手によるもの他であるが、時の政府に対峙した兆民が浮かぶ。土佐生まれで長崎・海外に遊学、明治20年の保安条例により思想家が東京から追放され大阪が中心になったこと、貧窮生活、堺の浜寺で逝去されたことなど。
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うさえ
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幸徳秋水と中江兆民の師弟愛に胸を打たれる一冊。漢文訓読調で綴られる文は、声に出して読みたくなる。なかなかお目にかからない漢語も多用され、調べると思いもよらない意味だったりして、予想外に楽しかった。また、校注者である梅森直之氏の巻末解説では、「士人的エトス」「文章経国」といったキーワードを手がかりに、二人の関係と差異が論じられており、非常に参考になった。自らの号「秋水」の使用を愛弟子に許した際の兆民の心配が、その後、残酷なまでに的中したことを、私たちは知っている。至誠を以て相対した師と弟子であった。
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読書メーター
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中江兆民と幸徳秋水が師弟関係にあったことくらい今まで読んできた本のどこかには書いていたはずだが全く覚えがない。『兆民先生』というタイトルと著者名で、「え、もしかして」と驚く始末だ。そんな無知なおれにとってもこの本は滅法面白く、プラトンの対話篇を読んでソクラテスに惚れ込むようにまんまと兆民先生に惹かれてしまう。文語っぽいのは久しぶりでやや苦しかったが、幸徳秋水は文章が上手いから何とか楽しんで読めた。調子に乗って兆民『三酔人経綸問答』でも再読するかと思って本棚を探すも、売ってしまったようで手元にない。悲しい。
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