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歌というフィクション

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タイコウチ
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時枝誠記、吉本隆明、菅谷規矩雄の言語論・詩論を援用し、日本(日本語/日本社会)における歌(古代の祭式から始まり短歌・俳句、長唄・浪曲、民謡・童謡、歌謡曲・ロック・ラップまで)の成り立ちについて論じる。「反復を生み出すことによって世界を分割し、理解・共有することが出来るものにする装置」としての音楽を踏み台にして(=歌を通して)「われわれは、すでに失われたもの、まだ見出されていないもの、もともと存在していなかったものをふたたび有用化するための条件を整える」。一読しただけでは広範な議論と深い洞察を咀嚼しきれず。
タイコウチ

「リズム」の共有が人間の言語活動の前提だとすると、90年代以降の日本で世代を超えて共有される「歌」がなくたってきたという時代の流れもむべなるかな、という気もする。共有される歌がなくなってきたのは、日本だけではないかもしれないけれど、英語圏の歌ではまだなんらかの形式で韻を踏むという伝統が残っていると思うので、日本語の歌ほどばらけてはいないのではないだろうか。

02/04 16:38
タイコウチ

ちなみに本書の文体は、常体と敬体、書き言葉と話し言葉がおそらく意図的に混交されています。それが現在(いま)の日本語なのだ、とでもいうように。

02/04 16:41
4件のコメントを全て見る
0255文字
yoyogi kazuo
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もう一冊の「Twitterにとって美とは何か」の理解に役立つかと思って読んでみたが、一読してその目的は未だ果たされず。音楽批評エッセイとして面白い箇所は多々あるものの、まとまった「論」としてはちょっととっちらかってる印象は否めず。菊地成孔が「令和軽薄体」と名付けた文体は好き。
0255文字
しゅん
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少しずつ読みながら二周読み終えたのだが、とんでもない書物であると改めて思う。ポップミュージックと詩と芸能が共通に立つ位置としての「うた」の原理論と歴史論が、同時進行で書かれる。その中で、独創性を否定する内田裕也のロック思想や、アドルノにおける「集中的聴取」の内実や、橋本治の論をバネにした講談とサンラの「叙事詩」性などが語られる。その一つ一つの話が、一冊の本のネタになるような濃厚さ。しかも、全体が鏡移しの構造を持っている。あまりに雑多なのに、やたら統一感がある。まじで、どうやったらこんな本かけるんだ。
しゅん

鏡移しというのは、全体が九章設定で、たとえば最初1-1と最後9-3はともに國枝誠記の議論が参照されていて、2-1と8-3はともに美空ひばりが登場し、3-3と7-1はともに戯曲の書き方がされている。短いインタールード的な5章を挟んで、全体の章構成が鏡像関係になっている。この鏡のかたちがどのような効果を持つかは簡単には言えないが、読んでるとなにか眩暈に近い感覚に囚われて楽しくなる。そして、本書はリズムの強制的な共同性を、どのように受け入れ、どのように抗うかという主題を持つ。政治的な問いが本書の中心にある。

08/29 15:51
0255文字
ザフー
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前読が面白かった大谷能生さんの新刊、届いて厚さーー薄い紙で七百に近い頁数に驚く。しかも出だしは吉本隆明『言美』〜國枝誠記という日本語言語論ど真ん中直球のような。だが核は、菅谷規矩雄という詩人・文学者の日本語の詩・リズム論に端を発するようだ。歌/言語における行為/反復とフィクショネス/社会性という切り口で貫かれているのかな?骨のありそうな論旨を捲くるだけで、深沢七郎、スピッツ、RC、宇多田、と飽きなそう。菅谷の難解詩から突如岡村靖幸が出てきたりと予測困難な流れは楽しみ。しかしちゃんと読めるのはいつになるか。
ザフー

しかし、もう少しコンパクトで鋭い本にしてほしかった気がする読前感。

08/10 14:26
0255文字
しゅん
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「「二度と起こらないことを繰り返す」というフィクションを共有することによって、はじめてぼくたちは、社会的存在として生きることが出来るようになるのである。」國枝誠記、吉本隆明、菅谷規矩雄の言語論を分析道具として、浪曲からラップまで、童謡から椎名林檎までの日本の「うた」を綴りまくっていくべらぼうな大著において、最後の宇多田ヒカルの章に登場する上記の言葉が大谷の立場を最もよく表している。仮想(フィクション)の反復という現象が、複製芸術と演奏の関係への尽きぬ興味と、鏡移しになっている本書の構造を支えているから。
しゅん

とりあえず、音と言葉の関係を探るうえでの必読書であることと、めちゃんこ面白いということは強調しておきたい。

04/26 15:53
0255文字
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