形式:単行本(ソフトカバー)
出版社:左右社
形式:Kindle版
出版社:左右社*
企画がうまくいっても男性上司や同僚、あるいは読者からもバッシングを受けたりと、当時の状況がわかると同時に女性の置かれていた立場は今もあまり変わっていないように感じました。当時の職業や流行、価値観を知るという意味でも、また今や死語となっているであろう「ブンヤ」という言葉に込められたニュアンスを理解できたという意味でも、非常に刺激的な書籍でした。巻末の『化け込み』記事の一覧や参考文献、人名索引も親切です。
この本、高橋源一郎さんがラジオ番組で紹介しておられました。普通には知ることのできない面白い世界もあれば、必死の潜入取材まさに命がけの取材もあり、なかなか興味深いですね。
とよぽんさん、情報ありがとうございます。 女性記者たちの、文字通り身体を張った取材の数々を読むにつけ、男社会で生きる先駆者であった彼女たちの努力と勇気がすごいなぁと思いました。そして、当時だからこその職業があって、それもまた面白かったです。
化け込み記事は読者の人気が高く、ついに、大手新聞社にも波及した。、朝日に対抗した「読売」は小川好子を送り出す。「明日の夕刊から新連載 婦人記者の変装探偵記”貞操のSOS” 」、うら若き婦人記者が上野公園の西郷さんの前で一人でいると、男が夜は危険だからとか言い寄ってきて(途中省略)連れ込み宿に引き込み、まさに貞操の危機!そこで、水戸黄門の印籠のごとく 天下の大新聞の名刺をかざし、男はひれ伏す。ネタバレしてしまった。 この潜入シリーズは、ダンスホールなど場所をかえて19回も連載が続いた。
本書の1章から3章までは化け込み記事のスターの話で、4章は化け込み記事の総集編になっている、三味線弾き、電話消毒婦、女中奉公、ダンサー、百貨店店員など、絵画モデルというのある、化け込み婦人記者は報酬の高いヌードモデルとして派遣されアトリエについたところで記事は終わっているそうだ。
つくづくと考えてしまうのは、100年ちょっとで人間の実態が変わるものではない、しかしメディアはどんどん変わる、同じ歩調で進むのは端から無理なのだ、ということか。本書が描くのは新聞メディアの勃興期、そして現代はデジタルメディアとしての原始時代。女性記者への揶揄・非難・蔑視など、今のコメントにそのまま通用する。性的対象としての視線もまた。SNS上で日々繰り広げられるアテンション・エコノミー=読まれる話題は金になる、とどんだけ違うというのか。■P.ムーア『私は三年間老人だった』を始め、現代でも「化け込み」作品⇒
は数多く書かれている。それらに比すると、ここでの記事は長くて一ヶ月、短いのは一日で終了した取材が基になっていて、軽い。だが、そこから窺い知れることは多く、今の視点で見て、初めて分かることもまた沢山ある。■著者の本では以前『明治 大正 昭和 不良少女伝---莫連女と少女ギャング団』を読んで、そっちが面白かったので、本書を読んだ。大変に労多くする仕事だが、大変貴重なので、まだまだ精力的に続けて欲しいと思う。
表紙のカットイラストゆるくてかわいいな~と思っていたら当時の新聞の挿絵からの引用なんですね。絵師も装丁家もいい仕事してる。
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