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山県有朋-明治国家と権力 (中公新書 2777)

感想・レビュー
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MUNEKAZ
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やっぱり山県は裏でこそっと動く部分が多くて、その辺が黒幕感を醸しだして印象良くないよねというのが素直な感想。第二次政権時で見せたような絶妙な調整能力こそ、この人のキモというか際立った部分だと思うので、同じ調整型の鬼のような原敬を評価したのは納得。大隈や伊藤のように理想を求めるのではなく、「尊王」を軸に自らの信じる国家像を守るために、愚直に尽くした生涯をよく伝えている。こういってはナンだが、明治帝より先に亡くなっていれば、もっと上向きの評価を得られたのではないかとも思ったり。時代に追い越されてしまった悲劇。
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きじょん
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明治国家の立役者ながら、権威主義者、軍国主義者として圧倒的な不人気を誇る山県有朋。著者はそうしたヒール観を退けようと試みていて、贔屓ぶりにうーん…な部分も。ただ、膨大な資料を読み解いていて、権力維持の手練手管を知悉し、明治国家と自らの運命を一体化させた大政治家としての山県が描かれている。 一方、統帥権の確立や教育勅語の発布は国家のためとの意図があったにせよ、その後に何をもたらしたのか。設計を担った山県の責任についての言及はない。 山県についてはもうちょい勉強したいが、「ヤな奴感」がすごくて読書が疲れます。
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佐々木 一博
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山県を中心とした明治・大正政治史。登場人物の多くは軍人にして政治家。その意味ではけっこう武家政権の続きの面もあったのか。
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ジェイドメタル
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やたらイメージ悪いけど、この人維新元勲、元老として相当まともに仕事してるのでは。逆に言うとなぜイメージ悪いのか?
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すずゆい
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★★★★☆ どうしても宮中某重大事件のイメージが強く、黒幕、みたいな印象が強かったが、彼もまたこの国の為に生きた人だった。ロシアの危険性を常に感じ、動いていたところとか、軍人ゆえの着眼点かなと思った。幕末から大正まで生きた彼は骨太な政治家だった。今こそ存在してほしい。でも、彼の本質は武士だったんだろうな…と感じた。
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太郎
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山県有朋の軍国主義や国葬に関する話への誤解が解け、知見が広まった
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健
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ロシアと対峙するための陸軍の増強には熱心だったが、その軍隊の発動については極めて抑制的であったし、アメリカをはじめとした周辺国との協調にも積極的であったことが読み取れる。社会運動や、政党活動には批判的で、常に官僚の側に君臨し、天皇中心の国家建設を目指していたようだ。そのため、後世になって山縣有朋が軍国主義の権化であるかのような虚像が作り上げられたみたいだけど、晩年は右翼団体にも命を狙われていたというのだから、山縣有朋の事、かなり誤解していたような気がしてきた。
健

▼陸奥、伊藤、原、山県と4名の政治家の話を読んできたけど、政治・権力闘争の部分で、各人の主義主張の中味の区別が判別し難くて、読んでいるうちに興味関心が薄くなって読書スピードが落ちてしまう。残りは、板垣と大隈を読む予定なのだけど、取り掛かるかどうしようか悩ましい。

06/25 16:18
成

どうしてあの戦争をという着眼点からいうと、近衛文麿とゾルゲ事件というのは、きわめて興味深いかと思います。

07/01 11:52
0255文字
インテリ金ちゃん
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山県有朋のイメージが変わった。伊藤博文、桂太郎、大隈重信などとの関係性も興味深かった。明治から大正時代の概要が理解できた。
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takao
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ふむ
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4492tkmt
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明治時代を知りたくて手に取った。日本史の授業では、近現代史は駆け足で暗記だけの知識しかない。これを読み、山県有朋だけでなく、西郷隆盛、伊藤博文、明治天皇、桂太郎、等々、名前となんとなくのイメージしかもっていない人たちが、一人の人間としてリアルに立ち上ってくる。結局は一人一人の人間の行動が国や歴史を作っていると分かる。また、西南戦争や廃藩置県、大正デモクラシーや普通選挙など、それぞれの事象や制度の理由や背景が見えてくることで、近現代史がリアルなものに感じられる。日本史で2次試験を受ける国立大受験生必読か?
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Tomozuki  Kibe
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司馬遼太郎が「明治政界に巣くう法皇」と叩き、 岡義武に「これだけ研究すると大概好きになるが、こいつは…」「晩年になるほどいやになる」と言わしめた明治の巨人を真正面から再分析。 文春の同名書は「ぼくは山県大好きです!」と騒いでるだけで、どこがいいか、先行研究批判0でごみ箱に入れた。 地方自治に対して肯定的とは知らなかった。ともかく先人研究からのバッドイメージは少し減らした。 あくまでも「尊王」が彼の教養の根っこ。さらに政党を容認する桂とも晩年は離れていたんですね。でも安倍さんが好きだったのは岡の山県ですが。
Tomozuki  Kibe

日露戦後、山形の権力は後退197p桂の山県離れ199p 桂の戦後の大陸経営は秦の巻き返しを呼ぶ?伊藤懸念200p山県の権力外交は国力を超えた軍備構想に201p大逆事件…社会主義禁止法と窮民法ビスマルク的対応・南北朝問題210p辛亥革命⇔「尊王論者」山県は脅威213p大正政変「山県=桂」ではない。桂は新党・立憲同志会作り軍拡押さえるはいいが「勅命」に頼りすぎて顰蹙220p桂は日英同盟から「反山県」へ222p日露後は官界での山県の影響力後退222pWW1参戦に山県批判的⇔大隈は世論受け参戦227p

04/11 05:03
Tomozuki  Kibe

大隈の暴走・反袁政策229p山県の軍拡案は非現実的・19cの権力外交239pドイツ革命・ロシア革命に刺激された山県は森戸辰雄を弾圧253p 軍勝には普通選挙容認「軍の大衆化」原に期待256p近代国家は軍国主義であり、山県だけじゃない275p ポピュリズムと無縁の山県は二十一か条要求などから超然277p⇔大隈はポピュリズム政治家・二十一は「国民の意思」277p昭和の軍の台頭=山県は早計。政治対立から超然とした「天皇の軍」が山県の望み278p 天皇の政治利用をしちゃった桂は失脚282p

04/11 05:19
7件のコメントを全て見る
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本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
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☆ serial number 062(2024:Mar.-20) ☆ 維新の元勲(三傑に続く世代)のひとりである山縣(山県)有朋は「分かりにくい人物」だというのが学生時代からのぼくの認識だ。この分かりにくさは山県という人物を陰影の中に押し込んでしまう(いわゆる「黒幕」)。同著はそうした固定観念を丁寧に解きほぐしてくれた。読了後の認識として,この人物は終始一貫した尊王家であり武人であり,大攘夷(帝国主義諸国の中に伍して生きる道を求める考え方)思想の持主であっただろうということだ。=場合により続く=
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とまとくん
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軍国主義の山縣氏のイメージを覆していただきました。幕末動乱の時期から、光を浴びた偉人たちとは少し雰囲気が違う人物と思っていましたが、その理由を丁寧に紐解いてくれたようでした。あくまで尊皇派であり続け、軍人が政治に関与してはいけないとの道筋が、山縣氏の独特な雰囲気を作り上げていたのですね…。
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預かりマウス
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堅実な伝記である。元老や明治の政治家の中では最も私の共感できる思想・世界観を持っている人だということがわかった。時に誇大的な見解を述べたりもするが、実際の政治的判断の場においては大隈などより遥かに慎重でバランスが取れていた。大正期の黒幕と言われるが、実際には桂、寺内ら子飼の面々には無視され裏切られ、一般には彼らの親玉として悪評だけ買い続けるという孤独な晩年であった。本来逆の立場であるはずの原敬と連携して二人三脚で徹底した反ポピュリズムを貫き、原が暗殺されてから一気に気力をなくして死んだのも皮肉なことだ。
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Ra
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かの有名な「明治日本の象徴」(岡義武)であるが、どこか伊藤博文との対比で保守的・権威主義的なイメージが先行し、伊藤没後には元老筆頭として絶大な権力者であったイメージの山県。しかし、「自治元来是国基」として開明的(民主主義的)な地方自治制度を構想し、むしろ伊藤や井上毅の抵抗を受けたり、明治終盤からは桂・児玉の挑戦により権力基盤が動揺したり、原を筆頭とする政党勢力との妥協を画策したりと、その実像は一様に語ることはできない。特に、憲法・地方自治・徴兵制の制度的連携を構想し、直接選挙の公選制を唱えたのは興味深い。
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ジュンジュン
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陸軍の育ての親、山県閥を構築、死ぬまで権力者などからマイナスのイメージが強かったので、日露戦争前後までに挙げた功績は意外だった。多分、有朋は生きすぎたんだと思う。きっと明治と共に退場していたら、伊藤博文みたいに”お札の顔”になれたのでは?晩節を汚すとまでは言わないが、晩年の権力に固執する姿(イメージ)が今も彼の功績を覆い隠している。
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jntdsn13
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山県有朋の評伝。特にバランス感覚と老獪な政治的嗅覚の強さをもとに元勲まで上り詰めた(Grand Strategyのレベルになると遊離する傾向があったが)という確かな能力に、そこに陸軍の形成とともに権力を掌握して伊藤と追い付き追い越せをして権力の絶頂にのぼりついたものの、老いてやがて「維新の志士」の地が再び姿を現し消えていったという時間軸が加わった、そういった描き方だろうか。山県の(ある主担淡々とした)評伝として良くまとまっているので人にお勧めできるが、個人的には同じ新書でも「軸」のある伊藤之雄の方が好き。
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三原城の守り人
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Praesumptio cedit veritati
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山県有朋の評伝。本書を読む前は、陸軍創設時の実務を担い、首相、元老として政治面での保守的な印象と利益線演説ゆえの海外侵出志向のイメージがあった。本書を読んで、海外侵出には抑制的な判断も随所にみられ、壮年までは利益衡量を行う現実主義者として(また、特に徴兵、地租、地方自治等では「能吏」として)振る舞う局面が多い印象を受けた。晩年、その権力が斜陽を迎える中で判断が硬直化し、勤皇志向等の原則主義者として振る舞う局面が増えていった印象を受けた。晩年の桂太郎との確執も、なるほど避けがたかったのだろうと腑に落ちた。
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プリン
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元老山県の最新の評伝。以前から気になっていた山県と地方自治についてもけっこう紙幅が書かれていて大いに勉強になった。
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iwasabi47
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地方改良に興味があったので。よく言えば保守主義。理念型の伊藤に比べて、弁の立たない山縣は根回し型。目を掛けた桂や児玉に離れ先立られ、ズレていく山縣に歳を取るのは難しいと感じた。
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渡邉 創
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幕末の志士から明治の政治家となり、日本軍国主義を築いたといわれる山形。明治半ばの民権運動から憲政への流れ、そして地方自治と徴兵のつながり、国を考える方向の一つとしてなにを目指していたかがよく理解できた。
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山家
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改めて山県有朋の巨大さを感じました。郷里の長州に必ずしも拘らず、有能な官僚を引き立てて可愛がっており、山県閥を形成して、内閣を運営し、国内外の政治を動かそうとする。勿論、軍人としても様々に巨大な功罪を挙げる。その一方で、「尊王」というぶれない一点を持ち、「一介の武弁」と自己定義もしているという。ある意味では愚直な人だと思います。そして、国力無視の軍拡を図ったのは遺憾ですが、外国との協調にも注意を払っており、そういった点でも有能と改めて感じました。それにしても、後継者には恵まれず、離反されたのが気の毒です
虎っち

私も今読んでいます。歴史新書yから出ている『山縣有朋の奇兵隊戦記』という本もお勧めです。 晩年になると老害化が進んできたなとも思うんですけど、一貫して英米との協調を前提にした外交観念を持っていたことを改めて知れました。自身の子息と合わせて後継者に恵まれなかった人生が悲劇的ですね。

01/08 16:29
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Satsuki
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自分の山県イメージどおりの部分、イメージが少し変わった部分がある。利益線、軍事と権力外交重視の思想、藩閥・官僚閥あたりは正に従来のイメージ。一方、徴兵制の官僚的軍隊建設、帷幄上奏権の拡大制御といった点に見える、「公」を重視した軍事と政治との分離は、従来イメージと異なった。しかし、結果論だろうが、軍自体が政治主体として振る舞うようになるとこの制度設計はどうだったか。また「往々にして日本の国力の限界を超える軍備構想」がその後日本に何をもたらしたか。更に明治末期から大正には、山県の思考は時代遅れではなかったか。
0255文字
nishiyan
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政治史学者岡義武から「明治日本の象徴」と評された山形有朋の評伝。武士階級の中で最下層に生まれた有朋が尊王に目覚め、下関での外国との戦いで開国論へと転身していく様はまさに明治を体現している。奇兵隊と途中で縁が切れたことで地縁ではない官僚派閥を形成するに至ったのは運の強さもあったのだろう。ただ権力を維持する過程で、桂太郎や児玉源太郎の離反があっただが…。長い軍人政治家生活の中で、揺るがなかったのは尊王だったというのは興味深かった。
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onepei
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原敬と理解しあう仲だったとは知らなかった
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みこ
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知名度のわりに推されていない印象の人物である。改めて彼の人生を振り返ることで奇兵隊から原敬暗殺までと幕末~大正間の日本の歴史を網羅できていることを思い出させる。彼目線だとちょっと我を通そうとしたら人々が自分の元から離れてしまいましたと寂しい感じになるが、それでもその道を貫き通したのだから相当強靭な精神の持ち主だったのだろう。高杉晋作が生き延びていたら似たような感じになっていたのだろうか。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)

☆ ナイスありがとうございます。横レスです。私感ですが,もし高杉晋作が生きていれば山県有朋はその副官として長く使えたのではないかと思います。同じことは桂小五郎(木戸孝允)と伊藤博文との関係にも言えるかと。維新の第一世代と第二世代は絶妙なバランスだったと思いますが,薩摩の二人(西郷と大久保)も含め世代交代がやや早過ぎたのかもしれません。反面,近代国家としての成立期の混乱を考えるとこれも止む無しかとも思います。長文駄文失礼。

03/28 09:45
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)

☆ 誤変換があったのでお知らせまで。×「使えた」→○「仕えた」。本稿ナイス不要です(;^_^A 駄文失礼。

03/28 10:06
0255文字
keisuke
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変化が激しい時代であることと、自分の知識が不足していて、難しかったです。
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孤独な読書人
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ネタバレ元祖老害と言われそうな山県有朋の評伝。 いろいろな山県有朋の評伝を読んできたが、一番バランスが取れているように見えた。 本書でやっと山県閥の実態が見えてきた。山県閥とは近代的な官僚制度が整う前に官僚になった藩閥官僚達が政党に対抗するために山県のもとに集まった官僚閥だった。そのため近代的な官僚制度が整い、制度の下で官僚になった者達が増えていくにつれて、山県閥はより山県有朋という権力に依存するようになったと思った。そのため山県閥は何かの政策集団というわけではなく、実態のない存在だった。
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wuhujiang
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山県についてしっかりしたものを何か読んでおきたいなと思っていたところなのでよいタイミングだった。山県は政治の中枢にいた期間が長い。彼が情勢によって柔軟に意見を変える力を持っていたことは近代日本に良い影響があったとは確信できた。政党政治家ではない官僚政治家だが政党政治とうまく付き合い、地方分権や普通選挙には理解を示すといった難しいキャラクターがわかりやすく文章に落とし込まれている良い本だと思った。
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skunk_c
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明治時代重職を担い続けた軍人政治家の評伝。高校の歴史総合教科書にも登場する「主権線と利益線」など、膨張主義的なイメージがあるが、本書ではそうした見方を丹念な論証で退けている。また超然主義内閣でも有名で、確かにかなりの議会嫌いではあったようだが、晩年は原敬を高く評価するなど、必ずしもそうした意識一辺倒ではなかったようだ。ただし藩閥権力を重視していたのは確かで、それ故に子飼いだったはずの桂太郎などが後に離れていく。またかなり振幅の大きな人物だが、金にはきれいだったようだ。といっても椿山荘の主人だけどね。
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みずち
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超政治的な「天皇の軍隊」を造り上げようとした軍人・官僚政治家の一生。 新たに確認された数多くの意見書などの史料を丹念に読み解き、単純な反動・軍国主義者という人口に膾炙した山県イメージを斥けている。最新の知見を盛り込んだ評伝としては、伊藤之雄の肩入れ過剰なものよりも比較的冷静な筆致のこちらの方が勧められる(伊藤先生の本にも教えられる所は多々あったけれど)。 歳を取るにつれてその原点たる「尊王」に回帰し、自らの権力体と「国家」とを同一視するに至り保守化したという著者の見方には納得感がある。
みずち

著者の描き出す山県像に特に異論はないのだけれど、とはいえ、山県が血道をあげた「独立した軍隊」が、(山県自身の想像も及ばぬことであったとはいえ)結果的にはその後の悲劇をもたらしたのだから、遡及的にその責を負わされるのはある程度やむを得ない所ではあろうし、また、筆者の言うように山県が政党を完全に否認していたわけではなくとも、彼が一貫して政党政治に否定的であり続け、その勢力が政党側にとっての最大の障壁となっていたのは事実であるのだから、その立場から「反動」という評価が出るのも必ずしも不当とは言えまいと思う。

12/27 10:48
みずち

しかし同著者の桂太郎と児玉源太郎の評伝を読むにつけ、内閣による軍隊のコントロールを志向した児玉や、更に進んで政党による統御を目指した桂が早世し、あくまで非制度的な支配に固執した山県が長生きしたのは、日本という国にとっては悲劇だったのかなぁと思わずにはいられない。決して個人としては山県を嫌いではないのだけれど。

12/27 10:49
0255文字
バルジ
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「明治日本の象徴」山県有朋を論ずる実証的な伝記。幕末から大正にかけて近代日本政治の中枢で権力を揮った大政治家の足跡を丹念に辿る。山県のその政治的前半生は「軍国主義者」でも「保守反動」でもない、柔軟な思考に富み有能な才子を使いこなす国家指導者の姿である。決して「武断的」でもなく「反民主主義」でもない現実政治家である。しかし有能な才子達は離反する。桂太郎・児玉源太郎・寺内正毅、みな山県の元を去る。山県は憤激する。その憤激は彼らへの反発とともに保守的傾向を帯び、こうして「反動政治家」山県有朋像が出来上がっていく
0255文字
TSUYOSHI
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岡義武『山県有朋』の感想で私は「山県が権力意志の顕現として自派閥の維持に腐心したとの見方は図式的かもしれない」と書いた。本書を読んでその認識は確かさを増した。山県が陸軍に一大権力を築いたことは事実としても、それは個人的な欲望に根差すものではなかった。明治国家の公共性を私的な党派対立の弊害から守るため、山県は軍部を政治空間から切り離して、軍人がいたずらに政談に興じたり、国家経営に容喙したりすることがないよう睨みをきかせた。終生、山県が「天皇の軍隊」という建前を奉じ続けたのはそれゆえである。⇒(1/3)
TSUYOSHI

⇒また山県は、政党嫌いではあったけれども、議会政治や政党政治を全否定していたわけではない。時代状況の変化を読み取りつつ、陸軍を中心とした官僚政治とデモクラシーとの間で折り合いをつけてゆくのが、山県の政治スタイルだった。その意味で、本書にいう「逆説的な民主主義者」としての山県評は正鵠を射ていよう。ただ惜しむらくは、山県は伊藤博文ほどに透徹した政治戦略眼を持ち合わせていなかったことである。そのことは「統帥権の独立」が孕む瑕疵を温存させ、結果的に昭和陸軍暴走への道を開いてしまう。⇒(2/3)

12/01 08:09
TSUYOSHI

⇒「統帥権の独立」を創出したのが山県である以上、昭和陸軍の専横と山県の間に一切関係はないと断言するのは難しい。元老がみな鬼籍に入る前に、属人的で極端に分立的な統治構造を改め、行政が軍部を統制できる枠組みを作る必要があった。とはいえ、昭和陸軍の独走ぶりは山県の想像を超え出たものだったともいえるし、尊王家にして現実論者たる山県からすれば「統帥権干犯」「昭和維新」などの掛け声は戯言に過ぎなかったであろう。しかも昭和陸軍はこんな掛け声を挙げながら天皇に面従腹背していたのだから、何をか言わんや、である。(3/3)

12/01 08:10
0255文字
辻井凌|つじー
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山県有朋はもっともっと実像を知られて欲しい人物。読まれて欲しい。詳しい書評はnoteに。 https://note.com/nega9clecle/n/n9f1287a9f1fb
0255文字
トロント
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軍の派閥を率いた権力者なので強権のイメージが強いがその実像は寧ろ慎重であり、特に第一次政権から日露戦争までの山縣には柔軟さがあった。とりわけ原則的な尊皇論を繰り返し述べ大正デモクラシーを邪魔したとして晩年は特に嫌われてしまったが大英帝国が300年以上で築いた議院内閣制を50年ちょっとでやろうとした当時の風潮は無茶であり、日本国民最優民族論が本気で正しいと思っていなければ権力者として止めるのは必然である。
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山県有朋-明治国家と権力 (中公新書 2777)評価70感想・レビュー36