形式:新書
出版社:中央公論新社
形式:Kindle版
帝国=悪と見做されるようになったのはウィルソン以後、アメリカは孤立と介入の両極に振れがち、中国は巨大すぎる故分裂状態が基本、多民族を統治する手法という点での古典的帝国と民主集中制の類似性…等々、随所に発見があり楽しかった。他方、全体的には期待ほどの新鮮味がないと感じたのは、おそらく教科書等でも19〜20世紀は自ずと帝国を中心とした記述になっているからだろうか。「〇〇で読み解く」なんて聞くと、「今まで光の当たっていなかった角度から通史を眺めると新しい歴史観が!」みたいなのを勝手に期待してしまっていたが笑
⇒「帝国」を軸に俯瞰すると、19世紀以降の国際秩序は次の4つのタームに分けられるだろう。①「国民国家型帝国」の伸長=「勢力均衡」原理の東漸。②「国民国家型帝国」の溶解=「勢力均衡」の衰微と「共同体」原理の台頭。③「国民国家型帝国」の瓦解と米ソ二大「帝国」の対立=「勢力均衡」と「協調」原理の結合。④冷戦後秩序に対する中露二大「帝国」の挑戦=「勢力均衡」と「協調」原理の綻び。2つの世界大戦は「勢力均衡」の原理が崩れた②から③の時期に起こっているから、④のタームにあたる現在も危うさを孕んでいる。⇒(2/3)
⇒対談では、中国について、歴史的にみて地方勢力が分立していること自然な姿であるが、飛躍的な経済成長を果たした今、そのような分立状態に戻ることを恐怖するあまり、「一つの中国」論に固執していると指摘する。ロシアについても、民主主義が育っておらず、さらにソ連「帝国」に対する誇りが今なお強いことも相まって、強力な指導者を演じるプーチンへの依存度が高まっているという。皇帝はもはやいないが、「帝国的なもの」は現在も、しかも日本のすぐ傍で生きており、国際秩序を揺るがす脅威となっていることがよく分かる良書。(3/3)
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