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絶望 (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-2)

感想・レビュー
160

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弾十六
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1936年出版。植草甚一さんの対談集を読んでたら、本作が紹介されててビックリ。いつものように紹介だけで評価はわかんないんだけど… でもこの作品、ナボコフがかなり探偵小説を読み込んでることがわかる。ミステリ・ファンにも強くお勧めできる問題作ですよ!完全犯罪を目論む男、という話。アイルズ『殺意』(1931)をナボコフは読んでいたのかなあ。
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やいっち
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この数年ナボコフファンになりつつある我輩、初期の作品である本作はナボコフらしさが如実で面白かった。ありもしない、且つなくもない物語を語り口一つで創出する作家の騙り部性を凄いと思った。「ロリータ」…そろそろ三度目の再読必至だな。
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やいっち
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この数年ナボコフファンになりつつある我輩、初期の作品である本作はナボコフらしさが如実で面白かった。ありもしない、且つなくもない物語を語り口一つで創出する作家の騙り部性を凄いと思った。「ロリータ」…そろそろ三度目の再読必至だな。
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まぶぜたろう
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「なにもかもが最初から、どうでもいいようなばかげた細部をつけ足しながらくりかえされることになる。こうして写真という影でしかなかったものが、がっちりした存在感を獲得するようになると、それはみずからの権利を主張しはじめる」。光と影、ぼくと偽物、あるいは物書きと読み手。あまりにメタな趣向が言葉自体の面白さを減じているようにも思えるが、嘘つきで自惚がすぎ周りが見えていない語り手のやけにスムーズな言葉は、物語の表面をなぞり、寄り道し、最後には「日記へと退化」する。「絶望」へと至るその過程はやはりひたすらに面白い。
0255文字
Ochiai Kenji
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解説がとても熱い。でも、だからこそかえってそんな小説珍しくないよなー普通だよなーと思ってしまう。
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AYK
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すごく自己顕示的な読みづらい文体だなぁと思っていたらそうだよって解説に書いてあった。「小説とはどんなものにも似るはずがない、虚構=嘘の言葉の芸術に他ならない」。現実や政治の似姿としてしか理解しないのは矮小であり、文学作品が実人生に似ていると錯覚したゲルマンを表すことで批判している、と。ユニークな犯罪小説と思って読み進めていたのに、実は自己顕示欲の強い凡人のオナニーで、その振る舞いを通じて小説の芸術性を表していた。らしい。解説を読んでて大昔に解いた随筆の丸つけ時の「んなことわかるか」な気持ちを思い出す。
AYK

ナボコフ。20世紀のロシアの多言語作家。

05/09 23:16
AYK

結局似ていると思っていた男は全く似ていなかったし妻は不倫していたし現場に証拠を残していたし小説は書けないし昔の人をなぞってしかいない。

05/09 23:17
0255文字
たつや
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初期ロシア語時代の長編小説としては、本邦初。と、聞いて図書館にて借りた。完全犯罪を目論む男の話。ひとり語りで進むが、訳のせいか?やや、独りよがりな印象が、最後まで続き、冷めた読後感でした。自分に似た浮浪者を殺す?「こじき王子」からヒントを獲たのか?色々消化不足を
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案山子
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ナボコフは何冊読んでもイマイチピンとこない。饒舌さも苦手だし、「言葉の魔術師」と言われる所以が翻訳だとわかりづらい(=どうしても注釈が多くなって本筋に集中できない)のも理由なのかな。 この物語の「私」が「信頼のおけない語り手」であることはけっこうすぐにわかる。話の構成上、推理小説のような種あかし後のカタルシスを求めがちだが、それは感じられない。むしろ「似てないもの同士のあいだに類似性を見出す」「自分の見たいものだけを見る」病を指摘されるだけのような、苦味が残る読後感(悪い意味だけではなく)。
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マリリン
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諧謔と情景描写の美しさを巧みに織りませ、まさに言葉の魔術師だ。プーシキンやサルトル、特にドストエフスキィ(本文表記)に対する皮肉もロシア作品独特の味わいを感じた。読む側もやられるから要注意。文学作品は実人生に似ていないのに似ていると錯覚させるから。さりげない社会批判も怠たらない。主人公自らの行動を作家として小説としてまとめた、とあるが、紳士然としたナボコフ本人が後ろで嗤っている。本作を読みナボコフの個性的な文体の仕掛けをようやく垣間見ることができた。他の作品も読んでみたいし『ロリータ』を再読したくなる。
ポテンヒット

ナボコフはこの本ではどんな仕掛けを施しているのか楽しみ。光文社古典新訳文庫は読んでみたい本がたくさんあります。

07/03 16:14
マリリン

特に第9章が面白かったです♪ タイトルの意味も終盤でわかります。仕掛けはいたるところにあり、うっかりすると地雷を踏む羽目に(* ´艸`) 酔っ払いが登場するのもお国柄ですね。ナボコフが描く女性像は、ロリータもそうですが女性から見て魅力的ではないのが不思議、それも仕掛けか? 光文社古典新訳文庫読みたい本がたくさんありますよね。次は「戦う操縦士」と「人間の大地」が控えています(^-^;

07/04 01:14
0255文字
uchiyama
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これも、ナボコフにしてはそれほど面白くなかったのですが、訳者解説で(ちょっとご丁寧過ぎる感じで)解き明かされるような「企み」の中に、例えばハンバート・ハンバートの語りには内在する、冷笑的で卑劣でおよそ共感できない人物像を、それでも存在として肯定させてしまう「悲哀を生む距離」みたいなものがなく、愚かなゲルマンに対する、侮蔑的で嘲笑的な作家自身の高みにある立ち位置ばかりが目についてしまい、鼻白むところがあるからかもしれません。
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META
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ネタバレ完璧な犯罪計画は確かに芸術と遜色ないかもな〜 ゲルマンとハンバートの似て非なる点は、ハンバートの方が若干理知的な分、自分の非人道な性質を理解していたことかもね! 「ぼくはまだ号泣していたものの、自分のおかれた立場の惨めさはしっかりとわきまえていて、心のなかでそれを冷ややかにあざ笑っていたくらいなのだけれど、同時にこういう惨めさがまさにそのまま、やたらと発作的に泣き崩れる連中がひそかに味わいたがっている魅惑そのものでもあり、またなんとなく自分に有利にはたらいてくれるものらしいってことに感づいた……」
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UNO
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『カメラ・オブスクーラ』は読みやすかったのに、これはあらすじを追いにくかった。すぐに脱線していって、小説の中にエッセイでも組み込まれているようなヘンな感じ。今回はロリータ的な展開にはならないけど、ネジの飛んだ爬虫類みたいな男が主人公で、なんとも言えない。ナボコフは、比喩の感じから王道の感動作も書けそうなのに、微妙なところを掘り下げていくなぁ。前半はグダグタしつつも楽しいんだけど、殺人計画からラストへいく流れがあんまり好みじゃない。人間味がなさ過ぎて、絶望も自業自得……っていう話だった。
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qwer0987
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ネタバレ正直言って最初の方は読みづらかった。それもこれも語り手のゲルマンが語り手としてはあまりにポンコツすぎてどこに話を持っていきたいのか読み取れなかったからだ。だけど中盤を過ぎるあたりから面白くなる。ゲルマンは自分そっくりの人物を使い保険金を騙し取ろうとするが、ラストに至りそれがお粗末な計画だったと露呈する。最初にポンコツだと感じた通り、ゲルマンは客観的に見ればわかることが理解できないのだ。フェリックスに限らず、妻と画家の関係にも気づこうとしない。あまりに主観が強く、それが滑稽でブラックな笑いが感じられた
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ジェナ@読書の秋
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『ロリータ』その変態おじ小説で世界的に有名になったことが、ナボコフにとって祝福なのか呪いなのかはわからない。例えば、これも彼の代表作の一つ。曖昧な動機と不完全なレイアウトの殺人について。殺人者である主人公は、ミステリーに登場する典型的な完全殺人者ではなく、頭と性格の両方に穴だらけの誇大妄想狂だけ。まさに道化師っぽいキャラの馬鹿馬鹿しい茶番劇だけど、彼自身はとても真剣。彼には忠実な共犯者がいるのに、他の役者も観客もおらず、これらのトリックは病的な犯罪とみなされ、人々が見ているのは真実だけ。面白い『絶望』。
ジェナ@読書の秋

追記: 『ロリータ』で有名になることは、偉大な文豪であるナボコフにとっては祝福というよりは呪いのようなものだと思います。米国に亡命したこのロシアの作家は英語とフランス語にも堪能でした。詩人、昆虫学者でもありました。また、文学的な仕掛けと含意、遊び心に富んだきわめて技巧的な作家という評価が世界的にも定着しています。『ロリータ』自体にも文学的な記号がいっぱいです。変態おじさんは長い歴史を持ち、文化が衰退し始めたヨーロッパであり、少女のロリータは歴史が浅く精神的に自由で、経済と技術が向上しているアメリカです。

10/11 01:31
ジェナ@読書の秋

追記2: 語り手であり殺人者の主人公のゲルマン・カルロヴィチは、プーチンを思い出します。前者は裸の殺人を自分の人生の再生計画と見なして、したがってそれを正当な行為と見なします。後者は、隣国に対する裸の攻撃を母国を守るための計画と見なし、したがってそれを正当化します。道化師っぽい馬鹿馬鹿しい茶番劇だけど、彼たち自身はとても真剣です。無数の無辜の命が戦争に巻き込まれたことは、ただただ残念です。

10/11 01:41
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amanojaku
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はて、これは自分の慧眼さを衒っているのか、と思ったが、結末に醜態を曝している様子をみると、自ら失態を笑っているようだ。自分が優れていると思い込まず、愚かではあるまいか、と疑ってみるように戒められている気分になる。ごもっとも。
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Mirror
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創作の中ではどんな人間にも成れるし、どんな壮言大語も語れるのだろうが、ナボコフという人は夢想に浸ることがどうにも居心地が悪い性格だったのではないだろうか。芸術におけるオリジナリティというものがサンプリングでも十分になりたつということを自覚し、実世界のリアルに目を向けながら小説の虚構を使って新しいスタイルを生み出している。
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nori
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ネタバレ当然ながら「ロリータ」や「セバスチャン・ナイト」よりも分かりやすい。語り口にはゴーゴリの「狂人日記」のような印象をうけた。ナボコフは絵画や映画を目指すのでなく言葉で作られた小説独自の強みを生かしているという解説にはハッとさせられた。活劇的見せ場を志向している大衆小説やラノベでは映画やマンガに勝てないのではないかという問いへの答えの一つとなると思った。
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恋愛爆弾
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たとえナボコフに嫌われても、訳者に「ばかげた幻想」と言われても、画家に論破されたって、小説を信じてしまいたくなる誘惑ってあるよな。ゲルマンはそれを大真面目に信じてるのだろうけど。
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マヌヌ2号
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人間は自分で自分をみることはできません。みることができたと思っても、それは自分っぽいだれかであって自分でないのかもしれません。彼は何をみていたのでしょうか。何をみようとしていたのでしょうか
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丘の家
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★★★★☆饒舌な語りで構成される本作の三分の一は、ナボコフらしい視点と企みをもったユーモアで読者を楽しませてくれるが、残りの三分の二は、おもしろみにかける饒舌や自己言及の無残さをいやというほど読者に教えてくれる。ナボコフ信者でないと、この長ったらしさには苦痛を感じるだろう。しかもオチが、約350ページもある長編小説を締めくくるには弱すぎる。ほとんど夢オチと同レベル。このオチなら、本文は半分くらいの長さでないときつい。著者本人が二度目の英訳の際、無駄な部分を削いだり文体をなおしたりしたらしい。そりゃそうだ。
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井蛙
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小説というのはかくも自由でかつ不自由な芸術なのだ。この知的でウィットに富んだ書き手が他者に下す傲岸不遜な断定は、他者ではなく彼自身の肯綮に見事に中っているのだが、こんな愉快な盲目的な自己言及(それはどことなく、鏡に映った自分をそれと知らないで嘲弄する猿を思わせる)がこの作品をそもそもの出発点から駆り立てているのだ。むろん彼が「自分は天賦の文学的才能を持っている」と書くとき、少なくともその自己評価のみは正当なものだ、と言うことはできない。なぜならば彼が記憶の命ずるまま書き流した手記は、その実ナボコフという→
井蛙

ゲルマンが「きみ」と呼びかけ、彼の小説を最初に読むことになる「ロシアの亡命作家」が巧妙に組み立てたものだからだ(ナボコフの読者は、彼が作品の中に散りばめたあらゆる意匠に心を配り、ゲルマンがそうしたように読み直さなければならない)。そうしてこの作品は、ゲルマンが書くことを止め、窓外の人々に語りかけようとするところで終わる。そこで彼が見た長い夢は泡のようにはじけるのだ。

01/27 18:32
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茅野
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粗筋から『ウィリアム・ウィルソン』ふうの物語かと思えば、全然そんなことはなかった。ミステリ調なので、やはりオチを知らない状態で読んで欲しい作品。筋書きもメタ的な読み方も楽しい。
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hikarunoir
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「分身(二重人格)」を発見した自己愛の強いバカが「罪と罰」的完全犯罪を綴るも、読まれた時点で破綻する、ネタ元作家への揶揄が意地悪くも楽しい。
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練りようかん
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ネタバレ読み進めるうちに実験的や挑戦という印象が強くなっていった。成功した犯罪を小説にして世間に知らしめる、という態だが小説を書きたいがために起こした犯罪に思えて、創作に現実をすり合わせているようだった。取り組みがボロボロと露に崩れていきやっぱりね、という爽快感は堪らず、所詮作者の脳内を読者は覗いているだけで、本物を見ているわけではないという割り切った痛快さが良かった。言葉に対する拘り、一文一文に込められたユーモア、欠点に目を瞑る完璧さって?と文学と崇拝の風潮にも一石を投じる彼のスタイルがヤミツキになる。
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まけどにあなっつ
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安部公房「他人の顔」、松本清張「顔」を想起。ナボコフは谷崎に似てる? 変態エロ作家と勘違いされやすいけど芸術至上の耽美作家。
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Masaya
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主人公が自分と瓜二つの浮浪者を見つけ、彼を殺して保険金詐欺をはたらこうと企てる物語です。
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しょう
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ネタバレ当初からゲルマンは「何かをやらかしそうな」雰囲気を醸し出している。自分を過大評価し、妻を下げた発言をするなど、人間としての魅力は欠片もないが、そんな彼が保険金殺人を杜撰であることも気づかずに、瓜二つのフェリックスを殺してしまうのはもはや滑稽ですらある。堂々としているようにも見えて、内心焦りがあったあったのではないかと伺わせるあたり、ナボコフの人物描写も巧みであり【絶望】というタイトルも納得できる。
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ykshzk(虎猫図案房)
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自分に瓜二つの人間に出会って保険金をかけて殺すという話を小説にする話。物語の手法としての試みのほうに振り回されてしまった私は、普通に素直なミステリー物として読みたかった。なんて思うのでは、まだナボコフは早いのかもしれない。傲慢で尊大な主人公が、妻の頭の悪さや親戚の出来の悪さをボロクソに言っていながら、結局自分がダメになる様は読んでいてざまあ見ろな感じ。どうぞ、じっくり絶望したら良い。ドッペルゲンガーに私は会ったことはないけれど、絶対に会いたくないと強く思う。
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井蛙
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こういう屈折した自己省察によって書かれた作品は大好物(しかもナボコフの知性きらめく文章で堪能できるのだ!)。屈折したと言うのは、語り手の過剰な自意識が相手にしている他者とは結局仮構(加工?)された語り手自身に他ならないからだ(鏡、もしくは自分自身に宛てられた手紙のモチーフ)。結果せっかくの彼の透徹した千里眼は、彼だけを巧妙にすり抜けてしまう。この決定的な齟齬は佳境に至って、彼らしくもない論理的な矛盾や、現実との意識されざる滑稽な一致さえ引き起こす。そしてなかんずく、このような読まれることを意識した作品の→
井蛙

もっとも重要な点は、それが書くこと/読まれることの文学上根本的な問題を提出するということなのだ。こうして僕のこの作品に対する嗜好は、安部公房に対するそれとリンクする。

01/27 18:15
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Shingo  Yamaguchi
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メタフィクション、という用語がなかった頃の、メタフィクション。物語を読むということ、その試み自体を小説化する、野心的な試み。倒敍物ミステリや、犯罪告白物とも読めるが、大が付く作家の仕事はそんなに甘くない。ドストエフスキーも、谷崎も、芥川もミステリ形式を採用しているが、彼らは微塵もミステリが書きたい訳ではない。彼らはそのシステムを利用して、時代の制約をブレイクスルーしてみせる。レーニンは「戦争を革命に転化する」と訴えた。革命を嫌った筈のナボコフは、ミステリをなぞることで、しれっと文学の革命をしてみせた。
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_
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面白いし、楽しい。解説がよい。
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さんくん
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いかにも胡乱で適当な語りの主人公。同時代の1930年代、日本で饒舌体の技法を駆使した太宰や石川淳らの仕事を彷彿とさせます。自身の記憶に拘泥するゲルマン。しかし最後には忘却していたフェリックスのステッキを思い出すにあたって、犯行計画の完全な破綻と執筆している小説の無根拠さが暴露され、単なる日記に堕落するオチ。途中まで、その自らの力量を盲信していたゲルマンを引き立たせるように、妻のリーダの記憶力のなさや適当な読書のスタイルが論われますが、それこそゲルマンの小説の読書にはふさわしいのではないかとおもわされます。
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いなだ豆乃助
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ナボコフのロシア語時代の作品。ナボコフの小説はぼくの場合ノッてくるまで時間がかかるが、途中で波長が合ってくるとぐいぐい読めてしまう。今回は特に耐える時間が長かった。
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N
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やっぱりめちゃめちゃ面白いな~
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天来
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おおが
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Lieu
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物語の展開もオチも、それほど複雑ではない。ドストエフスキーのパロディ、というのも、明瞭である。この本の楽しみ方は、オチがわかった上で、語り手の思考様式のおかしなところを、さかのぼって探すことである気がする。ただしそこが厄介で、"凡庸な"語り手の関係妄想が、最後に嘲笑される筋に見えるのだが、結局、そのような筋を書いているのも語り手であり、どこまでが“フィクション"かわからない。まるで、ペンを持った二つの手が、お互いを書いているような具合である。
0255文字
Mark.jr
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身代わり殺人を狙った男がその体験を小説にしたという体裁の作品です。一番分かり安い仕掛けは、この作中の主人公が書いた小説という設定でしょう。小説は言ってしまえば、嘘を書くということですから、事実を基にしているとは言ってもどこか嘘が混ざっているはずです。つまり読者を虚実の煙にまく仕掛けが、小説という形態そのものという、かなりメタな趣向になっています。タイトルに反してドタバタとした笑いの要素も大きく、著者の作品の中でも間違いなく「ロリータ」に次いで読み安いものでしょう。
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みやったー
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芸術家気取りのビジネスマン、ゲルマンによる計画犯罪の手記。誇大妄想気味なゲルマンの心象描写の中には、言葉の魔術師ナボコフの考える小説像が織り込まれている。
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ヨコケイ
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プラハで自分と瓜二つのホームレスに出会ったベルリンのプチブルが己が分身を利用した犯罪計画の顛末を綴った小説、という体裁の話。ヒッチコックめいた古風なスリラーのようだが考えてみると『ロリータ』だって少女誘拐事案を犯人側から叙述した一種の犯罪小説ともいえる。〈信用できない語り手〉(何せ自称"法螺吹き")でありその"揺らぎ"も愉しいが、それは自己言及的な構造の故というよりも(勿論そのお陰もあるが)、時に狂騒的ですらある饒舌な語り自体のために感じる。幕切れ間近、題名の意味が判明する場面の馬鹿馬鹿しさがヒャッハー。
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L
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ナボコフがまだロシア語で執筆していた頃の作品。多言語作家であるナボコフは、英語による作品『ロリータ』で一躍有名になり、英語作家と自認していくのであるが、こちらはWWⅡ以前の作品となる。 宇多田ヒカルのコンサートツアー名がナボコフの作品から採用されたため、読んでみようと思ったミーハーな動機。文体が大変読みにくく、ツアー後3か月近く経って読み終えました。 前半を抜け切れば、後半部分は一気に読めると思います。宇多田は英題を挙げているので、彼女は英語で読んだ可能性あり。 読後の達成感はひとしおです。
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