形式:文庫
出版社:光文社
ナボコフ。20世紀のロシアの多言語作家。
結局似ていると思っていた男は全く似ていなかったし妻は不倫していたし現場に証拠を残していたし小説は書けないし昔の人をなぞってしかいない。
ナボコフはこの本ではどんな仕掛けを施しているのか楽しみ。光文社古典新訳文庫は読んでみたい本がたくさんあります。
特に第9章が面白かったです♪ タイトルの意味も終盤でわかります。仕掛けはいたるところにあり、うっかりすると地雷を踏む羽目に(* ´艸`) 酔っ払いが登場するのもお国柄ですね。ナボコフが描く女性像は、ロリータもそうですが女性から見て魅力的ではないのが不思議、それも仕掛けか? 光文社古典新訳文庫読みたい本がたくさんありますよね。次は「戦う操縦士」と「人間の大地」が控えています(^-^;
追記: 『ロリータ』で有名になることは、偉大な文豪であるナボコフにとっては祝福というよりは呪いのようなものだと思います。米国に亡命したこのロシアの作家は英語とフランス語にも堪能でした。詩人、昆虫学者でもありました。また、文学的な仕掛けと含意、遊び心に富んだきわめて技巧的な作家という評価が世界的にも定着しています。『ロリータ』自体にも文学的な記号がいっぱいです。変態おじさんは長い歴史を持ち、文化が衰退し始めたヨーロッパであり、少女のロリータは歴史が浅く精神的に自由で、経済と技術が向上しているアメリカです。
追記2: 語り手であり殺人者の主人公のゲルマン・カルロヴィチは、プーチンを思い出します。前者は裸の殺人を自分の人生の再生計画と見なして、したがってそれを正当な行為と見なします。後者は、隣国に対する裸の攻撃を母国を守るための計画と見なし、したがってそれを正当化します。道化師っぽい馬鹿馬鹿しい茶番劇だけど、彼たち自身はとても真剣です。無数の無辜の命が戦争に巻き込まれたことは、ただただ残念です。
ゲルマンが「きみ」と呼びかけ、彼の小説を最初に読むことになる「ロシアの亡命作家」が巧妙に組み立てたものだからだ(ナボコフの読者は、彼が作品の中に散りばめたあらゆる意匠に心を配り、ゲルマンがそうしたように読み直さなければならない)。そうしてこの作品は、ゲルマンが書くことを止め、窓外の人々に語りかけようとするところで終わる。そこで彼が見た長い夢は泡のようにはじけるのだ。
もっとも重要な点は、それが書くこと/読まれることの文学上根本的な問題を提出するということなのだ。こうして僕のこの作品に対する嗜好は、安部公房に対するそれとリンクする。
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