形式:単行本
出版社:講談社
わぁ 私も続きたい!
桃の節句さん、モディアノって本当に独特の雰囲気があるよ(^-^)
物語は戦後のパリの大通りのはずれへと進む。そこはアングロ・サクソン風の品がよく簡素なホテル、そう父の時代のクロ・フクレ。真夜中の人気のないカンターのなかで、酒瓶を並べ、灰皿を掃除しているのは、あのバーテンダー。口数のすくない彼だが「わたし」が亡霊たちの名前をあげると、一様の写真を見せてくれる。それは皆、この小説を展開してきた人たちのすがた。モディアノの描く世界は果てしない不安と不満と不安定に満ちている、その世界は決して、時代だけではなく、今を生きる「郊外」とい不確かな都市の空間でもあるのだ。
それくらいのレトリックを大仰に褒めようとは思わない。簡潔な文体というと聞こえがいいが、日本語訳で読む限り易しい表現で、シンプルで、ほとんど薄いといってもいいと思った。まあその分一気に読めたが、一気に読めることは別にいいことではない。
「登場人物全員もう既にこの世の人ではないのではないか」というご指摘はあたっているかも知れませんね。
ありがとうございます。そう考えると、なんだか怖い小説ですよね。お前がパパになるんだよという…
恐らく当時の歴史的背景などとつき合わせて読み進めていくと、小説世界にそれらがうまく昇華されているのではないかと想像するが、今の自分にはそこまで至らず。物語の筋とは関係ないけれど、重く暗い雰囲気で物語が進んでいくなかで、たとえばミラーユのかつて使えていた社長のモットー「威しはするな、少々圧力をかけるだけ」や、自分で勝手に献辞を書き加えて古書収集家に高額で本を売りさばいていく主人公など、少し笑ってしまう描写が所々に見られたのが良かった。
表紙のモンマルトルの写真、裏表紙のモンパルナス(?)の写真は風情があり、在りし日のパリをよく伝えているように思う。
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