60.『距離』あまり距離の近さに驚き、咄嗟に離れる。それと同時に出た笑い声。「ふははっ!」…てなんじゃそりゃ。その後も何も言わずに見つめ続けるけいた。その気まずさに居たたまれず、「何っ?まだ何か話したいことがあるの!?」と聞くと、「え?逆に俺に話したいことはないの?」と返された。「…!……な、ないよ別に…」私がそう言うと、けいたの表情は一気に曇り、「あっそ。じゃあ俺行くわ。手当てありがと」そう言って立ち上がった。
59.『二人だけの保健室』どうして私が貼らなきゃならないの…。少しの疑問と少しの喜び。あんなに遠かったけいたが目の前にいる。緊張で震える手を、何とか抑えながら湿布を貼る。「はい。貼ったよ」ふと目を開けたけいたと目が合った。
58.『伸ばした手、引かれる手』彼の赤らんだ頬に手を伸ばすも、今朝のあいつの姿が不意に浮かび、その手を戻してしまった。「…そういえばさっきから何か探してるの?」話を逸らして誤魔化す。「…………湿布。」少し変な顔をされたけど渋々答えてくれた。「えっ?湿布?湿布はそこじゃないよ!というか本当はそこ触っちゃいけないんじゃない?ふふ!」不自然な程に明るく笑いながら、救急箱の中の湿布を渡す。…ここも触っていいのか分からないけど。「はい!」湿布を渡すが、彼の手は湿布を通り過ぎ、私の腕を掴んだ。「…貼って」
57.『じゃあ、それなら』ついつい私もムキになって、「じゃあ、けい……そっちはなんでそんな怪我してんのよ!」と聞いた。「俺は…」「………。」「………。」無駄に引っ張るも「…やっぱ教えない」と言われてしまった。なんか私には言えない理由があるのっ!? そう思ったけど、口にはせず改めて彼の左頬を見る。赤くなり軽く腫れている。どこをどうぶつけたらこうなるのか。運動神経は良いはずのけいたがこんなになるなんて珍しい。「わ〜痛そうだね…」その赤くなった腫れが心配で、自然と彼の頬に手が伸びた。
56.『素直じゃない私の小さな勇気』久しぶりに私に向けられた言葉と笑顔に、妙に嬉しさを感じてうっとりしてしまった。…なんてそんな馬鹿な、とすぐ我に返り「別に何だっていいじゃん」と一言。けいたも「あっそ。別に興味ないし」とそっぽを向く。また振り出しに戻ってしまった。素直になれない自分が嫌になる。だけどこのままじゃまた同じ。可愛くない私をどうにか抑え込んで、「ボ…ボール踏んで転んだの…」と呟いた。声はかすれてたし、動きも怪しかったかもしれない。「…。」気まずい沈黙の後、「ぷっ、だっせ」と笑われた。
55.『会話のチャンス』だけどすぐに我に返り、目を逸らしてしまった。反射的にとはいえ、凄くあからさまに出た拒絶。あちらも気にせずといった風に目を逸らす。せっかくまた話せるようになるチャンスなのに…目を逸らしてしまった時点で元には戻れない。さっきの自分の行動に対し、悔やむ私の耳に、「…ふっ」と噴き出す声が聞こえた。そちらを見ると、「なんで、んなでかい鼻ティッシュ詰めてんだよ」と笑うあいつがいた。
54.『まったく』全く…転ぶとは失態だ。痛む鼻を撫でながら、鼻ティッシュも隠す。なんとも間抜けなこの格好が、誰も見ていないとしても気になってしまう。…恥ずかしい。保健室でも一応見てもらうことを勧められたので、しぶしぶ来てみたけど。ドアを開けるとひゅっと息が止まった。どうしてあいつが。鼻を隠していたことすらうっかり忘れて、同じく驚いている彼から目が離せなかった。
53.『一方テニスでは』最近ちょっとした時間にもあいつのことを考えてしまう。弟を取られた気分ってこういうこと…?でも弟というには関わらない期間が随分空きすぎているし、少し違うのかな?なんて色々悩んでたら、あやかが私のことを呼んでいた。呆けてたのが申し訳なくて、少し焦り気味に走った。あ…え…うそ、やばい。
52.『はなぢブー』体育の授業でまさか鼻血が出るとは…不覚。焦ってティッシュを持ってくるやつに、心配してくれるやつ、そして笑いを堪えるやつ。「だせっ…んん!おい、あの、お鼻はだい…だいじょぶですか…ぶふ!」…この!後で覚えてろよ!
50.『そんなこんなで』彼女に言われるがまま、体育の選択科目も合わせた。そして待ち合わせもして一緒に行くのだという。…よく分からないが待ってみることにした。本当はテニスがしたかったけど…ま、良しとしよう。すると待っている間、騒がしい声がする。その声の方を見るとゆうながいた。なんだか茶化されている彼女。よく見ると、俺が前にあげたキーホルダーを付けていることに対し、馬鹿にされている彼女がいた。…ちゃんと持ってたんだ。
49.『回想2:自己紹介』入学式当日に告白され、色々あって受け入れてしまったが、俺はまず恋愛というものがよく分からない。無意識に傷付けてはいけないと、前もってそのことを伝えておいた。彼女はぽかんとした後笑い、「大丈夫!私に任せておいて!」なんて言って握手してきた。ついでに「えへへ、初の手繋ぎだね…。」と照れていた。良い子そうだ。
48.『憂鬱』朝からなんだか嫌な気分。さっきのあの場面のせいだ…。次の授業は体育で、授業内容は選択科目。あいつとクラスは違うけど、同じところになれるか期待半分、なりたくないの不安半分。結果は別のところだったけど、今は少しだけほっとしている。
45.『振り向いてみても』今更だけど、今からでも仲直り出来ないかななんて思う。でもきっかけなんて見つからないし、あいつへの話しかけ方なんてとうに忘れてしまった。もう私のことなんて見向きもしなくなったあいつになんて…。
44.『回想1:入学式のあの時』入学式ということもあり、気持ちもなんだか浮かれ気分。あやかと待ち合わせして学校を少しだけ散策…と思ったら、「おい!あそこ!早速告白されてるやついるぜ」なんて声がした。そちらを見るとあいつがいて、私は複雑な気持ちを抱いたことを覚えている。
43.『なだめ役』そんな私より友達のあやかの方が、「何なのあいつ!まぁ原因は私にもあるけど…でもあんなあからさまな態度、やな感じだよね!」なんて怒ってる。最近はそうやって怒るあやかをなだめる役ばかりしてるけど、あやかが怒ってくれるから私もそんなに気落ちしないで済んでいる気がする。
42.『すれ違い』やっぱり学校ですれ違っても、目も合わせてくれない。私なんてまるでそこにいないかのような冷めた視線に、自然と私も目を逸らすようになってしまった。
41.『一人ぼっちの通学路』学校って凄く遠い。あっという間だったはずの登校に下校の時間。なのに今はとても長く感じる。空いた右側がなんだか落ち着かなくて、見ないふりをした。あいつと行く方向、目的地は同じなのに。
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