整体師<合田力>シリーズなんて、整体師が探偵役の推理小説?と思ってしまうが、やはりこの物語の主役は、様々な過去を引きずる女性たちだ。
現実の女性たちの多くは、彼女たちほど重い境遇に置かれていないだろうけれど、彼女たちが時として自分で自分を傷つけようとしてしまうほど苦しんでいる状態から、他の誰かに手を差し伸べることによって生きる力を取戻して行く過程は、現実の女性たちに勇気と希望を与えてくれるのではないだろうか?彼女たちの周囲に現れる愚かな男性たちと頼りないが誠実に生きようとする小松崎の対比にも考えさせられる。
このシリーズ、口当たりは、まるでライトノベルのように軽快で、近藤史恵さんの作品としては、とても間口が広いのではないかと思いますが、扱っているテーマは重く、しっかり読んで行こうとすると、とてつもなく奥の深い物語だと思いました。
アメリカナイズされグローバル化が進んだ社会で、政府も企業も、無限に続く成長を目指し、国民や従業員に負荷をかけます。当然のことながら、権力を持つ者から持たないものに対してパワハラやセクハラが横行します。子供たちは弱い者なので、大人の社会のストレスを受け、相互に傷つけあってしまうのではないでしょうか?これを防ぐためには、どうしたら良いのでしょう?近藤史恵さんに小説の中に一つの答えがあるような気がします。
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