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ビストロ・パ・マルで近藤史恵さんを語る

あなたに贈るキス
トピック

KAKAPO
2016/04/17 07:51

 2013年に発見された、唇を合わせると感染し数週間で死に至る病。そのキャリアを判定する検査法は、2028年になっても実用化されていなかった。ある日、全寮制の学園で女生徒が亡くなった。彼女は、美詩が「自分を受け入れてくれる場所などどこにもない」と思っていた時に、柔らかい笑顔をくれた人だった。

 始めは少女漫画の様に、近未来の全寮制の学園を舞台に繰広げられる物語は、頁が残り少なくなる頃に近藤史恵さんらしい独特の香りが漂い、読者にも少女のような硬い殻を脱ぎ捨て、大人の女性として翅を広げることを促しているようだった。

 これって、私が読んだ近藤史恵さんの中で、初めてのSF?いずれにしても、男性の作家さんには書けない世界、いつまでも少女の心を忘れない近藤史恵さんが、少しずつ現実を受け入れてゆかなければならない少女たちに贈る物語り。もちろん、既に現実を受け入れ逞しく生きている大人の女性の皆さんにも、あの頃の健気な自分を思い出させてくれるのではないでしょうか?

 近藤史恵さんは、常に新境地を拓くように創作活動を続けられていて、凄いと思います。でも、どの世界も、結局、史恵ワールドに収斂してしまうという結末もファンにとっては嬉しいではありませんか!「何らかの理由で自分の居場所を見つけ出せないでいる少女~若い女性が、新しい出会いから出口を見出し、力強く歩きだす。」という物語りは、多くの読者に、希望と勇気を与えてくれるような気がします。

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