満員電車に揺られ最寄り駅を降りた。ふ~、疲れた。今日も一日が終わる。
帰り道の途中にあるコンビニに寄り、自分の分と彼女の分のビールとつまみを買い家路に着いた。
あいつの方がいつも俺より帰りが早いんだから飯くらい作ってくれてもいいよな。
俺のアパートに彼女が転がり込んできてからもう一年近く経つ。
彼女と知り合ったのは、職場の同僚が話を持ってきた合コンだった。
ちょっと頭悪そうだなとは思ったけど、顔がタイプだったし、話も合ったし、何より巨乳(Fカップ!)だったのでその日のうちにお持ち帰りしたのだ。俺の事がタイプだったのか、酔っぱらっていたからなのかは、今となってはわからない。
それから一ヶ月もしないうちに実家住まいだった彼女は、荷物をかかえてうちに転がり込んできた。
それまで実家暮らしだったからなのか、料理は全くセンスが無いし、洗濯も苦手なようで、よく色物と白いのを一緒に洗ってしまい、白い靴下が赤く染まっちゃったりしている。掃除も週に一回すれば良い方で、基本的には気が付いたときに俺がやっているような始末だ。洗濯も溜まってきているから、そろそろやらなきゃな。これじゃ一人の方が楽だった。と思うこともたまにはある。
でもまあそういうとこ差し引いても顔は可愛いっちゃ可愛いし、なにしろ巨乳(Fカップ!)だから、まあいっか。結局そこに落ち着く。
アパートに着き鍵を開けドアを開くと、部屋の中は暗かった。あれ? まだ帰ってないのか?
ただいま~。と小声で言いながら玄関の照明を点け、部屋の中に進む。リビングの照明を点けると、テーブルの上の一枚のメモに目が留まった。
メモには「実家に帰ります。いままでありがとう。さようなら。 さおり」と彼女の字で書いてある。
お、何? あいつ実家に帰ったのか。俺はすかさずスマホを取り出した。
「あ、もしもし? ミナミちゃん? これから飲みに行こうぜ! 今日は生理とかそういう言い訳聞かないゼ! じゃ後で!」いやっほー。俺は足繁く通っているキャバクラのオキニ嬢に電話した。
とりあえず着替えよう。鼻歌交じりに小躍りしながらクローゼットを開けると、中から彼女が飛び出して来た。え、ちょ、な、なに??
なにじゃないわよ! 彼女はわなわな震えていた。
「な、なんで? 実家に帰ったんじゃなかったの?!」
「嘘よ! 嘘! 今日何の日かわかる?! びっくりさせようと思ったの!」
え? 今日? 4月1日? はっ!! エイプリルフール!!
彼女の正拳を顔面に受け、俺はその場に崩れ落ちた。エイプリルフール。四月のアホ。まさにそれは俺の事だった……。
(了)
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