読書メーター KADOKAWA Group

日本近現代史研究会

コメント

辻貴之
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 ここにおいて福沢の主張に、ある種のねじれが生じていることがわかるであろう。西洋諸国がアジアを侵略しようとしている以上、日本がアジアの「遅鈍」にとどまっていてはならず、ますます文明化しなければならないというのは「脱亜」の主張である。ところが、一方で福沢は日本がアジアの盟主となって西洋諸国の侵略に「支那朝鮮」とともに対抗するという「アジア盟主論」を唱えているのである。今日の一般的理解では、「脱亜」論とは日本は西洋文明国の仲間入りをし、ひいてはアジア諸国のアジア侵略に参入すべきだという主張である。(続く)