踊るんだよ
音楽のなっている間はとにかく踊り続けるんだ。
おいらの言っていることはわかるかい?
踊るんだ。踊り続けるんだ。
なぜ踊るかなんて考えちゃいけない。
意味なんてことは考えちゃいけない。
意味なんてもともとないんだ。
そんなこと考え出したら足が停まる。
一度足が停まったら、もうおいらには何ともしてあげられなくなってしまう。
あんたの繋がりはもう何もなくなってしまう。
永遠になくなってしまうんだよ。
そうするとあんたはこっちの世界の中でしか生きていけなくなってしまう。
どんどんこっちの世界に引き込まれてしまうんだ。
だから足を停めちゃいけない。
どれだけ馬鹿馬鹿しく思えても、そんなこと気にしちゃいけない。きちんとステップを踏んで踊り続けるんだよ。
そして固まってしまったものをすこしずつでもいいからほぐしていくんだよ。
まだ手遅れになっていないものもあるはずだ。
使えるものは全部使うんだよ。
ベストをつくすんだよ。怖がることは何もない。
あんたはたしかに疲れている。
疲れて、脅えている。
誰にでもそういう時がある。
何もかもが間違っているように感じられるんだ。
だから足が停まってしまう
でも踊るしかないんだよ
それもとびっきり上手く踊るんだ。みんなが感心するくらいに。
そうすればおいらもあんたのことを、手伝ってあげられるかもしれない。
だから踊るんだよ。
音楽の続く限り
(村上春樹 ダンス・ダンス・ダンスより)
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