(※2009年(H21)3月7日以降読了本より記録しています。)
____________________
我は張り詰めたる氷を愛す
斯(かか)る切なき思ひを愛す
我はその虹のごとく輝けるを見たり
斯る花にあらざる花を愛す
我は氷の奥にあるものに同感す
その剣のごときものの中にある情熱を感ず
我はつねに狭小なる人生に住めり
その人生の荒涼の中に呻吟(しんぎん)せり
さればこそ張り詰めたる氷を愛す
斯る切なき思ひを愛す
<室生犀星/切なき思ひぞ知る>
____________________
けふはえびのように悲しい
角やらひげやら
とげやら一杯生やしてゐるが
どれが悲しがつてゐるのか判らない
ひげにたづねて見れば
おれではないといふ
尖ったとげに聞いて見たら
わしでもないといふ
それでは一体だれが悲しがつてゐるのか
誰に聞いてみても
さっばり判らない
生きてたたみを這うてゐるえせえび一疋
からだじうが悲しいのだ
<老いたるえびのうた>
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます