家から小学校に通う道。草が揺れる、鳥が鳴く、風を追いかける。気づけば2時間の遅刻である。そんな日がしばらく続いたある日、母は、家中にある時計の針を2時間進めた。いつもよりも暗い朝は、何だが世界が終わる日に似ていた。その日から遅刻をしなくなった。小心者の私は、大人になった今も時計の針を5分進めています。大きな遅刻はもうしないけれど、常にその5分は、私だけのもので、ふと時々生まれる5分のひずみに世界を見ます。その5分は私そのものと言ってもいい。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます