おそらく20年以上ぶりの再読。 本著はどちらかといえば、合戦の描写や駆け引きの妙を主にしたものでなく、主人公山本勘助と主君信玄や側室由布姫ら周辺の人間との交わりや機微の描写に重きを置かれたものだが、これが面白い。 信玄の側室由布姫のわがままにふりまわされることをどこか愉しんでいるように映るところや、由布姫の怜悧さ、あまり注目されていなかった高坂という男の透徹した眼力に触れて驚かされる場面、正室の子というだけで嫌っていた義信への土壇場での感情の変化など、勘助という人間の深化の過程を披露されているようである。

おそらく20年以上ぶりの再読。 本著はどちらかといえば、合戦の描写や駆け引きの妙を主にしたものでなく、主人公山本勘助と主君信玄や側室由布姫ら周辺の人間との交わりや機微の描写に重きを置かれたものだが、これが面白い。 信玄の側室由布姫のわがままにふりまわされることをどこか愉しんでいるように映るところや、由布姫の怜悧さ、あまり注目されていなかった高坂という男の透徹した眼力に触れて驚かされる場面、正室の子というだけで嫌っていた義信への土壇場での感情の変化など、勘助という人間の深化の過程を披露されているようである。