
この背景には冷戦構造があり、日本は米ソ対立の緩衝地帯で特異な「日常」空間を築き上げてきました。いわば戦後日本は歴史に属さないできたわけで、そのどこまでも続く非物語的な経過の中で生き続けるということが一体どういうことなのか、この作品は徹底的に描き切ることによって明るみに出そうとしたのではないか。そして作品の評価は散々だったということも、戦後日本空間の勝利を示している、ということなのかもしれません。
物語の終わり近くの鏡子の次の言葉は、それを端的に表現していると言えるでしょう。「いいえ、私は治ったの。この世界がぶよぶよした、どうにでもなる、在ると思えば在り、ないと思えばないように見えるという病気から治ったの。この世界はこれでなかなかしっかりしているんだわ。職人気質の指物師が作った抽斗のようにきちんとして、押しても突いてもびくともせず、どんな夢も蝕むことができないようにできているんだわ。」
最近老眼が進んできたために焦って読書中の50代男性です
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この背景には冷戦構造があり、日本は米ソ対立の緩衝地帯で特異な「日常」空間を築き上げてきました。いわば戦後日本は歴史に属さないできたわけで、そのどこまでも続く非物語的な経過の中で生き続けるということが一体どういうことなのか、この作品は徹底的に描き切ることによって明るみに出そうとしたのではないか。そして作品の評価は散々だったということも、戦後日本空間の勝利を示している、ということなのかもしれません。
物語の終わり近くの鏡子の次の言葉は、それを端的に表現していると言えるでしょう。「いいえ、私は治ったの。この世界がぶよぶよした、どうにでもなる、在ると思えば在り、ないと思えばないように見えるという病気から治ったの。この世界はこれでなかなかしっかりしているんだわ。職人気質の指物師が作った抽斗のようにきちんとして、押しても突いてもびくともせず、どんな夢も蝕むことができないようにできているんだわ。」