ハラハラドキドキのスリル医療系と違って、人として最期をどう終えるかといった人間の深い部分が丁寧に描かれていて、こんなお医者さんに診てもらいたいなと思わせられる一冊。ハイレベルな技術を持つ医者でありつつ、厭世的な哲学にも明るい主人公が語る一言一言が深かった。

ハラハラドキドキのスリル医療系と違って、人として最期をどう終えるかといった人間の深い部分が丁寧に描かれていて、こんなお医者さんに診てもらいたいなと思わせられる一冊。ハイレベルな技術を持つ医者でありつつ、厭世的な哲学にも明るい主人公が語る一言一言が深かった。

壮絶な過去を持ち、人の人間性や関係性が糸となって視える力を持つ主人公が過去を克服するため、正義を貫くために殺人者を作りだす組織と対決するという設定が面白かった。登場する犯罪者や主犯は読んでいて、フィクションだと分かってはいてもとても腹立たしく、憎らしかった。

マスコミが被害者・加害者の生活やこれまでの行動を洗いざらい公表することに、報道の権利という名目が掲げられているが、報道のされ方にだいぶ偏りがあることで、視聴者に先入観を与えている気持ち悪さがクローズアップされていて面白かった。これからの報道のあり方への希望や期待でラストが締めくくられていたのもよかった

夏織が育ててくれた妖の父と本当の親子のようになりたくて空回りしてしまう人間特有の感情と、愚直なまでにまっすぐに夏織のために全てを投げうつ東雲さんの描写がとても素敵で面白かった。夏織の過去はいまだ明かされていないので次に期待したい。