私の父は福岡の八幡近郊で生まれ、その地で母と結婚した。これを知ったのは彼の除籍抄本を取得した日である。ついでに私の出生地は母の実家である隣県の唐津であり、九州とは縁がある。その後、家族は本州の別の県に住むが、小学生の私は毎年、夏休みになると、まるで厄介払いのように一人、唐津の実家に疎開させられた。祖母の九州弁との闘い、山への逃亡、松原への海水浴三昧だった日々。裏側を知らない子供の非日常の思い出は今でも鮮やかに甦る。この本の爺さんは夭折した私の記憶の無い九州の祖父とダブる。

私の父は福岡の八幡近郊で生まれ、その地で母と結婚した。これを知ったのは彼の除籍抄本を取得した日である。ついでに私の出生地は母の実家である隣県の唐津であり、九州とは縁がある。その後、家族は本州の別の県に住むが、小学生の私は毎年、夏休みになると、まるで厄介払いのように一人、唐津の実家に疎開させられた。祖母の九州弁との闘い、山への逃亡、松原への海水浴三昧だった日々。裏側を知らない子供の非日常の思い出は今でも鮮やかに甦る。この本の爺さんは夭折した私の記憶の無い九州の祖父とダブる。

本書は1999年発行である。CSTOによるウクライナ占領と後のロシア瓦解、中国の台湾進攻と後の国家分裂、イスラエルによるイランへの戦略核攻撃など、大陸国家は分割・離散。海洋国家は収縮の末路を辿る。人類は４つの大罪を犯し、欲望膨張の果てに自由が自由を殺し出す。さらに遺伝子工学の発展により人間は命の謎を知り、いくらでも自らを再生することが可能となる。その時に自身のアイデンティティが消滅し、自己の価値が消える。人類の死とはアイデンティティの喪失であり、遅ればせながら実史は確実に本予言書を実行している。

国家も宗教も全ての団体は抽象的なものであるべきで、それが固有名詞に変わるとき、人間は麻痺状態に陥り、本来、何ものにも左右されない個人の意見も哲学も消滅する。天本さんと言えば、やはり清志郎です。２人ともにアナキスト、反戦主義者。然るに日本を含む世界は全くの逆方向に向かっている様な気がしてならないのは私だけでしょうか。人生は儚い、明日を他人に保証してもらうことを捨て、日々を自らの意志で精一杯生きていくことが彼らからのメメントだと思うのです。Hasta manana, si dios quiere.

MOLになるずっと以前の大阪商船時代に建造計画され、その美しい姿を誇った報国丸と愛国丸。造船所勤務経験者からすると、そもそも「軍艦編」と言う不幸な経緯は優雅な彼女たちには似合わないと強く感じる。「商船編」は本当に気持ちの良い感覚で読めたが、タイトルの示す通り、武装商船化されるのである。それが何より悲しい。「戦争とは全て（”敵が”ではなく）が燃え、沈み、死ぬのである。」どんな読み物でも同様であるが、船（艦）が沈む描写では心も沈む。人間は根源的に愚か者なのだろう。