酷い成育環境に置かれていて、そりゃ、生きづらさを抱えるようになるだろうさ、という人たちのお話。孤独に寂しさを感じない者にはあまり共感できなかったかな。コロコロ視点が変わるのだけれども、皆根っこにあるものが同じなせいかキャラの見分けがつき難く、今、誰の話なのかが判り難かった。普通に死にたくなってもおかしくないキャラばかりで、何もないのに死にたくなる気持ちに説明をつけたい私が求めているお話ではなかった。

あとがきでシリーズ2作目だということを知った。ミステリーくくりのようだけど、ヒューマンドラマの方が濃い気がする。序盤は刑事が主人公のようで、読み終わってみたら鵠沼の物語だったように思える。同じ事象に遭遇したとき、それがもたらす変化は人によって違う。鵠沼が正道から外れてしまったことより、正しく生きるべきだ＝人生にはそれだけの価値があるという確信を失ってしまったことの方が痛かった。鵠沼がまた元の『正しさ』を取り戻せることを祈りたい。