ネタバレ恋愛の、なかほど。ドキドキや幸せの最高潮でも、失恋や倦怠期のどん底でもない、それでも恋愛に含まれるもの。そういうものの空気感がとてもリアルに的確なことばで描かれていて、何の障害もなくするすると読めた。西さんのあとがきを読んで、そうか自然に受け入れられる、それこそが凄いのだと改めて。「解散の雨」がお気に入り。 「けれど、悩んでも弱っても傷ついてもいないなら、どうすればいいのだろう。あたしは、たいした理由もなく、ただ途方に暮れている。」(156)

ネタバレとにかく好きなもののひとつです、吉田篤弘×フジモトマサル。繰り返し読んで、眺めて。よい時間だった。お気に入りは「待ち時間」、「居残り日録」、「影の休日」、「とにかく」、「恋と発見」。「それにしても、人がひきずって歩くもののなんと多いことか。」(56) 「とにかく理屈ではない。とにかく好きなものは好き。…そして、人は『とにかく』を何よりも信じている。」(81) 「発見は、きっと人と人とをつないでゆくー。恋がそうであるように。」(106)

ネタバレ帆を揚げる　会いたい人に会いに行くそれはほとんど生きる決意だ(3) くす玉の中身のような感情が紐を引かれる、いつもあなたに(14) 寄せ返す語尾の波瀬〜真剣に溺れることもできない浅瀬(21) 果物を剥けるだけでも凄いのにオレンジジャムは恋愛のよう(56) 驚くほど昨日が続く今日だった気づいてたのに君の誠実(62) 叶うことなかった夢の文末に君には誰かを信じてほしい(68) もう多分、会わない君とは誰よりも信じたいものが同じだったよ(101) 誰しもが迷えば人は迷い子で　泣いてもいいし怒ってもいい(128)

ネタバレある男の手記として、我々読者に手渡された文書。すべてを理解したとも共感するとも言いきれない難読なものではあったけれど、ラスト畳み掛けるように真に迫ってくるものに圧倒された。そのひとつのことをたしかな質量をもって伝えるために、生死を巡る著者の色々な考えの羅列があったとおもうと、その真摯さに脱帽せずにはいられない。「ほんとうの愛とは、死すべき運命を背負わされた全部の生き物への憐憫である。」(145)

ネタバレ恋愛の、なかほど。ドキドキや幸せの最高潮でも、失恋や倦怠期のどん底でもない、それでも恋愛に含まれるもの。そういうものの空気感がとてもリアルに的確なことばで描かれていて、何の障害もなくするすると読めた。西さんのあとがきを読んで、そうか自然に受け入れられる、それこそが凄いのだと改めて。「解散の雨」がお気に入り。 「けれど、悩んでも弱っても傷ついてもいないなら、どうすればいいのだろう。あたしは、たいした理由もなく、ただ途方に暮れている。」(156)