３０代の駄駄者で手許不如意だった町田康が初めてしたためたエッセーっぽい書き物、還暦をとっくに超えた現在の町田節はどうなっているのだろうか、と訝しみながら読んだ。バブル景気と共にバンドブームが来てロック界もいい加減なものの居場所がなくなって、もはやここまでかと３年間ぶらぶら遊び暮らし、時代劇ばかり見て馬鹿げたことを思いついては帳面に書き溜めてゆくうち、そこにひとつながりの現実があることに気づき小説を書いてみようと思ったそうだ。時に軽薄短小で時に重厚長大な町田節のへらへらした語り口の原風景を知ることが出来た。

日本フォークソングの聖地巡礼、そそられるタイトルに惹かれて読んでみたものの、過去の音楽雑誌などを切り貼りしたような内容で期待外れだった。それでも筆者は吉田拓郎と林美雄パックインミュージックに多大なる影響を受けたというから好印象を抱かせ、これまで見逃していたエピソードを総覧できるのは良かった。例えば慶応三田祭事件で頭脳警察から拓郎もとばっちりを受け、RCサクセションのバンド誕生秘話やはっぴいえんど解散のすったもんだ、1985年国立競技場コンサートがニューミュージック界の葬式フェスだったというのは興味深い。

倉本聰が自嘲しながら語る”破れ星”の半生が分かったような気がする。30代から40代にかけて脚本は”速く、安く、うまく”をモットーに脂が乗って傲慢な一面も覗かせていたようで、NHK大河ドラマ「勝海舟」で制作スタッフから執拗な吊し上げに遭い札幌へ雲隠れの逃避行。当時フジプロダクションの指紋のないプロデューサーとの出会いから偽名で「６羽のかもめ」の脚本を書いた辺りで一大転機を迎え富良野への移住に繋がり、フジテレビ新体制による大制作局復活で「北の国から」が誕生した。倉本聰そのものがドラマのような人生なのだろう。

３０代の駄駄者で手許不如意だった町田康が初めてしたためたエッセーっぽい書き物、還暦をとっくに超えた現在の町田節はどうなっているのだろうか、と訝しみながら読んだ。バブル景気と共にバンドブームが来てロック界もいい加減なものの居場所がなくなって、もはやここまでかと３年間ぶらぶら遊び暮らし、時代劇ばかり見て馬鹿げたことを思いついては帳面に書き溜めてゆくうち、そこにひとつながりの現実があることに気づき小説を書いてみようと思ったそうだ。時に軽薄短小で時に重厚長大な町田節のへらへらした語り口の原風景を知ることが出来た。