伊与原先生らしい、科学の説得力が詰まっている短編集。毎回、最後の描写が美しく、情景を想像できて余韻が心地良い。各章の主人公は行き詰まりのようなものを抱えているが、人との出会いで新たな視点を得て前を向いていく。

自分とは縁の無い世界を見ることができるのが読書の楽しみのひとつであるが、この本はまさにそんな体験ができる一冊だった。オックスフォードの食堂を画像で見たのだが、ハリーポッターの世界そのものだった…エリザベス女王にお会いするところで「すげぇ…」となり、普通に電車やバスに乗って移動されている様子には「私たちと同じように感じるんだね」と親しみを覚える。そして後半は博士論文に臨み、研究に取り組んでおられる様子が多く描写される。読んでよかった。