形式:単行本
出版社:新日本出版社
本人が撮った写真が収録されているのも特徴だが、正視に耐えない残酷なもの(敵兵の処刑)が含まれているので注意。そもそも「捕虜を取る」という感覚が皆無で、捕まえた敵兵は「明日殺すことにする」とごく普通に書かれている。戦陣訓を待つまでもなく、虜囚は殺す/殺される=だから降参しない、というのが日本軍の常識になっていたのだろう。無論、徴発(略奪)の描写も頻発。娘さんの前書きによれば、著者は晩年病気に苦しんだ時、一言だけ「罰が当たった」と漏らしたのだという。こうした戦い方は、兵士たちの心をも蝕んでいたのだろうか。
編者(笠原十九司)の解説は、師団の戦闘行動や戦後に現地で行った聞き取り調査なども含む重要なものだが、ちょっと饒舌にすぎる印象。本文をぶった切る形で長大な解説が繰り返し挿入され、内容的にも日記から逸脱するケースが少なくない。兵士の日記と言いつつ、編者がそれを乗っ取っているのでは?とすら。これなら、最初から笠原氏の名前で一冊書き、日記を主要な参考資料と位置づけた方がスマートだったように思う。
日本軍上層部はまんまプーチンで、兵士の生命は軽視、食料は現地調達が基本(だから日本軍が行軍した場所は飛蝗が来たようなもの)、自軍の兵隊の生命も軽視だから、もちろん現地の中国人の生命など言わずもがな、南京占領後は捕虜を取るという発想がないので、敵と巻き込まれた地元民は皆殺し。南方戦線で日本軍は大量餓死したけど、中国戦線では餓死しなかったのは、その分現地で奪っていたから。とにかく酷い日本軍だが、昔の中国の話や今のロシア軍を考えると、近代化されていない軍隊はどこもこういう方式なのではなかろうか。
作者は途中でカメラを手に入れ、写真も撮っているが、蒋介石が黄河を決壊させた後の洪水が凄い(その後は消化器疾患が流行る)。あと、今の中国国歌が、この時代に抗日の歌として流行った映画の主題歌だとは知らなかった。37年からの2年間で作者は除隊しているが、太平洋戦争で再徴兵されなかったのかな。そして、この日記を出版することを是とした娘さんが凄いと思う。
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本人が撮った写真が収録されているのも特徴だが、正視に耐えない残酷なもの(敵兵の処刑)が含まれているので注意。そもそも「捕虜を取る」という感覚が皆無で、捕まえた敵兵は「明日殺すことにする」とごく普通に書かれている。戦陣訓を待つまでもなく、虜囚は殺す/殺される=だから降参しない、というのが日本軍の常識になっていたのだろう。無論、徴発(略奪)の描写も頻発。娘さんの前書きによれば、著者は晩年病気に苦しんだ時、一言だけ「罰が当たった」と漏らしたのだという。こうした戦い方は、兵士たちの心をも蝕んでいたのだろうか。
編者(笠原十九司)の解説は、師団の戦闘行動や戦後に現地で行った聞き取り調査なども含む重要なものだが、ちょっと饒舌にすぎる印象。本文をぶった切る形で長大な解説が繰り返し挿入され、内容的にも日記から逸脱するケースが少なくない。兵士の日記と言いつつ、編者がそれを乗っ取っているのでは?とすら。これなら、最初から笠原氏の名前で一冊書き、日記を主要な参考資料と位置づけた方がスマートだったように思う。