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土の記(下)

感想・レビュー
192

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コウジ
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上巻で提示された人々を取り囲む様々な散らばった環境が、 法事や村での草刈り農事、お盆、出産、娘の再婚祝い等の村の行事を経て離合集散を繰り返し、一旦息を吸う様にそれぞれの胸に止まり、また吐き出される時には形を変えて、村々や空や山に戻って行く様を感じる。 作中に東北の震災・西日本豪雨もきっちり取り込まれ、「そんな世界で生きている」と言う事を穏やかに提示してくれる。やはり氏の小説は好きだな。1冊目。
0255文字
takao
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ふむ
0255文字
chocoholic
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ネタバレ上巻に引き続き、男やもめの伊佐夫の日々が淡々と綴られる。時に後悔の念に駆られたり、亡き妻への嫉妬心に囚われたりする様は伊佐夫の思考を覗き見ているかのよう。そして、そのいつまでも続くかのような田舎の暮らしを通して、今の日本の現実が浮彫りにされていく。過疎、高齢化、家族の崩壊、農業の衰退。一方、妻とは容姿こそ似ているが性格の違う義妹への恋情は形にならないま燻る。今や独り身同士の、もしも初めから一緒になっていれば、という夢想。誰しもそんな、もしを思いながら、人生の終わりは必ずやってくる。突然の終りに余韻が残る。
chocoholic

土を耕し土を愛する伊佐夫の生活の綿密な描写は髙村さん!と思ったが、雨の描写もいつもながら印象的だった。農作物も動物も人間も、雨(水)がなければ生きられない。やはり生き物は自然の一部なんだよな。裕福でも貧乏でも都会暮らしでも田舎暮らしでも、どんなに足掻いても誰にも平等に死は訪れる。

07/15 12:59
0255文字
すばる
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主人公伊佐夫の記憶に、過去の出来事が時間を超えて混じり始める状況は、軽めの認知症だと思われるが、身につまされる思いがした。久代にも昭代の影が重なりつつ、二人の仲がどうなるのか期待した。娘の陽子、孫の彩子とのやりとりも面白い。稲作の専門的な描写が異常に細かく、農業の村落、そこに暮らす人々の関係をお互いの心理も含めて描いていて、事件といえるものは女子高校生の失踪くらいの日常の農村風景が身に染みる。最後の一行、大雨による大宇陀漆河原の二名の行方不明とは誰のことか。。。
0255文字
優希
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地味な作品ではありますが、人の晩年の生死をこれでもかと書ききった作品だと思います。日常から過去を見つめ、死を見つめる。そんな年を迎える日が誰しも訪れることを改めて実感させられました。
0255文字
takeshi3017
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今まで福澤彰之シリーズで、漁師の生活や仏教といった変わった題材を描いてきたが、本作では米つくりの農家という日本人にとってある意味普遍的な日常生活を描く。都会に住む自分のような者にとっては異質だが、日本の歴史を通覧すると普遍的であると言え、衆目の目を惹きやすい変わった題材から普通の題材を描く事にシフトしているような気さえする。普通の題材をいかに深く描くか、という事に挑戦しているのか?とも思う。土と共に生き、土に還る。タイトルにはそんな思いが込められているような気がする。ただ単に伊佐夫が土のサンプル収集に凝→
takeshi3017

っていたから、というだけではないだろう。その伊佐夫も、16年前に交通事故に遭い植物状態になって、半年前に死んだ妻の昭代が生前他に男を作って不貞をはたらいていたのではないかという疑惑を払拭できず、うじうじと考え昭代という死者にとらわれている。昭代の妹久代と結婚していればまた違う道を歩んでいたのかもね、とも思う。下巻になって伊佐夫のボケが進み目が開いていても現実と夢の境がなくなる事、記憶の中の風景と現実が混在していく描写には恐怖を覚えた。→

01/13 22:20
0255文字
mochiomochi
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うまい表現がみつからないが、髙村氏の作品の中では地味にもかかわらず、人間の晩年の生と死を描き切っていると思う。忘れたい記憶程、ふとした時に、人の脳裏に還ってくるものなのだろうか。最近老いてきた自身の親もこんな感じなのだろうか、とふと思った。
0255文字
KAZOO
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これまでの長篇とは異なり、警察の刑事が出てくる事件などは殆どありません。奈良県の大宇陀という地域で70代の一人やもめの男性(この男性は東京の大学を出て大手電機メーカーに就職して奈良の工場に行かされそこで入り婿になった)が田を耕し稲をつくりお茶などをつくっている様子を高村さん独特のきめ細かな描写で私のとってはかなり楽しませてくれました。稲をつくる1年の様子はまるで栽培をするかのような感じです。死んだ妻や娘あるいは孫の様子も描かれます。取り立てて大きな事件もなく淡々と話が進みます。好きな作品です。
0255文字
jjj
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しかし、そんな自省、もしくは自分への釈明をしたのも束の間、一つ深呼吸をしてみれば、ふと自分がヤモリかゲジゲジ、あるいはカメムシになって、この柱や梁、壁土、天井、畳などと一体化したような感覚に襲われ、四十年の間に自分は旧姓の佐野ではなく、もう完全に上谷の人間になって、上谷の地所で上谷の人びとと同じように考え、生きているのだと感じる。昭代の身体の一部だった農事と土と自然のすべてが、確かに自分の身体にも滲み込んだのを感じる。(234頁)この物語のなかで、心に残った一文です。
0255文字
つん
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ネタバレ亡き妻への鬱屈した想いが続くが、夫婦石の制作や農事暦を作っての農作業などが癒やしになっているのだろうか。72歳の男の1年半に渡る暮らしぶりを、自分の父親が伊佐夫ならどのような気持ちになるのだろうかと時折想像しながら読んだ。
0255文字
coldsurgeon
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主人公のにわか農家ぶりは、とても理詰めで理科の実験のような作業が続き、とても興味深い。学生時代の知識により、農地や地質にこだわりを持つ姿は、kらの人生の上で、とても大切なものであろうが、傍から見れば、こだわりすぎていると思うのかもしれない。寡夫となり、亡き妻の妹との人生上の繋がりは強くなるのか弱くなるのか、わからないが、古希過ぎの生活には、どちらでもよいことかもしれない。最後の一行に記される2名の死亡者とは誰であろうか、と気になった。
0255文字
MOONIN
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ネタバレ何も起きなかった…。いや事件は起こってるけど、主人公が積極的には関わらないだけか。 現実の細々したことが濃密に描写される合間から、ハッキリとは自覚されないけどそれなりに強い感情が立ち上がってくるのに圧倒された。 全く理想化されてない田舎の生活の嫌さが書かれているのに、嫌さの中にチラチラ良さも見えるのが本当にリアル…。 主人公と女達の感情が、核心を見せないまま渦巻いてるのが、とても現実っぽいと思った。 脳梗塞の直前の描写が怖すぎて震えた!とにかくリアルだった。記録小説?
0255文字
まこやん
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ネタバレ衝撃のラスト。まさか。都会から来て奈良の奥深い土地の自然と共生する人となって、最後はその土に流されてしまうなんて。彼の毎日のいろんな思いや農作物に対する工夫も消え、あんなに待ち望んだ収穫もなく人生が終わるとは。でも人生とはそういうものかもしれないと思った。誰にも明日の保証はないのだから。いつ人生は無くなるかわからない。そう思って生きた方がいい。忘れない小説だろう。高村薫はやはりすごい。
0255文字
ぺ
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いまも昔も、自分は結局、こうして独りで過ごす時間が好きな人間だったのだろう、と。大きな過ちもなく、人並みに働いて家族を養ってきた一方、いつも少しうわのそらで、生活とは無縁の音や光、波動、土、微生物などに勝手な思いを馳せる端から家族のことを数分ずつ、あるいは数時間ずつ忘れ続けてきたということだ。そしてたぶん、そこには一番身近であるはずの昭代や陽子の、長年の失望や反発さえ含まれていたのだろう、と。
0255文字
spica
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ネタバレ農家の四季はゆっくり、しっかり移り変わる。ミホの一家や少女の事件、伊佐夫のボケ疑惑など、このままミステリやサスペンスにでも発展するのか?とハラハラさせておいて、それなりに普段に戻ってしまう。頭は老化していても、作物については身にしみついており、伊佐夫をはじめとした農家の人々にとって、本当に重要なことなのだとわかる。311後の茫然とした脱力感は非常に共感できた。わたしはしばらく音楽を聴けなくなった。いろいろあるけど、この一日が、この一瞬が大切なんだろう。雨の音と蝉の声の描写が好き。脳裏にリアルによみがえる。
spica

帯の「ラスト数瞬に茫然!!」……そうだね、きみのこの言葉さえ目に入ってこなければ、わたしはもっともっと衝撃を受けて楽しめた。帯はまったく必要ないと思うし、あったとしてもネタバレするのは出版社として重罪ではないのか。ここに書いても新潮社には届かないだろうが。帯という存在がこの世から滅び去りますように!!

11/03 22:19
0255文字
mako
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土地に浸み込んだ記憶と、頭の中にある想念が境目なく行き交い、時には土地の記憶に揺さぶられ、深い海の底にいるかの如く揉まれる。濃密な空気感と土や驟雨の匂いも立ち込める、しかし稲の成長だけは客観的な時間を刻んでいく、そういう作品だった。なんなんだ、この感触は。
0255文字
ヒラリ
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ネタバレ次元がずれるほどの災禍を経験した、個人は、集団は、何を見て、何を思うのでしょうか。9.11で始まる「太陽を曳く馬」と双璧をなす、高村文学の到達点という感じ。とまれw、高村薫は、これからも進化し続けることでしょう。いつもわたしの道標です。
0255文字
あきあかね
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会話文が少ない。殆どが主人公の意識の描写である。口に出さずとも考えていない訳ではないと改めて思う。出さない事を選択しているという事に諦めの様なやるせなさを感じた。農業や地層の描写は専門的で難解だか、敢えて読む事で理解できる心情があると思う。何故か娘の再婚相手との出会いに涙が出た。 全体を通して著者の静かに心の奥に沈澱する怒りの様なものを感じた。
0255文字
あきあかね
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会話文が少ない。殆どが主人公の意識の描写である。口に出さずとも考えていない訳ではないと改めて思う。出さない事を選択しているという事に諦めの様なやるせなさを感じた。農業や地層の描写は専門的で難解だか、敢えて読む事で理解できる心情があると思う。何故か娘の再婚相手との出会いに涙が出た。 全体を通して著者の静かに心の奥に沈澱する怒りの様なものを感じた。
0255文字
雪乃
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【図書館本】面白かった。
0255文字
ツカモトカネユキ
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上巻から続き。大層な事件があり集落が騒がしくなりますが、自身の惚け騒動、娘家族の帰省、義妹とのじりじりとした接近の方が重要事項に感じられます。それで、いろいろと変化を生むのですが惚け騒動の読み進めがつらいです。当地を襲った自然災害で幕を閉じます。違う形になるでしょうが人、土地含めた仕切り直しからでも強く一族の流れは綿々と続いていきそうです。土石流という土に流されリセットされる様に合点がいきました。謎が明らかになるというのではなく、主役がやっと理解し現実を受け入れたさまは清々しくもありました。
0255文字
Rachel
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友人が上巻だけしか買ってないから下巻は図書館で借りてと言って貸してくれた(笑)淡々とした内容にすぐ飽きて感動もなくしばらくほったらかしてたけどなんとか読み終え、下巻に突入。なんだこの展開は。一気に読んだ。友人に逆に勧めないと。。読まな損やで。
0255文字
ekko
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上下巻を読み終えて。淡々とした語り口とエンディングに「諸行無常の響きあり」という感が滲み出ていた。主人公の妻の死に淡い疑惑をにおわせながらはっきりしないまま淡々と日常が展開する。展開に唯一色を添えるのは、日本人の夫と離婚し、娘を連れて、アメリカ人と再婚し、アメリカで暮らすことになるひとり娘の存在。私はこれまで、この娘の視点で描かれた本を好んで読んでいたはずだ。図らずも、その親の視点から描かれた小説を、今回初めて手にした。私がそういう年になったということか。土の香りのする小説だった。
0255文字
だーさん
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平凡な男の老いを見つめる平凡な物語。しかしそんな人生にも分岐点は多々あり、最終的に壮大な一冊の本となる。それは人間ひとりひとりに当てはまる、勿論自分にも。沁みる一冊。
0255文字
KEI
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主人公・伊佐夫が黙々と田畑に向かう四季の様子が詳細に描かれていた。そこに背景となる当時の集落の様々な出来事や北日本大震災などのエピソードが入り込み、これによって伊佐夫は過去と今を彷徨する。滑らかな文体に織り込まれるミンミン、カサカサ、ドドトーンの擬音がリズミカルで息をつかせない。亡き妻の不貞や思い出される慕情、入り婿として生き、集落の自然の一部となる喜びと孤独を感じつつ、老いていく人間もまた自然の一部となる。ラストは高村さんらしい衝撃を与えてくれた。
クリママ

上巻は戸惑いながら読みましたが、下巻は慣れたせいか、少し読みやすかったように思いました。「老いていく人間もまた自然の一部となる」、KEIさんが書かれたとおり、きっと、そういうことなのでしょうね。

01/29 00:29
KEI

クリママさん 私も下巻の方が読みやすく、読んだ甲斐があったと感じました。背中を押して下さりありがとうございました。

01/29 00:42
0255文字
マウンテンゴリラ
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肩肘を張らない自然な人生。その魅力に、文章の素朴さとは裏腹に、いや、それ故にというべきか、ますます引込まれるような不思議な物語であった。上巻を読み始めたときは、主人公は、人付き合いが苦手で、ひたすら自然に向き合うことを敢えて選び取る人間のようにも映った。しかし、それは全くの私の偏見で、人付き合いを敢えて厭うでもなく、自然の一部として淡々と、粛々と受け止め、受け流すような、柔軟さと強さを兼ね備えた生き様を見せられたような気がした。後編では、周辺社会、自然現象において、様々な慌ただしい展開があるが、→(2)
マウンテンゴリラ

(2)全てを包括するかのように克明に描かれる土や農作物や小動物たちに、人生の捉え方の大きなヒントが隠されているような気がした。

12/18 10:18
0255文字
kabe
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初髙村薫。ようやく読了。純文学は難しい。再読しないと。
0255文字
WA
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ネタバレ特筆したい2点: ①素晴らしい文体(リズム、ことば選び、精緻、現実感) ②「二ユース」の背後にある人の生に無頓着であったことへの驚きと懺悔
0255文字
アーちゃん
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ネタバレ図書館本。下巻は2010年12月~2011年8月まで。大阪のフラダンスショーで東日本大震災に遭遇する伊佐夫と義妹の久代。震災の報道と過去の記憶が伊佐夫の脳内を朧げなものにしてゆき、後で土木作業員に殺害される、自転車を押した女子高生と話した記憶が曖昧になるところは脳梗塞患者の脳内を見たような怖さがあった。その後入院とアメリカで再婚した娘一家の帰省があり、そして唐突に終わるラスト。平成23年台風12号による集落の犠牲者は二人。誰かは明らかになっていないが、多分伊佐夫が入っているのだろう。下巻も一気読みでした。
ちょろこ

.....φ(・∀・*)なるほどぉ.…慣れも必要ですね(*・∀・*)ノ

10/19 10:57
アーちゃん

後はやっぱり好みかと♪

10/19 11:06
6件のコメントを全て見る
0255文字
Arnold Kawakami
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ネタバレ老人の田畑に向かう日常を淡々と書いているが、ここそこに細かいエピソードを入れていく。そのエピソードも昭代との記憶を呼び覚ます契機に過ぎない。昭代が生きていた頃の会社の同僚の奥さんが宗教に嵌り伊佐夫のところにも勧誘に来た記憶と東日本大震災とのつながりを作り、見事に回収している。だがこの物語の着地点はどこであろう。もう伊佐夫が死ぬしかないと思われたそのとき突然に訪れる。なにも解決はしてない物語だが、もはや高村の作品には書き込まれた細部があればいいような気がする。
0255文字
エヌ氏
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★★★★★
0255文字
Opus13
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どこか刑事裁判の冒頭陳述のように描写される、高村作品の登場人物たち。希望的観測も物分かりの良さも入り込む余地はない。そうまで突き放されようが、どっこい日々を生きている。きっと人生ってそんなものだろう。
0255文字
forsanet
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容赦のないリアリズムゆえ優しさに満ちた小説。癒されたし諭された。
0255文字
翠春
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土と自然と世間様と老いと…生活と共に積み重なってゆく平凡な物語。淡々と綴られてゆく世界に、これも当たり前のようにラストページに下ろされた、しかし世界を分断する緞帳。嗚呼、言葉が出ない。感想を述べようにも何から何を振り返ろうか。これは読むには私の精神が幼かった。追い付かぬ。
0255文字
むつこ
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犬を飼い始めたりご近所さんとの交流が微笑ましいが老いを自覚する物忘れが激しい生活。東北地方での大地震を知るが奈良に住む主人公の生活は通常通り、土を耕すサクサクという表現に暮らしってそういうものだろうなと痛感。全体的に風を感じる以上に生活の匂いを感じさせる小説だった。
0255文字
ruddysomali
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ネタバレ上下巻読了。日々の生活に纏わる事象の丹念な描写を、読み飛ばさず丁寧に読んだ。自分がそこに暮らすようなリアリティを感じる。そしてずっとある気になっている毎日が大きい小さいはあるが、揺れる。笑いも有る。先に『生死の覚悟』を読んでしまったので、自分の心に通奏低音で昏いものが流れてはいて、それでも「ことん」と突き落とされるようなラストには驚かされた。自分の生にも自然現象にも理由や根拠はない。諸行無常。
0255文字
s
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純文学/大衆文学という日本独特の線引きにどこまで意味があるのかは別として、現状の日本文学のジャンル分けで言えば、この作品は完全に純文学だろう。人間を卑小なものとして飲み込んでしまうような自然の描写に、中上健次のような空気から、深沢七郎のようなアンチ・ヒューマニズムまでを感じさせる。小さな世界を描いた大作。
0255文字
ちょろちょろ鼠
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やっと読み終わった・・・・。自然観察と人間観察とそれを文章にして構成と抑揚と抑止と・・・・って説明するのも憚られる。こんな読後感ははじめてだな。まだ、咀嚼しきれていない感じ。
0255文字
テディ
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ネタバレ稲を育て過去を回想する伊佐夫。事故の後に病死した妻。妻と2人で入る墓石を建てる作業。日々成長していく稲。長閑な田園風景に囲まれた生活の一方で日本中を震撼させた東日本大地震が発生。渡米した娘からの安否を気遣う電話。人里離れた高齢化が進む自然に囲まれた村社会と原発や核家族化の問題にも焦点が当てられる。時を経て再婚した娘夫婦と孫が伊佐夫の元に遊びに来る。外国人の夫。過去の振り返りを通じた回顧、妄想、憤り。痴呆が進んだ伊佐夫の煩悩は、日常の我々にも共通する。村が豪雨で流されるのは自然に生かされている為である。
テディ

物語のキーになる大きな出来事は特に起きません。ただただ時が経過していくだけです。人間の営みは紆余曲折として一本線では行かずに必ず挫折、嫉妬、憎悪や欲が埋めいております。また我々は豊かで獰猛な自然に生かされております。スケールの大きいゆったりとした自然が時を刻みますが何故人間は瑣末な事を深掘りして葛藤と戦うのでしょうか?舞台が閑散とした農村でしたが人間について考えさせられた作品でした。

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