形式:文庫
出版社:筑摩書房
絶えざる戦乱の圧力が巨大な官僚機構を産み出し、氏族制の解体と農民の直接的編成を可能にする。 その帰結として生まれた専制国家は、その成立当初においては強力な国家機構とその支配下でも残存していた前国家的社会集団との組み合わせによって巨大な剰余の集中を可能にしていた。 しかし、専制的国家機構はその内在的論理の自己展開によって次第に社会から浮き上がり、一方、個に解体された社会では公共的な領域は縮減される。そこに資本主義を発展を可能にする統制と信用・流通・労働の編成は発達し得ない。ここに中国専制国家の限界があった。
他方、共同体の重層によって成り立っていた日本やヨーロッパの封建社会においては、生産力の向上が共同体と領主制との両者を強化する。ここに合議による規範の強い共有と上位共同体の集中化とが共に実現され、広域且つ緊密に社会を統合する絶対主義段階に至る(日本だと近世がこの段階に当たる)。これが近代国家を創出、或いは受容する基盤となる。
中国の歴史について勉強するとき、王朝政治は詳しく論じられるのに、村の姿が分かりにくくていつも苦労してきた。それがここでは、中国社会が基本的に個人主義の社会であること、それ故に専制国家が半ば強引に誕生したことが紹介され、長年の疑問が氷解した気がした。当たり前だと思っていた日本の村あるいは共同体と呼ばれる存在が、実はきわめて特異であったことが印象的。近代・現代においてその共同体が解体の危機に瀕していることを指摘したことも重要。歴史学という方法が現代を理解する上で有効なことを実証した。
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絶えざる戦乱の圧力が巨大な官僚機構を産み出し、氏族制の解体と農民の直接的編成を可能にする。 その帰結として生まれた専制国家は、その成立当初においては強力な国家機構とその支配下でも残存していた前国家的社会集団との組み合わせによって巨大な剰余の集中を可能にしていた。 しかし、専制的国家機構はその内在的論理の自己展開によって次第に社会から浮き上がり、一方、個に解体された社会では公共的な領域は縮減される。そこに資本主義を発展を可能にする統制と信用・流通・労働の編成は発達し得ない。ここに中国専制国家の限界があった。
他方、共同体の重層によって成り立っていた日本やヨーロッパの封建社会においては、生産力の向上が共同体と領主制との両者を強化する。ここに合議による規範の強い共有と上位共同体の集中化とが共に実現され、広域且つ緊密に社会を統合する絶対主義段階に至る(日本だと近世がこの段階に当たる)。これが近代国家を創出、或いは受容する基盤となる。