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専制国家史論 (ちくま学芸文庫)

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みずち
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主に中国と日本(西洋古代国家も少し)における国家形成・発展史の比較を通じ、中国専制国家の世界史的位相を明らかにする共に、返す刀で独自の国家成立・発展モデルを提示している。国家という概念を非常に限定的に解釈している点には少し注意が必要かもしれない。 これまで前近代中国経済の力量を強調するような話を見聞きすることが多かったので、シビアにその限界を指摘しているのが新鮮だった。
みずち

絶えざる戦乱の圧力が巨大な官僚機構を産み出し、氏族制の解体と農民の直接的編成を可能にする。 その帰結として生まれた専制国家は、その成立当初においては強力な国家機構とその支配下でも残存していた前国家的社会集団との組み合わせによって巨大な剰余の集中を可能にしていた。 しかし、専制的国家機構はその内在的論理の自己展開によって次第に社会から浮き上がり、一方、個に解体された社会では公共的な領域は縮減される。そこに資本主義を発展を可能にする統制と信用・流通・労働の編成は発達し得ない。ここに中国専制国家の限界があった。

09/21 23:17
みずち

他方、共同体の重層によって成り立っていた日本やヨーロッパの封建社会においては、生産力の向上が共同体と領主制との両者を強化する。ここに合議による規範の強い共有と上位共同体の集中化とが共に実現され、広域且つ緊密に社会を統合する絶対主義段階に至る(日本だと近世がこの段階に当たる)。これが近代国家を創出、或いは受容する基盤となる。

09/21 23:23
5件のコメントを全て見る
0255文字
どうろじ
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「絶対的な真実も神も無いこの功利主義的な世界では、他者は手段化される。そこでは人格は早熟的に物象化される。」 世界史をヒトの統合の高度化と分業の構造化の過程であると仮定した上で、合議による合意への服従という規範の欠いた専制を前提とする社会が近代資本主義にどう影響されたかを論ずる内容でとてもおもしろい。今後は中国史にも目を向けようかと思う。
0255文字
aki
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古典古代(ギリシア・ローマ世界)と中国の分岐点が気になるなど。
0255文字
飯田一史
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中国は自律的なまとまりを欠いた社会と、意思決定が集中化した巨大な政治体制を特徴とする専制国家のまま近代化したとし、日本との詳細な比較からその特質を論じていく。
0255文字
Yanagi
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中国社会・政治の特質を「専制国家」と捉え、サルからの社会集団形成から古代帝国、そして現代中国までを、日本の封建的ムラ社会などと比較させながら論じた大変な名著。なぜ共産主義、党国体制が中国で根付いたのかずっと不思議だったが、共同体の不在など筆者の論点に鑑みると合点がいく。2018年、習近平はまさに現代における「皇帝」のごとき存在となった。それは中国社会の要請なのか(統治のために皇帝にならざるを得ないのか)、そうではないのか、その考察の一助にもなりそう。
0255文字
ろば
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17年刊、初出は98年。中国の歴史を専制国家としてとらえ、その特質を日本や西欧を合わせ鏡としながら浮き彫りにしていく。古代から近現代まで文字どおり中国大陸の歴史を通覧した。西欧とともに日本が封建時代を体験したこと(ただ中世に関しては理解がやや乱暴で難解)やそれを重層的な共同体が支えたことを指摘、それに対して中国ではムラが共同体としての実態をもたず、ドライな個人主義とそれゆえに人間関係が重視されたことを指摘する。専制中国では商人・政治家ともに中間層が未熟、それが今日の中国社会にもつながる。刺激的業績。
ろば

中国の歴史について勉強するとき、王朝政治は詳しく論じられるのに、村の姿が分かりにくくていつも苦労してきた。それがここでは、中国社会が基本的に個人主義の社会であること、それ故に専制国家が半ば強引に誕生したことが紹介され、長年の疑問が氷解した気がした。当たり前だと思っていた日本の村あるいは共同体と呼ばれる存在が、実はきわめて特異であったことが印象的。近代・現代においてその共同体が解体の危機に瀕していることを指摘したことも重要。歴史学という方法が現代を理解する上で有効なことを実証した。

04/10 23:57
0255文字
スプリント
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古代から現代に至る中国と日本の国家形勢の比較論です。
0255文字
さとうしん
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メインは中国と日本との国家形成の比較だが、「中国史から世界史へ」という副題通り西欧の古典古代が参照されたり、話がボノボまで遡ったりする。日本が中国の後追い国家として数百年単位で発展に要する期間を圧縮させた点、日本も中国も戦国時代が社会再編の時代となったこと、そして中国共産党の支配について「社会は一見すると高い操作性を示した」としつつも、「しかし、政策を受け入れ、自ら具体化すべき自律的社会の無いがゆえに、政策は安定的に実質化されなかった」とする評価が印象的。
0255文字
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