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顔真卿伝―時事はただ天のみぞ知る

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kuroma831
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ネタバレ京都学派の碩学として名高い吉川先生による、唐の顔真卿の評伝。王羲之と並ぶ書家として有名だが、安史の乱における抵抗や李希烈の反乱での壮絶な最期など、一族の歴史や文芸面での交友だけでなく、硬骨の官としての人生も描く名著。顔氏は顔之推や顔師古も有名だが、魏晋期から続く学芸の名家として著名だったのは知らなかった。内藤湖南の唐宋変革論は流石に古すぎるとは思うものの、後漢から魏晋期に確立した豪族や貴族層が唐代に徐々に影を薄くし、宋代でほぼ没落するという流れと似た形で顔氏一族の歴史を感じてしまった。
kuroma831

終章で述べられるが、顔之推の顔氏家訓の中の「書をもって自らに命づくることなかれ」という項を顔真卿の生き様と結びつける流れは見事。やはり吉川先生の文は明朗で読みやすい。名著。

01/01 22:09
kuroma831

清廉潔白な忠烈の士という評価と、書家としての名声、それらは別の評価と思っていたが、生き様が書に現れるという考えからすると、顔真卿の生き様こそが書家としての名声を後代まで残した一員だったんだなと感じる本でした。もちろん、その理屈で言えば、南北朝時代で一番の名門の瑯琊王氏に生まれたのに官界を嫌った王羲之の書はどう評価すべきなのか気になるところだが、文芸面は疎いので吉川先生の六朝文化史をまた手に取りたいところ。

01/01 22:13
0255文字
書房
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『顔氏家訓』で有名な顔之推いらい学問を立ててきた瑯琊顔氏の掉尾を飾り、南朝から連なる文人ネットワークの只中にいた文化人、そして安史の乱に代表される軍閥に抗し、佞臣と称さるる宰相に媚びなかった硬骨の政治家・官僚。今も書を学ぶにおいて欠かせない存在たる顔真卿について、こうした側面をバランスよく描いた本。多数の人物・典故が挙げられ難解であるにもかかわらず、それを感じさせないのは、著者の流麗にして訓みやすい文章ゆえであろう。
0255文字
ピオリーヌ
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今まで顔真卿といえば王羲之とならぶ書家のトップという印象が強く、その生き様についてはほとんど知らなかった。だがこの本により、その書の事績よりも剛直で清廉な生き方、またそれに対する賞賛を知ることができた。顔真卿展、行かなかった自分が情けない。
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知降 星人
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清臣は学問ゆたかであって、正を守り、節を全うし、文の傑である。
0255文字
ちり
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「書を以て自らに命づくること勿かれ」作品とか芸術を人間性の一環ないしは結果として見るみたいな、色んなことが「道」になってしまう(書道とか柔道とか)感じが
0255文字
そーうん
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乱を起こした安禄山に敢然と立ち向かった節義、及びその書を以て知られる顔真卿の一生を描く。○顔之推(『顔氏家訓』)に顔師古(『漢書』注)とゴージャスな家系。○杜甫と一瞬だけ交錯する。切ない。○顔真卿と友人の唱和詩はもちろん、杜甫・白居易の詩が史料として引かれる。また、「漁陽は豪侠の地」が「漁陽はいなせな兄ちゃんたちが風切る町」となるなど、引用史料の自由闊達な訳がよい。
そーうん

顔真卿展に行ってきました。人間関係とか事跡とか、この本のおかげで予習済み。「祭姪文稿」は80分待ちだったので断念、いつか台湾に直接見に行きます。

02/21 00:19
0255文字
韓信
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顔真卿の家系、官歴、交友、道教信仰、碑文をはじめとする書のほかに字書編纂など文芸面での功績、後世の評価などを網羅する本格的評伝。先行する外山軍治の評伝が顔真卿を中心とした当時の政情と官界の群像を描いた編年体の歴史書だとすれば、本書は紀伝体のまさに「顔真卿伝」。総合的にとらえた顔真卿像を、著者ならではの流麗な筆致で描いて読み物として抜群に面白い。現代では顔真卿といえば書の印象が強いが、それも彼の清廉な精神の一発露として捉える宋代以降の評価は、高潔な隠士として陶淵明とその詩を評価する価値観と同根なのだろう。
韓信

顔真卿の交友関係としては彼が江南に左遷されていたときの詩文関係の人脈などは詳しいのだが、個人的には安禄山の旗下にいたときの人脈について、もう少し言及してほしかった。范陽節度副使として共に安禄山の旗下にいたソグド系突厥の康阿義屈達干の神道碑の碑文を編んでいるのだけど、その家系や唐朝への内附の経緯など漠北の情報がやたら詳細なので、どのような資料を参考にしたのか、顔真卿自身は突厥をはじめとする北族をどのように見ていたのか、という点が気になるんだよな。

02/07 23:30
0255文字
さとうしん
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顔真卿の生涯、その書作品、一族や姻族、時代背景、交友、後世の評価などをバランス良く描き出した評伝。個人的には顏之推以来の家学、あるいは書法の継承について面白く読んだ。副題はオビにも採られている「書を以て自らに命づくること勿かれ」でも良かったかもしれない。書芸術は人間性、更に言えば道徳性の一局面の表出であるという東アジアの伝統的な芸術観について考えさせられる。
0255文字
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