形式:単行本
出版社:法蔵館
終章で述べられるが、顔之推の顔氏家訓の中の「書をもって自らに命づくることなかれ」という項を顔真卿の生き様と結びつける流れは見事。やはり吉川先生の文は明朗で読みやすい。名著。
清廉潔白な忠烈の士という評価と、書家としての名声、それらは別の評価と思っていたが、生き様が書に現れるという考えからすると、顔真卿の生き様こそが書家としての名声を後代まで残した一員だったんだなと感じる本でした。もちろん、その理屈で言えば、南北朝時代で一番の名門の瑯琊王氏に生まれたのに官界を嫌った王羲之の書はどう評価すべきなのか気になるところだが、文芸面は疎いので吉川先生の六朝文化史をまた手に取りたいところ。
顔真卿展に行ってきました。人間関係とか事跡とか、この本のおかげで予習済み。「祭姪文稿」は80分待ちだったので断念、いつか台湾に直接見に行きます。
顔真卿の交友関係としては彼が江南に左遷されていたときの詩文関係の人脈などは詳しいのだが、個人的には安禄山の旗下にいたときの人脈について、もう少し言及してほしかった。范陽節度副使として共に安禄山の旗下にいたソグド系突厥の康阿義屈達干の神道碑の碑文を編んでいるのだけど、その家系や唐朝への内附の経緯など漠北の情報がやたら詳細なので、どのような資料を参考にしたのか、顔真卿自身は突厥をはじめとする北族をどのように見ていたのか、という点が気になるんだよな。
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終章で述べられるが、顔之推の顔氏家訓の中の「書をもって自らに命づくることなかれ」という項を顔真卿の生き様と結びつける流れは見事。やはり吉川先生の文は明朗で読みやすい。名著。
清廉潔白な忠烈の士という評価と、書家としての名声、それらは別の評価と思っていたが、生き様が書に現れるという考えからすると、顔真卿の生き様こそが書家としての名声を後代まで残した一員だったんだなと感じる本でした。もちろん、その理屈で言えば、南北朝時代で一番の名門の瑯琊王氏に生まれたのに官界を嫌った王羲之の書はどう評価すべきなのか気になるところだが、文芸面は疎いので吉川先生の六朝文化史をまた手に取りたいところ。