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ナチス 破壊の経済 下

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鯖
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下巻はユダヤ人や敵国、敵対する人々への政策も含めた経済について。なぜあんな無茶苦茶な経済政策と再軍備を推し進めたかという問いに対する「アメリカの世界支配に対する欧州の最後の悪あがき」という身も蓋もない答え。不足する外貨、資源、労働力は国内で統制計画を実施し、国外から奪いつくす。ユダヤ人は国外移住には多額の税を取られ、できなければ殺される。上下巻通してナチスの通俗的な説をひたすらデータだして実証的に否定していくだけなので、もう少し他の本も読もうとは思ってる。800ぺージ近い大作。訳者の方もお疲れさまでした。
0255文字
ジュン
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上巻では経済復興やアウトバーン神話などを資料から徹底的に批判し、その場当たり的な性格を明らかにしてきたが、下巻ではそこに人種戦争とジェノサイドが加わる。原題のThe Wages of Destructionには複数の意味が込められていることがわかる。この点、複数形がある英語は面白い。「経済」と訳されたwageは本来、賃金や(労働に対する)報酬という意味があるが、複数形にすることでより広く本書の主題をカバーしている。破壊の経済「たち」。日本語にはなりえない表現だ。いずれにせよナチス研究における定本となる。
0255文字
ばたやん@かみがた
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昨年話題になった大木毅『独ソ戦』は、所謂国防軍神話を完膚無きまで否定するものでした。すなわち、国防軍首脳部の作戦通りやれば戦争を早期に終結出来た、ヒトラーの横車が全てダメにしたと言うのが真っ赤な間違いで、その作戦も継戦の展望を欠き出た所勝負で、後半は明らかに赤軍よりも戦略的、戦術的優位性を欠いていたとしたのですから。また、SS等のナチ機関のせいにし自分たちは手が汚れてない、とした占領地でのユダヤ人初めとする他民族への殺害・迫害も積極的に手を貸していたことがあからさまにされます。(1/6)
ばたやん@かみがた

の周辺では数多くの先進的な化学工場が設けられ、ユダヤ人、捕虜、外国人労働者等を労働力としていました。戦後になって、この間の軍需活動を支えたと自己を喧伝したA.シュペーア(軍需相)の「活躍」は、ユダヤ人等を駆り立てたSS率いるヒムラー達との合作と言えるもので、労働者の徴用→労働→殺害(意図したもの、せざるもの含む)のサイクルを極限までかつその場限りで“合理的”に遂行した結果、可能だったと言えるのです。本書は彼の「非政治性」の神話や思い込みを叩き潰す著でもあります。(5/6)

07/26 13:57
ばたやん@かみがた

一読して思うのは全体主義国家の荒唐無稽とも思える国策、しかしながらそれを遂行する上での機関や個人の持つ鋭利な「合理性」、そしてそれがもたらすグロテスクな惨状でありましょう。現代において正にこれに近いことを仕出かしているのは中国です。我々は民主主義国の常識を一度は捨てて、中国の国際観や世界観を知った上で、かの国と共産党は今後どの様な行動を国内外で取って行くのかを考えて行かなければなりません。その意味で、本書は学ぶべき内容のあるテキストだと思います。(6/6)

07/26 13:57
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ゲオルギオ・ハーン
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戦争に国力のほとんどを注ぎ込んだナチスドイツの根本にはアメリカへの対抗戦略であるドイツの生存圏確保という思想があった。そのために軍備偏重の統制経済と捕虜、外国人、ユダヤ人を餓死させながら効率的に働かせて、生産性を高めた。ソ連に苦戦しても負けじと戦争遂行のために効率化を進めた。シュペーアの「奇跡」は数字のマジックだが、ナチスの生産性が一時的にでもソ連や英国を上回ったのは事実。台頭する米ソに対する欧州の動きという視点で考えると第二次大戦についての捉え方を再考しなければいけないかなと思いました。
ばたやん@かみがた

…結局、買いました。まぁその価値はあると思います。

07/26 16:34
ゲオルギオ・ハーン

見つかったのかな、と嬉しく思っていましたが、再会できなくて少し残念ですね。早速、レビューも読ませて頂きました。いつもながら分かりやすいまとめでした。仰々しい言葉を使い、人命を軽んずる全体主義社会の危険さが改めて分かります。

07/26 17:23
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0255文字
tsuyoshi1_48
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フランス戦から敗戦まで。 ソ連との地獄の消耗戦に引き摺り込まれ、限りある資源(鉄や化石燃料、食糧のみならず、人命までも)を戦略的合目的性において最大限に統制し、活用しようとするナチス政府の苦闘が、膨大なデータで述べられます。 超大国アメリカの存在を前に、ドイツは(そして我が国も)生存圏を巡る乾坤一擲の勝負に出ざるを得ず、その結果かかる悲劇を招いたわけで、経済格差は戦争に繋がるひとつの大きな要因であると改めて。 実に読み応えありました。
0255文字
さわでぃ
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ネタバレ列強の一角としてのドイツ再興のためにはアメリカに比肩する東方生存圏が不可欠であり、そのためには急速かつ膨大な再軍備が必要であり、そのためには国家統制による資源シフト(まさに戦闘国家体制)が必要であり、入植地拡大のためには余剰人口の排除やホロコーストが”当然に”必要であると、合理的な論理から破壊的な結論が導かれる。現代から見れば狂気の時代だが、体制や経済的に考えれば当然合理的な人々の営みとして描かれるのが恐ろしい。
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プ
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人口に膾炙している通俗的な”ナチス神話”について経済史の立場から膨大なデータを基に検証・反駁を試みた本。2019年ベスト級に面白かった。狂気のイデオロギーだけで国民に飯を食わせ、兵器を製造し、長期に渡り戦争を継続することは出来ない。その背後にある経済学的な要因を検討することによってはじめて、神話ではなく実像が見えてくるのだろう。
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MUNEKAZ
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後編はいよいよ戦時経済へ。西で英米と覇権を争い、東で「生存圏」確保のためソ連と戦う。そして占領地の労働力を収奪しながら、同時にホロコーストに邁進する。この向こう見ずでちぐはぐな対応の裏に流れる、ヒトラーなりの(狂気の)合理性が経済を通して語られる。読みどころは軍備の奇跡を成し遂げたと言われるシュペーアの虚像を暴いたところか。もちろん有能なのだけれど、上司の威光と自己宣伝でそれを何倍にも膨れ上がらせる人は身の回りにもいるかも。とにかく戦争の非情な計算と、狂信的の人種論の悪魔合体を見せつけられる大著でした。
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