そして手一杯な妹へ自分の尺度に従わせようとする姉がこの上なく、鬱陶しいが、ラストで会心の笑みを浮かべてしまった。能ある鷹は爪を隠すってこの事ね。「捨て子」は修道女の献身が貫かれる。赤ん坊を産み落とした少女は蒸発してしまうが、残された赤ん坊の為に修道女は還俗し、普通の母親となるのだ。こういう人がいたなら人生、捨てたものじゃないと思える。「違いの行列」は『恐ろしきフィルの時代』を彷彿とさせる。軽やかな文章なのに陰々滅滅とする内容なのだ。特に立場が弱いとラベリングされた者達が互いを貶め合う姿は他人事ではないのだ
「隠された光」は一方は寂しく、温かい物語である。生涯、優等生だろうミリアムは両親と共依存関係である。夫、セルジュはそれを疎み、家庭ではない新たな居場所を探す中、愛する人、ジャックに見出される。ミリアムの両親は家庭の幸せを第一に思っているが、それが逆に娘の幸せを遠ざけたのは皮肉である。最後の離婚した後のセルジュの恋人へのメールはある意味、不実かもしれないがもう、孤独ではないという晴れやかな喜びに充ちている。「回復」は麻薬常習者の女性の語りは本当なのか?幻視の地に墜ちた天使は生々しい醜悪を持ちながらも美しい。
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