形式:新書
出版社:岩波書店
その後は1章で突厥と唐、安史の乱以降の藩鎮が独立した勢力となり唐朝が弱体化していく様子を、2章ではその後強い勢力を誇った遊牧民族王朝の契丹の成立、契丹が渤海を滅ぼす様子と唐滅亡後に中原の王朝となった沙陀系の王朝の成立を、3章で短命だった沙陀系の王朝に代わり成立した北宋と契丹、青夏がそれぞれ争い、講和を行い均衡を保った様子が、
4章では契丹による渤海滅亡後にその地に興った女真が金として成立し、契丹と北宋を滅ぼし、北宋は南宋となる様子が、5章はモンゴル帝国が成立、拡大していき最後にはいくつかに分かれたモンゴル帝国が滅びていく様子が描かれていた。学ぶことが多く勉強になりました。契丹や金なんかの話しが多かったかな?中国史において遊牧民族王朝というとても長い期間に渡って影響を及ぼした勢力について非常に丁寧に解説していたと思います。長さもちょうど良いかな?
201頁。クビライ政権は、ユーラシア規模での交易の活況を背景に、ムスリム商人の献策をとりいれ、通商を重視した重商主義とでもいうべき財政・経済政策を展開した。そもそもモンゴルは、チンギス=カンの時代より、中央アジアから西アジアへと版図を広げていく過程で、すでにウイグル人やムスリムの御用商人と緊密な協力関係を結び、「オルトク」と呼ばれる共同出資による会社組織をつくって商業活動を行わせていた。
202頁。モンゴルは広域で通用する通貨として銀を選択した。徴税や貢納などを通じて銀はモンゴル朝廷に集められ、それがさらにオルトク商人などを通じてユーラシア東西で流通した。大元ウルスが江南を統合して陸海交通路がつながった13世紀後半には、「最初の銀の世紀」と呼ばれるほど、銀の使用がかつてない規模で盛んとなった。ただモンゴル時代の銀の流通は各地で活発化した商取引を満たすには不十分な水準にとどまった。そこで、クビライ政権は金銀と兌換ができる「中統元交鈔」と呼ばれる紙幣を発行し、中国での銀不足を補おうとした。
文明化(国家システムや仏教)と部族社会のアイディンティティといふ要素のバランスが、各々の国の盛衰を理解する鍵になつてゐるのが興味深い。
東晋や南宋など秦漢の流れを汲む国家は権威を守る兵馬を養う為にいかに税収を上げるか繰り返されていた。これに対し遊牧民国家は、遊牧民族=兵馬である為、農耕民を取り込みつつ経済基盤を固める事が違い。大モンゴルが南宋を飲み込む事によって、商業による経済拡大が起きた、と言うのも、これまで抱いていた大モンゴルのイメージとはかなり違ったものとなった。江南の日本への影響も大きかったが、北側中国の影響も当然ながら大きかったという事がわかった。 続く後2冊も楽しみである。
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