自分が世界に“適合”する、なんて価値観は潤さんにはなくて(あるのは請け負うことのみ)、そこが私みたいな人間にとっては憧れるポイントだったりするのだけど、その上で彼女が凄いのは、皆を、人間を愛し続けるところである──どれほど嫌われ、どれほど避けられ、どれほど裏切られようと。自分を貫きながら、愛する皆と生きていく──突出したまま、人と足並みを揃えたりせず、かつ皆と仲良くしようとする彼女の人生は、どれだけハードなものか。だけど、そんなハードな人生に挑み続けるのが、哀川潤の哀川潤たる所以なのだろう。
最後に、ノベルスと文庫の違いについて、というか、『りすか』に続いてひたすら文庫への不満点を述べるだけになるけれど⋯⋯。西尾維新文庫という装丁がなくなって、背表紙が銀色ではなく灰色だったり、表紙絵が流用だったり、ノベルスのイラストが収録されてなかったり(当然新規イラストもない)、あとがきがなかったりと、サイズや値段を考慮しなければ、文庫はノベルスの完全下位互換になっている。小説を読む分には何も問題はないものの、戯言シリーズ、人間シリーズとの統一感が一切ないのが何とも寂しい。ファンなので続巻も買うけれども。
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