形式:Kindle版
出版社:河出書房新社
形式:文庫
作者は色々な場面で色々な人物に、『人が生きていく上で不可欠な二つは、食糧と組織』『最悪なのは無秩序だ』『人が互いに敬意を払い、規律を守らない限り、秩序正しく出来るわけがない』と言わせ、飢えや汚穢のどん底でも必死に秩序と人間の尊厳を守ろうとする人々を描く。◆隔離施設で起こった事は、実は現実社会の縮図でもある。これほどの極限状態ではなくても、理性を失わせるような出来事、人間の尊厳を失わせるような悲劇は、よく見れば日常的に起きている。差別、侮辱、脅迫、虐待、略奪、貧困、戦争、、、コロナ禍での出来事にも。
◆訳者あとがきで、『人間が理性の使用法を見失ったとき、たがいに持つべき尊重の念を失ったとき、それはこの世界が実際に味わっている悲劇なのだ』という作者の言葉の引用。原題「見えないことの試み」によって、「見えない現実」を見せる実験。◆訳者が言うように『語りの地の部分と会話の間に「」などの記号がなく、段落も極端に少ない、読みにくいスタイル』だが、不思議と直ぐに慣れる。◆本書は1995年刊。作者はポルトガルの作家で、1998年ノーベル文学賞受賞。感染症絡みの「ペスト」「デカメロン」とならぶ世界的ベストセラー。
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