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占領した者された者: 日米関係の原点を考える

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印度 洋一郎
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敗戦後の連合軍占領統治時代の日本を研究する著者が、その過程で色々な媒体に寄稿した文、講演、関連書への書評などで構成されている。だから、内容には反復が多いのもやむを得ないところだが、戦後の日本人が忘れたがっている占領期(やはり恥辱の時代なのだろう)へのまとまったアプローチとして、今でも貴重な一冊だろう。多くの日本人にとって、敗戦は過酷な暮らしからの解放であり、アメリカ軍はいわば解放軍、その上に君臨するマッカーサーは天皇陛下を実質的に影響下に置く、「青い目の将軍」だった。その事が後に日本人の間に屈折を生む。
印度 洋一郎

敗戦直後から、日本人はマッカーサーに対して、熱烈な希望を寄せていた。筆者によれば、それは阿諛追従というより、「権威を持つ天皇を実質的に支配する実力者」という中世以来の政治構造に慣れていた日本人にとって、それほど違和感のある状況ではなかったからだという。しかし、その解放感は占領が終わり、日本が復興して自信をつけていくに従って、恥辱の記憶となり、アメリカに対する屈折した感情を生む。元々は支配層が専ら持っていた感情だった占領への恥辱を、より広い層が共有するようになった事はなかなか興味深いところ。

02/22 12:06
印度 洋一郎

又、著者は戦後日本社会の様々な(革命ともいえるような)改革については、当時の日本人が自力で行うことは難しく、やはり圧倒的アメリカによる外圧が必要だったという。これは納得。そして、今では(保守派としては)リベラル派として記憶される吉田茂が、実際のところはゴリゴリの保守派であったことを資料から検証していく。著者によれば、吉田は「直面する状況からいかに自らに有利な状況を引き出すかを機敏に察知する商人の態度で、志の高さは感じられない」という。恐らく、戦後日本に必要とされていたのは、そういう割り切った人だったのか

02/22 12:11
0255文字
Toska
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占領史の研究をライフワークとする著者が、様々な場で発表した論文や講演、書評などをまとめたもの。非常に面白い。戦後日本の運命を決定づけた占領政策について、その功績と限界を様々な角度から描き出す。「是々非々」のお手本のような態度。権威主義的な支配に慣れ切った日本人にとって、傲岸不遜で強烈なエゴの持ち主だったマッカーサーは恐ろしく相性の良い指導者であったという皮肉な歴史的めぐり合わせ。元々「もの書き」からスタートした著者だけあって、文章に味があり読みやすい。
Toska

「占領の初期に、日本人は与えられた民主主義に酔って、占領軍権力といそいそとベッドを共にしたのであった。その結合から生まれた子供がいま成長した時、日本人は父親の存在を認めたがらない。だが、子供にとって父親の意義が否定できないように、日本の歴史における占領の意義は否定しようもない」(74頁)…きっついなあ。だが、13歳の軍国少年として敗戦を迎えた著者にとっては、これが偽らざる肌感覚だったのかもしれない。ほぼ同世代の澤地久枝との対談や江藤淳との論争も面白い。

08/13 12:20
Toska

中曽根首相のいわゆる「戦後政治の総決算」に対する危機意識が、本書出版(1986年)の動機であった由。歴史「修正主義」という言葉も出てくる。この三十余年、日本の政治は意外と進展がなく、同じところをぐるぐる回っているだけなのか。ただ、本書でも指摘されている通り、86年当時は経済大国化による多幸感に衝き動かされていたのに対し、現在は「失われた○十年」へのルサンチマンが同じような動きのバックとなっているわけで、状況は今の方がはるかにまずいのでは。

08/13 12:28
0255文字
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