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戦争が巨木を伐った: 太平洋戦争と供木運動・木造船 (236;236) (平凡社選書 236)

感想・レビュー
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てまり
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とんでもなくよく調べてあり、頭が下がる。キャッチーにまとめてしまうと「やってる感のために神社や旧跡や先祖伝来の木を切りました」で終わってしまうが、丁寧に流れを追うと戦況の変化、軍の見通しの甘さ、地域の力関係、とにかく多くのことが見えてくる。賛成派も反対派もどっちも先祖を引き合いに出すという指摘が面白い。当時の日本人にとっては確かに日本の存続自体の未曾有の危機だったわけで、なんかアドレナリン凄そうだなと思いました。
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まさこ
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たいへんな労作(前書きの教え子の卒業論文を引き継いだ経緯が真摯。物事への姿勢は透明な眼でありたい。専門外でも5年程でまとめ上げる優れた研究者)。木造船の技術や統計も。でもやはり、供木献木、当時の様々な立場の人々の息づかいが聞こえてくるところ。写真資料も迫るもの。枝を落とした伐採前の巨木が、切腹前にお清めした武士のよう。子どもの日記も秀逸。あくまでも善意から、先祖伝来の木も出そうという雰囲気をつくる、翼賛的な機運の創出はこのように。「王様は裸だ!」と言える世の中でありたい。木ゼミ、入ってみたかったな。
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Toska
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知られざる木造船建造の歴史に踏み込んだ労作。当局が国民運動として盛り上げようとした供木キャンペーンのみならず、造船所の再編や行政のテコ入れなどテーマに多様性がある。一口に「総力戦体制」と言っても、そう簡単な話ではなかったようだ。木造船を通してこれほど多くのものが見えてくるとは正直意外。供木運動で存在感を発揮する翼賛壮年団(大政翼賛会の下部組織)なんか、恥ずかしながらその存在すら知らなかった。
Toska

著者は本当は畑違いの中世史専門家であるのに、教え子の卒論から木造船のことを知り、その意志を継ぐ形で本書を書き上げたというのが最大のドラマかもしれない。弟子が師の思いを継承するばかりでなく、逆もあり得るのだ。そして、いま自分が調べておかなければ歴史に埋もれてしまう、との強い危機感と使命感。これぞ真の歴史家のあり方と思う。

08/03 11:43
Toska

実際、たかだか数十年前の出来事で、しかも屋敷林や寺社、並木道等のランドスケープを一変させた重大な事件であるのに、供木運動については意外に知られていないことが多いのだという。同じように、記録されぬまま消えゆく「歴史的事実」はまだまだ残されているのだろう。他方、著者の調査を通じて当事者の子孫が改めて関心を持ち、自分たちで調べ始めたとのエピソードに救われる思いがした。

08/03 11:49
0255文字
驢馬山人
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2021年。名著。戦争末期の供木運動と木造船なんて地味すぎるテーマだが、信頼できる資料や先行研究も乏しいなかで、政策、制度から、人間の心のひだまで分け入ってゆく。元来は中世史研究者の方だが、徹底した実証から民俗学的な感性までが統合された見事な近現代史研究だ。人生が深くなるような良い読書経験となった。
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ちさと
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面白かった。隠れていた史実に光当たった。しかし大変な資料調査。
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ムチコ
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第二次大戦中、金属が不足する中で木造船の需要が急増し、各地の屋敷林や並木から巨木を供出する動きがあった。供出の状況を「させる」側「させられる」側の両面から丹念に追い、さらに供出された木材がどの程度木造船として役立ったか、戦後それらの船や使われなかった木材、伐られなかった木がどのような経緯をたどったかまでを、失われていく人々の記憶や資料から丹念にたどる。このような動きがあったことに疎かったのでテーマとしても興味深かったし、「調べる」ということがどういうことかを身体を張って示した書とも言える。
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アメヲトコ
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21年1月刊。1943年、太平洋戦線への物資輸送のために大量に建造された木造船に注目した一冊。村々の屋敷林や並木がいかにして「自主的に」供出されていったか、造船はいかなる場所でどのようになされたのか、造られた後の船はどうなったのかを、戦時中の極秘資料、現地調査、関係者への聞き取りなどを交えて明らかにしています。著者は本来日本中世史が専門ですが、教え子の御手洗文さんの卒論をもとに、彼女の研究を(了解のもとに)引き継いで完成させたとか。関係者も物故し記憶も喪われていくなかで調べ上げた著者の思いに打たれます。
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takao
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ふむ
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しょすたこおびち
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ガダルカナルの後に1943年を含む僅か1年の間で100万本以上も木が伐られた。学生の卒論を指導教官が受け継ぎ5年半も本来の研究を脇に置いて取り組んだ労作。自分は五輪のPVのために都心の木が伐り倒されると聴いても、幕末のドラマを観て外国船に対抗するために木造船を作ると聴いても何とも思わなかった。しかし定見の無い国策は残酷。鋼鉄製の軍艦に木造船が敵うわけないのに、幕藩時代から何百年も守ってきた木を地域を包んだ同調圧力によって根刮ぎ切られていく。あくまで自発的という衣をまとって。誰にも止められない空気を思う。
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T S
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大変な力作。著者のご専門は中世史にもかかわらず、教え子の卒論からここまで大著を上梓したことにやっぱり驚いた。個人的には、栃木県の供出量の多さと日光杉並木が守られたことなど栃木県の記述だ。そして日光杉並木については、2004年に公開された映画「杉に生きる」を基につくられた児童書『日光の杉並木を守った男』でその実態がわかる。著者がもしこの本の存在を知ったらどう論じただろう?とはいえ、『日光の杉並木を守った男』の参考資料がわからないのでなんとも言えないが、とても気にはなっている。
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やいっち
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戦争中の資料がかなり散逸消失した中で、懸命に博捜された労作である。資料も豊富。巨木に限らず日本の森林や木々に関心があり、巨木などに纏わるちょっとした戦争秘話を楽しむつもりが、その内容の充実ぶりにじっくり読み浸ることになった。寺社の貴重な古木や屋敷林の巨樹などが(大政翼賛会などを通じての)実質国の命令でどんどん伐採される中、日光の杉並木や箱根の杉並木が残った秘話は面白かった。ある意味、奇蹟かもしれない。
やいっち

戦争に限らず世論などの同調圧力に弱い日本人の体質(?)を感じると共に、決してそんな人ばかりじゃないことを知り、胸を撫でおろす思いもあった。それにしても、戦争だからと、粗製乱造の木造船を作ることが役に立つなんて、時代錯誤も甚だしい一部の連中の愚かしさ、分かっていても従うしかない民衆の悲しさ情けなさを感じてしまう。

04/15 20:56
やいっち

忘れられつつある戦争時の悲劇。樹木の受難に留まらない。鎮守の木々や先祖代々伝わってきた木々、そして守ってきた人々の受難の歴史。心ある方が歴史の谷間に埋もれがちな秘史を掘り起こし日の目を見せてくれることを期待したい。本書のスタートは著者の講義を受けた学生の卒業論文だったとか。ちなみに著者は、もともとは中世史研究家。一仕事終えた今は本来の仕事に戻っておられるだろうか。労作、ご苦労様でした。

04/15 20:56
0255文字
onepei
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はじめて知ることが多かった 文章も読みやすい
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戦争が巨木を伐った: 太平洋戦争と供木運動・木造船 (236;236) (平凡社選書 236)評価100感想・レビュー13