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医療の外れで(Kindle版)

感想・レビュー
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ぷほは
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セクシャルマイノリティ、性風俗産業、暴力行為、シングルマザー、医療不信、生活保護、依存症、性暴力被害、これら各テーマを具体的な患者との関わりと、著者自身のライフストーリーから時に静かに熱く、時に激しく怜悧に記していく力量が凄まじい。調子が悪い時に読むべきではないかもしれないが、勇気ももらえた。上記各テーマの最後にはコロナによって差別される側になった医療従事者たちの中で、「頑張っているから差別しないで」という言説が容易に「頑張ってない人は差別していい」に反転する可能性を指摘する、その透徹した意志に脱帽する。
ぷほは

だから、このタイトルは本当はミスリードなのだろう。「医療の外れ」だけでは決してない。医療には及ばない領域もある、医療では治癒できない傷もあるかもしれない、医療を自ら遠ざける当事者もいるだろう。それでも著者は、医療の現場で看護師として働き、その肩書きで本書を書いている。開きつつ閉じている、その社会システムの作動と共に本書は私にコミュニケートされた。

07/08 23:29
0255文字
vonnel_g
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医療は身体の健康をメンテナンスするが、ここに取り上げられるような「はみ出し」には対応できない。別の技術が必要なのだけれど、医療と協働できれば絶大な効果を生むことができる。そんなことを考える。 余談だけれど「性差の日本史」展で公娼制度が廃止になった後に売春する女性を自由意志でやっている、ふしだらと決めつけたという話を知った。性風俗産業に従事する男女にはいまだにこういうレッテルが貼られているということを痛感する。あの展覧会日本全国巡回するべきだな。
0255文字
saiikitogohu
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「もし私がその時に、「彼氏」と言う表現を使うことに何の違和感も持っていなければ、そしてそのまま春樹に「彼氏」と言っていたが、それだけで彼にとって私は「同性愛者であることを話さない方が良い、距離をおいた方が良い相手」になってしまっていたのかもと思うとなんともやるせない気持ちになります」27「恋人の入院の書類書くときの私の関係性って「友人」で大丈夫?…パートナーの手術の同意書へのサインを許可されなかった…問診票の性別男が男女しかなくて迷う…当たり前に行っている…異性愛を前提とした切り分け…医療からの排除」29
saiikitogohu

「やめたくてもやめられない状態…依存症に置いて必要なのは非難ではなく回復のための支援です。…生活保護を受けている人が生活に必要のないものを買わずにいられない状況には、私のような倒錯があるのではないかと感じました。普通に仕事をして普通に生活をする中では当たり前にできていたことが、何一つできない、どうしてできないのかを説明することすらできない」136「依存症…行動を直ちに止めることができない場合には、その行動に伴う害や危険を出来る限り少なくすることを目的としたハーマリダクションが基本です」158

02/20 10:57
saiikitogohu

「被害を受けたことを1日たりとも忘れた事はなく、思い出すたび、あの時と同じ身体を今自分が持っていることが、捨てられないことがたまらなく気持ち悪くて、こんな心体を引きずって生きるなんて無理だと、死んだほうがよっぽどマシだと絶望感でいっぱいになります」178

02/20 10:59
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0255文字
OK
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「自分が引き受けたネガティブな感情を、属性に帰結させないようにしようと背筋を伸ばす日々でもあります」「私を含め、あらゆる人の中に差別心は存在するでしょう。大切なのは『差別心や軽蔑心を持たないことではなく、それを当事者に投げつけないこと、当事者から何かを奪わないこと』です。思考や思想の自由と、当事者を傷つけない配慮は両立するはずです」
OK

終始一貫して『弱い立場に置かれた人々を排除しない医療』を目指そうとする強い信念を感じた。セクシャルマイノリティの人、性風俗産業で働く人、依存症患者、性暴力被害者など、様々な属性の人たちと関わり、時には本人が当事者となり、沢山苦しみながら生きてきた筆者だからこそ書けた作品。医療以外の分野にも活かせる考え方で、勉強になる部分は多々あった。それにしても、筆者の人生経験は豊富で壮絶。苦労は人を強くするということを強く感じさせてくれました。

02/01 23:32
0255文字
玻璃
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私にとって看護師を含む医療従事者は「強者」で、たとえ暴言だと思って反論しても「医学的には~」と頭から押さえつけられ、無力感に押しひしがれてしまうのが常だった。だからずっと医療不信だった。著者のように、自身さまざまな疾患に悩まされている医療従事者もいるのだと、今更ながらに驚いている。看護師であると同時に、偏見や差別にさらされるマイノリティでもある著者のことばは弱々しく優しい。ここに挙げられた人たちについてあれこれ言うことはできないし言うつもりもない。事実としてただ受け止めたいと思う。
0255文字
トニー
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現役の看護師さんが初めて書いたということで、興味本位で読んでみた本。LGBTの方や風俗で働く方などの社会的弱者が、本来平等であるべき医療の現場でも心ない差別を受けがちであることを、当事者に寄り添う目線で書かれている。参考文献も丁寧に挙げられており、忙しい業務と並行してこれだけの本を書いた著者には敬服する。医療に携わる方以外にも広く読んで欲しい一冊だと感じた。
0255文字
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