形式:新書
出版社:中央公論新社
「すなわち、活動内容やメンバーを秘匿した秘密結社的な集団が、舶来のイデオロギーを用いて理論武装し、中国に介入する意思を持つ海外勢力の支援を受けて、ひそかに庶民の人心を収攬していく。こうした組織が大衆を動員して武装蜂起し、国家を分裂させて群雄割拠のなかで台頭すれば、政権がひっくり返る。」
「これぞ中国の秘密結社が、現体制を破壊して天下を取るための基本公式である。(……)中国共産党が毎度毎度、「海外勢力と結託」「国家統一を破壊」と同じロジックばかりを使って自国の「邪教」や政治結社を攻撃するのは、実は「私たちはそういうことだけは絶対にされたくありません」という彼らの心の声の反映なのである。」
著者は様々な例をあげながら、紹介しています。会党のところでは 「反清復明」というのが出てきましたが、金庸の第一作『書剣恩仇録』には、「滅満興漢」を掲げる 秘密結社が登場するのを思い出しました。ただ、現実の方の「反清復明」は、<国家転覆を考えるような危ない組織の 構成員だというイメージを他者に与えてびびらせることを目的>だったそうです。「はじめに」で <秘密結社を知らないで、どうやって現代中国がわかるのか?>と書いているのですが、「おわりに」まで読むと その理由がきちんと分かるのも見事でした。
洪門などの伝統的な互助結社が空洞化しているのに対し、宗教結社の方は今なおかなりの存在感を持ち、当局からの警戒も大きいとのこと。その歴史的・社会的背景が丁寧に解説されていて勉強になった。有象無象の「キリストの生まれ変わり」は笑ってしまうほどだが、かつては太平天国や義和団、白蓮教などを輩出した国だから…こうした宗教的な世直し運動の欠如に日本の独自性を見た安丸良夫の問題提起が思い出される。
Kazuhiro Okamoto様 もしよろしければ読んでみてください。この作者様は他の本もおすすめですよ!オタクとしての好奇心と真摯な問題意識が両立する不思議な読み味の本ばかりです。
羊山羊さま、楽しみです!
相互扶助とその為の組織は中国社会の必然なのです。③著者は更にその様な結社について中国共産党が警戒を怠らず、時に徹底的に弾圧を加えるのは、共産党自体がその様な結社から出発したことに理由かあるとします。即ち、自国の体制を如何に崩壊に追い込んで行くかを彼らは熟知していたが故に天下を取ったのであり、従って自分たちと同じセオリーで天下を狙う存在が出てくるのを最も恐れているのだと。中国の政権交代は常に殺すか殺されるかの武力闘争であり、日本の幕末にあった様な新旧による政権委譲はあり得ないと思えて来ます。(4/5)
④以上から読み取れるのは、中国社会は共産党も含め私的領域が互いにしのぎを削る状況にあり、日本や欧米の様に公的領域が大きな広がりを持たずまたその様な伝統が無いと言うことではないでしょうか。(日中の前近代社会の比較は岡本隆司氏の著作を参照)。体制側は絶えず体制を覆す組織に脅えそれらを取締り、またその状況を変えるのも武力しかあり得ない。選挙と言う合法的な権力委譲の制度を持つ西側社会とは根本的に相容れない政治的・社会的状況がそこにはあるように思います。(5/5)
>中二病的アイデアの源泉 うん、確かに…。
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