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水と原生林のはざまで (岩波文庫 青 812-3)

感想・レビュー
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左手爆弾
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シュバイツァーといえば、密林の聖者と呼ばれ、世界偉人伝的な人物として知られる。しかし、本書は文化人類学者よろしくランバレネの現地住民を観察しているという感じが強い。黒人のことをあからさまに差別しているわけではなく、「妻を買う」ような彼らの習慣にも理解を示し(127頁)、黒人も白人も関係なく兄弟であると述べる(97頁)。その一方で、「わたしはお前の兄弟である。しかしお前の兄である」(129頁)という言葉に象徴される序列は捨てがたかったのだろう。ここはポストコロニアルな視点で読み解くべきだろう。
左手爆弾

その他、材木商の話や黒人社会において労働力を得る話、象が食料を食べてしまうことなど、興味深いアフリカの話題が語られる。最も興味深かったのは、黒人は決して怠惰ではないが、あまり働かないという話だ。要するに、彼らは食べるのに必要な金が手に入ると、それ以上働こうとしない。そこで白人たちは税金をとったり、酒やタバコや化粧品などを持ち込むことにより、金を必需品にして黒人を労働者にさせようとする。資本主義の成立に立ち会っているような話である。

12/02 22:04
左手爆弾

また、アフリカにいて自分を正しく維持するためには、精神的に「真面目な本」を読むなど、教養が大切であるという話は含蓄が深い。アフリカの生活は「散文のよう」であるという言い回しはなるほどと思う。白人商人がベーメの『アウローラ』を読んでいるなど、アフリカだからこそ向き合える本もあるのだろう。

12/02 22:09
0255文字
やす
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第一次世界大戦の頃、アフリカで現地民の治療にあたった医師の記録。当時の思想と現実といろんなことが分かる。過酷な環境で治療にあたった医師の思いに心打たれるとともに、当時のアフリカの生活状況がよくわかる。あと、ヨーロッパ人の原住民に対するナチュラルな差別も強く感じられた。
0255文字
横浜中華街2024
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アルベルト・シュバイツァーはドイツ出身の哲学者、神学者、医者で、アフリカのガボンでの医療にその生涯を捧げノーベル平和賞を受賞した。この本は1921年に出版されたもので、第一次世界大戦勃発前後の4年半にわたるガボンでの活動記録である。意外なことに本書では現地での医療活動の詳細よりむしろ、ガボンの黒人社会の有様や彼らの生活、またそこでの白人たちの木材ビジネス、キリスト教伝道の様子などの方に多くのページを割いている。今から100年ほど前の西アフリカの奥地の様子が生き生きと伝わってくる。ぜひ新訳を出版して欲しい。
0255文字
紡木しほ
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未開の「隣人」を救うため猛烈に努力して医師免許を取得しアフリカに乗り込んだ白人の奮闘記。今から100年ほど前の話。信念パワーで人種や価値観の壁をものともせずに突き進みまくっててすごい。差別撤廃が声高々に叫ばれる現代よりもよほど真っ直ぐに人と向き合えているように感じた。精神性の良し悪しなどは、彼らが繋がりあっている事実のもとでは大した問題ではない。 話の本筋とは全然関係ないけどカバはガチヤバいらしい。原生林ならではの体験記も多く盛り込まれてて、冒険書としてもとっても楽しかった!
0255文字
ひでお
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小さいころに伝記で読んだような気がするし、その後も読んだ記憶がありますが、今読み返してみると、約100年前のアフリカの医療の状況が克明に記録されていることに驚かされます。現代の感覚からすると、キリスト教的人道主義に、白人とそれ以外の格差を認める感覚に違和感を覚えますが、時代が違うのでしょう。また、シュヴァイツァー自身は植民地政策が正当なものだと思っていたようなので、そのあたりも時代を感じさせます。しかし、私財をなげうって、アフリカの医療に貢献した事実は、感銘を受けずにはいられません。
0255文字
Yuki Snowy
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 高校生の頃に一度読んだものを再読。昔と違って本の中に出てくる病気や動物,土地など,ネットで確認しながら読めたので理解しやすかった。  1行1行に重みがあり,迫力があり,感じ入るところがある。そんな本だった。何度読み返しても良い本だ。
0255文字
Greatzebra
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中学生くらいの時から何度となく読んでいる本。最近ドイツ語でも読んでみた。また違った印象になるものだ。
0255文字
えぬざき
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著者シュヴァイツァー自身のアフリカでの医療活動を紹介し、活動の資金繰りの一助とすべく記された本。 物資も時間もままならぬ僻地で、病苦に喘ぐ現地人を治療する慌ただしい日々や人々への洞察、伝道活動の状況などを描く。 彼の「兄」たる白人が「弟」たる黒人を教導すべきという考え方は、現代では受け入れられないかもしれない。が、その心は、アフリカに火酒や病気をもちこんだヨーロッパ人としての責務の痛感や、医療の恩恵を受けた先駆者として人々を救わんという慈愛に端を発している。彼が惻隠の心で数多の命を救ったことは確かである。
0255文字
くり坊
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カバが水面を割って現れて、それを契機に「生命への畏敬」というキーワードを思い付いたというエピソードは『わが生活と思想より』という1冊に記されていると知らず...ずっと、この本の中に河を泳ぐカバの記述を探していたのだが...そもそもの勘違いでした。この本の最初のほうに白黒の写真があり、たしかにシュバイツァー博士の生活していた場所の周囲には大きな河が流れており、周囲は原生林に囲まれているような辺境の地でした。何故に、この地へ?彼を突き動かしたのはキリスト教の信仰なのでしょうか?謎は深まるばかりです。
0255文字
やいっち
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原著は1920年に書かれ、1921年に出版。つまり、奇しくも100年前の本。「アフガンで銃撃、中村哲医師が死亡」というニュースは今も鮮烈である。シュヴァイツェルは1913年37歳でフランス領アフリカへ。大学では神学と哲学を学んだ。音楽一家だったからか、さらにオルガンを学んだ。30歳の時、人間への奉仕に生涯を捧げるとして、医学を学びアフリカへ。
やいっち

さすがに暗黒大陸と呼ばれた時代とは様相を変えていたとはいえ、赤道直下のアフリカでの医療活動は過酷を極めた。飢饉や赤痢の流行。物資の慢性的な欠乏(医療物資に限らず、物資がなかなか届かない)。習性の違う現地の黒人との軋轢。労働者を現地で雇うも、管理人がいないと働かない。ゲーテへの傾倒と深い理解や研究やキリスト教の精神。1953年ノーベル平和賞を受賞した。今では忘れられた存在なのか。吾輩が子供の頃はアインシュタイン並の英雄だったが。

01/05 21:44
0255文字
lily
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100年前の赤道アフリカでの生き様が映像をみているかのように辿ることができる貴重な記録。負の側面が目立つが。もっと精神生活に歩み寄って根本原因を提示して欲しかった。現状は今もたいして変化はない気がする。土人にとって自然が全てで人間は無であるという真理は時間を選ばない。
0255文字
R10
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30歳に達してから医学を修めて赤道アフリカに行くなんて、考えられないよ。あとがきで知ったが、著者のシュヴァイツェルは1952年にノーベル平和賞を受賞していたらしい。
0255文字
きゃんたか
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「わたしはお前の兄弟である。しかしお前の兄である」といった白人優位的言説からシュヴァイツァーを帝国主義のシンボルとみなす向きもあるが、懐疑の念はこの書において晴れるに違いない。食人種の存在、蓄えた財産を呑み尽くす火酒の脅威、生活のための一夫多妻、悪魔の恐怖に取り憑かれる偶像崇拝の不幸、自由で無秩序な原住民の労働観念、詐欺や盗難の横行、恐ろしい病気の数々。これらの悪の必然を認める著書の眼差しは慈愛と厳しさに満ちている。ヨーロッパの大戦と負の歴史を憂いつつ、現代文明に毒されないアフリカの善性に救いの光を見た。
きゃんたか

「彼らの本質には、善なるものの観念は熟考してわかるものであるとのおぼろな予感がある。彼らはイエスの宗教の崇高な道徳的概念を知るや、それまで彼らのうちに沈黙していたあるものが、ただちに言語に現れ、それまで束縛されていたあるものが解放されるのである。」

10/08 12:49
きゃんたか

「ここにはヨーロッパにある大部分の疾病が力をふるい、白人がもたらした多くのいとわしい疾患がいたるところでヨーロッパ以上の不幸を生んでいる。自然児もわれわれ同様痛みを感じるのだ。なぜならば、人間であるということは、苦痛という恐ろしい主人の力に服従していることなのである。」

10/08 12:52
0255文字
阿呆った(旧・ことうら)
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学生時代に読んだものを再読。1913-1917年の間、西アフリカのガボン•ランバレネへ第一回目に訪れた時の、現地人を相手に医師として医療に従事した記録。フランスの牧師の息子として生まれた彼には、深く兄弟愛の精神が流れている。『不安と肉体の苦痛とがどんなものであるかを、体験した者は…人力のおよぶかぎりこれを防ぎ、自分が救われたように他人にも救いをもたらそうと助力しなければならない』という文章に、彼の志の高さが伺える。シュヴァイツァーは後に、ノーベル平和賞を受賞している。一生のうち、一度は読みたい本だ。
0255文字
mikuriya
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知人の医師の紹介で。シュバイツァーの伝記は幼少の頃に読んだが、二十年たった今著作を読むのは不思議な気分。「苦痛と不安とを知らされた者は、自分が救われたように他人にも救いをもたらそうと助力しなければならない。」
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壱萬参仟縁
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1913年頃の話。32頁はアフリカの自然描写が秀逸。44頁には熱帯特有の病人を診察する様子。睡眠病とは、頭痛で憂鬱症→自殺願望という恐ろしい病(85頁)。肺炎を併発して死亡(87頁)。「黒人は怠惰なのではなくて自由人なのである」(114頁)。自由ならいいと思える。不自由で病になるケースもあるので。アフリカで困難なのは、新鮮な食糧を準備し、原生林の道路を維持することの二つ(120頁)。黒人通有の消費癖で貧乏、困窮するとも(122頁)。管理は必要か。ヨーロッパからの輸入品で伝統の手桶は駆逐された(123頁)。
壱萬参仟縁

どんな人間であれ、責任を負おうとせず、気分のままに働こうとする(131頁)のはよろしくない。アフリカの患者にとってのバナナは、象の襲来で駆逐される(137頁)。WWⅠで戦火の中で。厳しい現実。1914年のクリスマス。著者は、学問と芸術を棄て、原生林に飛び込み、悟ったことは、人間とは苦痛という恐ろしい主人の力に服従しているということ(165頁)。植民地帝国主義の意味は何か?

12/16 10:08
壱萬参仟縁

「自分が救われたように他人にも救いをもたらそうと助力しなければならない」(168頁)。

12/16 10:11
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