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COVID-19の倫理学―パンデミック以後の公衆衛生 (京都大学「立ち止まって、考える」連続講義シリーズ01)

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きぬりん
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新型コロナ真盛りの2020年7月にYouTubeライヴ配信された連続講義の書籍化。個人の自由の侵害の正当化問題を公衆衛生倫理の重要問題として位置付けたうえで、今時のパンデミックに伴う倫理的問題として、感染(疑い)者の隔離・停留、人工呼吸器の配分、外出規制の法的強制の問題を議論し、今後の課題として予防の倫理学の必要性を主張(補論として一年後の落穂拾い的な議論も)。非常に読みやすく、トリアージの議論の必要性にまで言及するのは大変勇気ある発言だが、隔離・停留の正当化問題を他者危害原則の枠組で捉える点に違和感も。
きぬりん

被害者の自己責任について、玉手氏の前向き責任と後ろ向き責任の区別に言及しつつも、後ろ向き責任の否定には必ずしも与しない。児玉氏は今後の検討課題として、①「悪い事態が発生した場合に[…]どこまでが被害者当人の責任で、どこまでが政府や社会などの責任なのか」、②「仮に個人に責任があると考えられる場合でも、では実際に非難すべきなのか[感染者への非難は感染の事実を隠蔽し、感染状況を悪化させるおそれも]」、③「仮に本人が責任があったとしても助けるべき場合というのがあるのではないか」(pp162-3)を挙げている。

05/05 02:15
きぬりん

自己責任の問題を難しくするのは、本書でも的確に指摘されているとおり(pp153-4)、自己責任概念には非難可能性(blameworthiness)と賠償責任(liability)の両面が渾然と含まれるところだろう。児玉氏の見解は、1)感染者の非難可能性は認められる一方で、実際の感染者への非難は抑制されるべき、2)賠償責任は問われるべきでない、といったあたりに落ち着きそうな気配だが、これは後ろ向き責任の存在を一応は認めたうえで帰結主義的観点からその責任を棄却しており、玉手氏よりも理論的に整合的かもしれない。

05/05 02:20
0255文字
Iwata Kentaro
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おすすめされて読んだ本。感染症(あるいは医療)と倫理は切っても切れない関係にあり、昔から沢山の議論がなされてきた。今回講義で論じられたものも古典的かつ基本的な論点が多く、それは学生教育という意味でもとても大事な営為だったと思う。好著。ただ素朴な事実誤認があったりしたのは残念(大腸菌とか)。倫理学は「価値」の学問ともいえるだろう。価値とファクトは別物だが、ファクトを無視、あるいは誤認した場合に「価値」は正しく論じることは出来ない。やはりこういう講義は感染症のプロも参加したほうが良いと思う。
0255文字
P子
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ネタバレ2020年 まさにコロナ禍の最中に行われた京大の5回のオンライン講義と1年後の補講の6章立てとなっている。書籍には入っていないが2年後の講義もweb上で見ることができる。 非常に身近な問題あるため、児玉先生の分かりやすい講義と合間って、考えさせられる内容となっている。 おすすめの書籍。 章題は倫理学の基本論→クルーズ船と隔離→資源分配→外出規制→今後→補講 と時系列に沿った展開になっているのもよい。当時の混乱具合を思い出す。そして今回もなあなあで終わっている点が日本政府らしく、振り返りは必要だろう。
0255文字
Schuhschnabel
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ネタバレ著者が編者の一人に入っている『入門・医療倫理Ⅲ:公衆衛生倫理』の実践編という位置づけなのかと思って読んだら、まさにそのような感じだった。感染者もしくは感染が疑われる人(今回の場合は濃厚接触者)の隔離の問題、災害時における医療資源の配分の問題、強制・罰則なき外出規制と「自粛警察」の問題、感染症をはじめとする様々な予防に対して個人や政府はどのような責任があるのか・ないのかという問題について議論されている。さすがに京大の講義だけあって、サクラを疑うほど質問のレベルが高い。
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