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建礼門院という悲劇 (角川選書 445)

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Toska
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建礼門院徳子という歴史上の人物が何を語ったのかではなく、物語が彼女に何を語らせたのかを探る。いかにも文学の研究者らしいアプローチ。中世においては、事実を肉付けして物語ができるとは限らず、逆に物語のパターンが先行し、そこへ事実(実在の人物や事件)を落とし込んでいく場合が多い。建礼門院の他、卒塔婆小町や和泉式部などの例を挙げてこれを証明していく著者の鮮やかな手腕。同時に、女性の「罪業」を強調する中世仏教的な世界観の残酷さも感じた。
Toska

著者自身「歴史を語る物語というものの面白さと残酷さ」(220頁)を充分に理解し、実在の建礼門院が味わった運命の過酷さを思いやっている。我々は物語の論理(=後代の人々の都合や興味)を無批判に受け入れてしまっているのではないか?という「あとがき」の問いかけは重い。所詮はフィクションと割り切ることもできようが、生きた人間の歴史が基になっている以上、どうしてもそこで立ち止まらないわけにはいかない。

11/30 21:05
0255文字
(ま)
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京都 大原 寂光院♪
0255文字
うしうし
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市民図書館本を借読み。『平家物語』中に描かれる健礼門院説話をテーマに「落魄した女性を神聖化する心性の底」(p189)にある複雑な人間の心のメカニズムを追及する。国文学者の著作を真面目に読んだのは初めてであるが、大変興味深かった。
0255文字
wang
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かつて最高位の女性として多くにかしずかれ欲するところ全てかなえられた建礼門院徳子。源氏の世に成りただ一人身よりもなく落ちぶれた後。人々がどのように評したのか。彼女に仮託して何を語ろうとしたのかを探求する。日本では王朝革命がなかったので前代の王家の人々が打ち捨てられることがなかったというが、天皇の母が落ちぶれ貧窮し好奇の目にさらされながら生きながらえたというのは悲惨な歴史だ。
0255文字
アントンB
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平家物語の諸本を比較しながら、建礼門院がいかなる悲劇の主人公として扱われているかを考察。生きながらに六道を体験した貴人として、光明皇后・小野小町・和泉式部などの融合として描かれている、とのこと。中でも畜生道として、後白河・義経のみならず宗盛も取り沙汰されていることは新知見。
0255文字
たらら
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平清盛の娘、高倉天皇の女御にして、壇ノ浦に入水した安徳天皇の母、中宮徳子こと建礼門院。平家滅亡後も生き長らえ、平家物語の最後に生きながらすべての地獄・六道を見てしまったと語るこの女性こそがこの長い長い物語をくくる主人公だったのか! と興奮しながら読了。小町伝説との関係、近親相姦をほのめかす「畜生道」の真意、禽獣から聖女への転換をさぐる後半は圧巻。うーん、これは平家物語を読み通さないと。
0255文字
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