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透明だった最後の日々へ (星海社FICTIONS)

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UPMR
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表紙絵にだいぶ引きずられ、浅野いにお作品っぽさを感じながら読んだ。詩人の筆なだけあって、ひとつひとつの描写がなめらかで美しい比喩や鮮やかでナイーブなイメージに満ちている。漠然とした孤独を世界に対して抱きながら無意味な日常を漫然と送る不安定な感覚は、それなりの自意識を抱えている人間にはやはり刺さると思う。そういうのをちょっと冷めた目で見てしまう自分もいるけど。とはいえこういう頽廃的な雰囲気は決して嫌いではないので面白くは読めた。特にラストの、物語の崩壊によって剥き出しになる主人公の空虚さは印象に残る。
0255文字
九澄屋
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浅野いにおの表紙に一本釣りされて購入。発売以前に知り、発売まで楽しみにしていた小説は久しぶりかもしれない。著者については詳しくないが、詩的描写のマシンガンに撃ち抜かれライブ会場くらいHoooo!!とかYeaaaaaaah!!!!とか声が出そうになった。コレは新感覚。著者の詩集も読んでいくつもり。装丁はもちろん本の形状やスピンにも気を遣っていて、他の小説とは一線を画している感じがキャッチーだと思う。退廃的な内容だから、普段から斜に構えまくっている中高生や大学生に読んでほしい。酔え。
0255文字
よっち
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震災の記憶に囚われる学生詩人のリョウ。そんな彼のもとに集うそれぞれの孤独を抱えた少年少女たちのやがて訪れる別れの予感を胸に、生きることの絶望を分かち合う青春小説。リョウを意識するエキセントリックで純粋な心を持ったミズハ、彼女を気にかけながら小説家を志す退廃的な美青年ナツト。どこか歪んでいてもかけがえのない関係で。一緒にいてもきちんと向き合えていなくて、相手のために何かしようとしても空回りする不器用な関係にはどこか危うさがありましたが、いずれ不可避だった空中分解の先に残った結末が鮮烈な印象を残す物語でした。
0255文字
KATSUOBUSHIMUSHI
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震災と結びついた過去の物語を存在の根拠とし、言葉にしてはいけないほど繊細な世界観を生きる主人公リョウがミズハとの関係の中で傷つきながら生きていく物語。ある種の人間にとってアイデンティティはあまりに儚く、世界観は他人の言葉に対してあまりにもろいことを思い知らされる。 「あの夏僕は天使を見た」のあとがきで焦茶が、自分は齢相応に大人になれていないがその過程も美しく思うようになった、と書いているが、まさにその美しさをこの本は体現していると思う。そして海のイメージが僕には共感できすぎてドキッとしてしまった。
0255文字
椎名
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ネタバレ強烈な愛憎と信仰を、生活と暮らしのために手放したナツト。変わろうともがきながらも、子供のようなままでしかいられないミズハ。二人との関係性に現実や今が入り込み、少しずつひび割れていく様子はとてもリアルだ。リョウをリョウ足らしめる、核となっている、震災と初恋の記憶。孤独を、傷つけられるものを求めること。空虚の中にたったひとつ残る自分自身。美しいラストだった。
0255文字
iyarasi_guti
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ネタバレひたすら空虚と向き合っているような作品だった。登場人物みんな心にぽっかり穴が空いていてその埋め合わせをする気があるのかないのかわからないまま物語はラストの海浜公園へと行く。海で主人公とかつての唯さんは会話を交わす。けど彼女が話しているのはミズハが作った架空のリョウであって今の彼ではない。水面を漂う水草が絡まって、途中で解けてバラバラになるのを見ているような小説だった。
0255文字
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