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帰艦セズ (文春文庫 よ 1-58)

感想・レビュー
25

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ぜぶら
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先日、能を観に行ったとき、近くの席に座っておられたご婦人は御年91歳であると言っておられた。室町時代から続く能の演目を観ながら、それくらいの年齢の方だと、今の「戦後」という時代をどのように感じているのだろう…とふと思う。吉村氏の作品は、「戦後」の作家にありがちな「お国の為に殉じた若者たち」の涙頂戴ものではないし、かといって声高に「反戦」を訴えるわけでもない。戦争という時代の中で、一人の人間が死んでいった。それを淡々と書く。『銀杏のある寺』『飛行機雲』『帰還セズ』どれも読ませるが、やはり表題作が良かった。
ぜぶら

個人的に一番ぞっとしたのが、『白足袋』。自分がこの会長の主治医だったとした、ふざけるなと言ってしまうだろう…この小説は極端な例だとしても、現在の医療によって延ばされた「寿命」は概ね「本人」以外の意志によることが未だに多いのが、日本の医療界である。最後まで健康でいたいものだ。それにしても、「あれ」としか言われなかった女の子が気の毒でたまらない。彼女の主治医だったら…と思うと、ため息が漏れてしまう…

11/19 21:48
ぜぶら

現在も行政に見捨てられたままの能登のひたすら寒さを感じる物語である『霰ふる』。江戸期に、海運業で栄えた日本の各港は、明治、大正と寂れていく土地に張り付く様にして暮らしてきた人達。この物語を読むと、その土地を去ることなく住みたいと思う気持ちもわかる気がしてしまう。

11/19 21:55
0255文字
光雲
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どの短編も深い、重い。「鋏」→無期刑の片桐の身元引受人となった篤志家が、片桐の身内に身元引受人を頼むだけに利用されていただけということに気づく結末の後味の悪さ。「霰ふる」→岩海苔採り中荒海の中事故に遭った女たち、死者が多い中火葬の順番を待つ陰鬱な雰囲気漂う話。
0255文字
kinkin
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タイトルにもなっている「帰艦セズ」は、先日読んだ『逃亡』の後日談という形式になっている。この一編が読みたくて図書館で借りた。戦争中に軍隊から逃亡するということは大罪であったという。逃亡に成功した男は北海道で暮らし、時の流れが進んだ。男は変死した元海軍兵士の足跡をたどり死の真実にたどり着くことになる。いつもながら吉村昭氏の語り口は静かながら様々なことがきちんと伝わってくる。この本が出版されてから30年以上経過し、戦争について語ることのできる人はほとんどいないと思う。歴史の1ページとして覚えておきたい。
0255文字
あこ
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夏は戦争に関する本を読みます。こちらは全編戦争に関するものではなく、一通り読んで感じたのは昔のひとは余計な言葉を話さないな、という印象。あと、吉村先生の言葉を紙に残すという責任感をとても感じた。このような葛藤のもとに作品を生み出しているのか…なんてしんどいのだ。現代のSNSとは対極。発信するなら、自分の言葉がどこに出しても恥ずかしくない、自分の言葉に責任を持つ、受け取る人がどう取るかの想像力を持つ、吉村先生の爪の垢を煎じて飲ませたい。
ケンイチミズバ

120%賛成します。

08/15 10:55
あこ

ケンイチミズバさん ありがとうございます!120%は嬉しいです。

08/15 14:37
0255文字
mari
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7/10点
0255文字
hon
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吉村さんの何がすごいって、歴史の片隅で埋もれそうな小ネタを引っ張りあげて小説に仕立てちゃうところなんだろうな。読友さん羨まし本。7篇の短篇集だ。全体的に、え、そこで終わっちゃう?ってところで終わる話が多く、その後の妄想を掻き立てられる。あとどれもタイトルが微妙に内容と合ってないような気がして、そこでも脳みそ使わされる。表題作は「逃亡」の主人公の後日談的な別の話で、戦時中に乗艦に戻らなかった男の真相を追う。他にも太平洋戦争開戦直前の民間機の墜落事故や、能登の海苔獲り女性集団遭難事故など、さすがのニッチさだ。
hon

ともさん。吉村さんには魔力があるよね。どんどん読みたい本出てくるよ。赤い人、ともさんはどうかなー(笑)。レビュー楽しみにしてます♪

04/23 10:11
hon

え、嘘。このはさん初めて?このはさんからは結構もらってるイメージあるのだが。海苔獲りってだけで渋いのに、スポット当たってるのはそれで既に死んじゃって、火葬の順番待ちをしてる遺族って設定がすごいよ。何でそこを書こうと思ったんだろうね。

04/23 10:16
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0255文字
シンチャイナ
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7編の短編小説、【帰還せず】【飛行機雲】が佳作。
0255文字
みゆき・K
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短編集はすぐに忘れるからあまり好きではないけれど、気付かずに手に取ってしまった。どの作品もリアリティ満載で、さながらノンフィクション。過去と向き合うこと、真実を知ることによる残酷さ。この世の不条理と人生の空虚感が描かれる。一見穏やかに見える人々の心の中に、冬の日本海のような荒々しさを湛えているのが見えた。感情を抑えた静謐な筆致が、深い悲哀と苦悩を浮かび上がらせている。吉村氏の本領発揮と言える作品集。
0255文字
ぼっせぃー
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「銀杏のある寺」は名短編「総員起シ」の時代が下った続編、「帰艦セズ」は『逃亡』の主人公が関わるスピンオフの形式で、そこに感じるのははっきりとした、時が朽ちさせてしまうものの残酷さだ。「総員起シ」で海中から引き揚げられ人々の前に蘇った乗組員の一人が、再び誰も知らない存在へ還っていく様や、『逃亡』で戦時の闇から浮上した男が自分と似た境遇(に見える)男の死を追い、そこで悲惨な事実を向き合う様など、我々の生きた事実の詳細がただただ消え去る様子に半ば呆然とすらしてしまう。筆致にもペーソスの色が濃いように感じられた。
0255文字
たつや
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「逃亡」という長篇のモデルとなった方から、こんな話も有りますと提供されたエピソードを表題作の「帰還セズ」という中篇に昇華させたそうだ。通常、提供されたエピソードに作品に、出来るものは皆無だという話しは面白く、今回は稀だそうだ。他の短編も戦争にまつわるもので、もはや、読んでる自分も頭の中は戦時中だ。
0255文字
mike
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ネタバレ暗く死の臭いが漂う短編集。表題作は「逃亡」の続編。海軍を逃亡し生き延びた橋爪。彼が、山中で変死した海軍機関兵の男の死の真相を追う話である。「霰ふる」は岩海苔取りの女達を襲った事故が描かれる。吉村さんの書く海はいつも暴力的で生々しい。激しく波打ち、黒く深く、人間なんてあっと言う間に飲み込んでは海中へ引き摺り込む。今回もその恐怖に震えた。
hon

読んだー。逃亡先に読んで良かったよ。ありがとう。開戦前に機密文書を持つ男が乗った民間機が墜落する「飛行機雲」も「大本営が震えた日」で深掘りされてるみたいなので、そっちも読んでみるよ。

04/23 10:08
mike

掘り下げようとするとキリがないくらい作品が多すぎて大変だ💦honさんのレビューで読んだことにする。待ってるよ~

04/23 17:53
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0255文字
青乃108号
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吉村昭の入魂の短編集。それぞれに印象深い短編が集められているが、中でも表題作の「帰艦セズ」が印象深い。「逃亡」で軍から逃亡し生き長らえた橋爪が、偶然にも自分と同じ様に、軍艦から逃亡し行方知れずとなった成瀬の存在を知る。調査した結果、成瀬は休暇時間に艦から降り、宿で一夜を過ごし1度艦に戻ったのだが、携帯して行ったはずの弁当箱が見当たらず、弁当箱1個と言えど軍の支給品を紛失する事は重罪にあたり、再度下艦許可を得て方々探すも見つからず、厳罰を恐れた成瀬は出航時間に戻らず逃亡、山中でやがて餓死する。哀しすぎる。
0255文字
ぱふぱふ
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7作入った短編集。表題作「帰還セズ」には先行する作品があって,『逃亡』とのこと。こちらも読んでおけばよかったなぁ。そうすればより一層話を理解できたかもしれない。「帰還セズ」は戦時中に北海道の山中で亡くなったある機関兵の話だ。なぜ彼は任務から離れてそんなところで亡くなっていたのか。それには悲しい顛末があって…。吉村昭さんの作品はどれも緻密な調査のもとに書かれていて,文章もわかりやすい。私は戦争ものよりも歴史もののほうが好みかな。
0255文字
のぶ1958
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お気に入りさんのレビューに惹かれて。短編7篇、戦時をテーマにしたものが多いが、思った以上に読みやすかったです。描写は淡々と穏やかだけど、我慢を重ねた人達の気持ちが響いてきます。丁寧な取材を通じて事実を作品にしているとのこと、機会をみて他の作品も読んでみたくなりました。
0255文字
A.KI.
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上陸後戻らず山中で謎の死を遂げた海軍兵を描いた表題作「帰艦セズ」ほか7編を収録。基本どの作品も、作者らしい淡々とした筆致でそれぞれの真実がひも解かれていくわけだが、そこにどうしようもないやるせなさや、あるいは作品によっては筆者自身の悔恨や苦悩もにじみ出ていて、読後に響く。真相が明らかになると、本当に虚しく悲しくなるだけのこともある。「飛行機雲」は「大本営が震えた日」の制作記として面白かった。「帰艦セズ」に関連して「逃亡」もいつか読んでみよう。
0255文字
konoha
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「これぞ小説」と感じた。渋い。思っていたよりずっと読みやすい。無駄のないシンプルな文章、情景描写による始まりに引き込まれる。「果物籠」は戦時下、教練で生徒に暴力を振るっていた井波が怖く、妙にリアル。時を経て再会しても悪気がない井波への生徒たちの複雑な感情が伝わってくる。「飛行機雲」の君塚夫人は夫の生存を信じて待っていたが、小説家から戦死していたと知らされる。どの人も何事にも屈しない静かで強い信念を持っている。それが現代の小説ばかり読んでいると新鮮で心地良い。ずっと色褪せないだろう作品。
hon

読んだー。このはさんに既に「逃亡」のスピンオフって教えてもらってるじゃんね(笑)。スルーしちゃってたよ。俺マイベスは飛行機雲でした。恥ずかしながらこんな事件全く知らなかったもので。このネタも別作品あるみたいだから読んでみるよ。釣ってくれてありがとう♪

04/23 10:21
konoha

ほんさん、「鋏」も良かったです。どれも妙に印象に残りますね!皆さん吉村作品たくさん読んでますね〜。ゆっくり読んでいきます。

04/23 22:13
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0255文字
Shoji
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『逃亡』に引き続いて読みました。『逃亡』のスピンオフ的な作品である『帰艦セズ』は、『逃亡』発表から15年後の発表とのことです。違った角度からストーリーを捉えることが出来て新鮮でした。他、死にまつわる人間模様を描いた作品が六編収められています。いずれも、人間社会の不条理を書ききっています。「死んだらおしまい」とか「もう死んだからええやん」なんて軽はずみなことは言えないお話ばかりです。読み応えありましたよ。
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あきまこ
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久しぶりに吉村昭を読みましたが、やはり読んでよかったです。今回は苦手な、挿入されている古い記録文書も頑張って読みました。
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kawa
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ネタバレ「短編小説が生きがい」と述べる著者、流石の秀作短篇集。太平洋戦後の世相を引きずる作品が多いのだが古さを感じさせない粒ぞろい作品オンパレード。弁当箱を無くした程度で上官の制裁を怖れ脱走・首吊りをする海軍機関兵、そして戦後、その真相を知ることとなる遺族の嘆きを描く表題作「帰艦せず」、「大本営が震えた日」で取り上げられる「上海号不時着事件」の後日談で遺族の葛藤を描く「飛行機雲」、が特に印象的。相続絡みの損得で無駄な延命治療の苦しみを描く「白足袋」も、なまじ財産を持つ人の悲劇を描く意味で現代に通ずる重いテーマ。
0255文字
chuji
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久喜市立中央図書館の本。2023年7月新装版初版。1988年7月に単行本として刊行され、1991年7月に刊行された文庫の新装版。七編の短編集は戦後の匂いがプンプンしました。
0255文字
you
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吉村昭の本は25冊目となった。著者の本は戦争や死を題材とするものが多く、重く暗い話なのだが、どれもスーッと中に引き込まれてしまうような感覚がある。そして終盤に劇的な展開や明快なオチがあるわけでもなくスーッと余韻を残して終わる。終戦から78年がたってもまだこれだけ読み応えのある小説があるものの、吉村昭氏のように丹念に足で証言を集めるというスタイルの戦争物はもうでてこないんだろうなあ。
0255文字
CMYK
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久々の吉村作品。全7篇のうち後半の4篇が太平洋戦争絡み。表題作は『逃亡』から派生した哀切な一篇。『大本営が震えた日』『総員起シ』に関連する短篇もあり、興奮しつつそれらを読んだ記憶が蘇る。読後、何かしらうつろで寒々しい気分になる短篇ばかりだが、どれも忘れ難い印象を残す。仮釈放の男がちょっと不気味な「鋏」、教練担当の元軍人に対するかつての学生たちの鬱屈した心理を描く「果物籠」が特に秀逸。新装版の梯久美子氏の解説も、同業者ならではの視点で味わい深い。
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メモ:「短篇を書くことはまことに苦しいが、私の生きる意味はをこにこそある、と思っている。厳冬の日に、滝に身を打たれるようなひきしまった気持になる」(「あとがき」243頁)

08/13 16:30
0255文字
ケンイチミズバ
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この時期のお約束。夏休みの読書課題に人類の課題でもある戦争について考えるコーナーがある。逃亡の汚名のまま行方不明の息子。家族は肩身の狭い思いで終戦を迎える。巡洋艦の緊急出港に乗り遅れた海兵は軍規では死刑に値する。若者は官給品の弁当箱を旅館に忘れ取りに戻ったのが判断ミスだったのか、戦地へ行きたくなかったのか、山中で餓死した。菊の御紋の入った官給品を失す、粗末に扱えば鉄拳制裁が待ち構えており、顔が変形するまで上官に殴られた日本兵を今の若者は理解できないだろう。無理無理無理と逃げるか、射撃訓練で銃を乱射するか。
ケンイチミズバ

究極の不条理。鉄拳制裁や教練で叩きこまれ、条件反射で人をためらうことなく殺すことができるようになるという。洗脳、訓練で躾けられた若者も集団を離れれば、一人の若者。一人の息子、一人の父が訓練により兵隊という駒になる。駒の命は軽々しく扱われ、時に玉砕したのに生き残っているのは恥とされ軍紀にもとると処分された人たちもいるらしい。不名誉の死。どんな最後だったのか知りたいという願いも、知らないままの方がよかったとなることもあるだろう。

08/09 09:14
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NOZOMI
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本屋で購入。同じ棚に並んでゐた『逃亡』も一緒に買つておけばよかつたなあ。
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まさ
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吉村昭の短編集。最後までは書ききらずに情景描写で物語を終える形式のものが多い。 生きるとはその表裏である死ぬことと非常に近い。それをヒシヒシと感じさせてくれる作品ばかり。 解説も良い。梯久美子さん。
0255文字
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帰艦セズ (文春文庫 よ 1-58)評価82感想・レビュー25