内容は非常に勉強になるが、すごく読みにくい本だったということは書いておく。まずソ連崩壊以降のウクライナの現代史(特にオレンジ革命とユーロマイダン革命の概要)を理解していることが前提なので、その時点でハードルが高い。あと時間も叙述の中で行ったり来たりして混乱するし突然紹介なしに現れる人名も多数。地図と年表を自前で用意してなんとか理解したが、あまり一般の読み手のことは考えていないみたい。新書にする上でもう少し叙述を整理してほしかったなあという読後感は残る。
5.「ウクライナのネオナチ」は膨大な証拠があり、アメリカ・カナダ・イギリスを中心としたNATOがそれを軍事訓練していた。バンデラの名前が出てくるだけ。他に、ファシストのステツコは世界反共連盟(WACL)に関わる重要人物なのに。 以上の事実を著者が知らない訳はない。500ページも費やして「書く価値がない」と言う判断だろうが、不可解。この為に本書の価値は大きく下がった。他書との併読は必須。→
なお国際法についてガザ民族浄化の大虐殺でイスラエル・アメリカおよびその属国がICJの判決を拒否して破りまくってくれているので完全に無価値となった。これらのファシスト国家を排除して新たに作り直さなくてはいけない。 もう一つ、NATOによるユーゴ空爆と露ウ戦争を対比させているが、ミロシェヴィッチやカラジチと言う民族主義者による民族浄化はでっち上げ。彼等も内戦回避の努力を続けていたが、ムスリム人に戦争回避をさせないように圧力をかけたのもアメリカであり例示として不適当。
②(承前)☆ ①の末尾に書いたように写真を見ると"大人しそうなおじさん"なのだが,結構クセが強い。例えば「私が外国の政治を研究するにあたって心がけていることは、様々な登場人物の見解を聞き、紹介するということである。これは決して、価値中立、両案併記的な姿勢をとるということではない。しかし、現に対立があるのに、片方の言い分だけを聞いて書いたものを学術的な労作と認めるのは難しい。」(同著12頁)という具合だ。また時々強烈な毒をさり気なく感想の形で吐いているのも面白い(さらに首肯できる)。(③に続く)
③(承前)☆ 一方,著者の専門性に追い付けない部分が若干あった。一例を挙げると21頁の国名の英字略称。また単独研究であるため(ただしアカデミズムの確認には十分耐えうるレベル),ジャーナリズム系の類書との関係は読み合わせが必要。また,著者も162頁で引用している高橋沙奈美『迷えるウクライナ』は既読だがこの部分を理解を深める上で極めて重要だと思う。
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