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ウクライナ動乱 ――ソ連解体から露ウ戦争まで (ちくま新書 1739)

感想・レビュー
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spock
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すみません。飛ばし読みです。地続きの国々は民族がまばらに混ざり合って生活しているので、住民はソ連崩壊に伴って引かれた国境という 線引きで敵対関係になるという こと、中央政府の意向に従うということは難しい。なので声高に言いにくいけどウクライナが善ロシアが悪って単純じゃないことがよくわかりました。
0255文字
Kerberos
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ウクライナの悲劇的歴史のはじまりはロシア革命以前だが、ソ連解体後はさらに悲劇性を増した。「ソ連という好敵手を失ったNATOが軍事同盟として劣化し、軍事ではなく加盟国の選挙のことばかり考えるようになった」という著者の指摘は重要だ。ウクライナでNATO加盟推進派の大統領を誕生させないためには親ロシア票が多いドンバスは独立させないほうがよいと当初プーチンは考えていた。侵攻を機にその考えを変えた以上、ウクライナ全体を完全にロシアの支配下に置くまでウクライナの動乱はおさまらないだろう。悲劇の歴史の終わりが見えない。
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allSS0413
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ネタバレ今回のウクライナ戦争の前哨戦でもある2014年のマイダン革命からドンバス戦争とクリミア併合などを詳しく書いてある面白い本。多分これを読んでる人と読んでない人では今回のウクライナ戦争への見方が変わってしまう。特に政治勢力(誰がどういう理由でなどなど)の解説が現地で取材してるので細かくて面白いし、クリミアの政治史はこの本で初めて知れた。ドネツク人民国へのロシア支援も当時の映像など見ればわかるがロシアが本腰入れずに支援していたのがよくわかるし、分離派を宥めながら支援していたなどの話は面白かった。
0255文字
Tourbillon Praline
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これじゃなかった感が強いです。『ポスト社会主義の政治』でもそうでしたが、選挙情報が大変詳しいです。政党、候補者、得票数、・・・。せっかくですが、ちょっとそれは読む気がしません。他の部分もなんとも読みづらいです。編集者はなんとかしようと思わなかったのでしょうか。それとも編集者自身が読むことを諦めたか?
0255文字
Wataru Hoshii
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開戦に至るまでのウクライナ国内の政治的・社会的・経済的混乱を、ソ連解体からの歴史の中で分析する書物。TVからネットの陰謀論までに溢れる「親露」対「親欧米」の対立としてこの戦争を図式化している言説がいかに的外れかがよくわかる。ウクライナは多文化的であり、地域によっても階層によっても政治意識は多様。クリミアやドンバスでの調査は、日本には伝わりにくいその土地のリアルを描き出す貴重なドキュメントである。ロシアの侵攻は明確な国際法違反。しかしウクライナが抱えてきた問題は深く、それはこの戦争の背景を知る上で重要だ。
Wataru Hoshii

内容は非常に勉強になるが、すごく読みにくい本だったということは書いておく。まずソ連崩壊以降のウクライナの現代史(特にオレンジ革命とユーロマイダン革命の概要)を理解していることが前提なので、その時点でハードルが高い。あと時間も叙述の中で行ったり来たりして混乱するし突然紹介なしに現れる人名も多数。地図と年表を自前で用意してなんとか理解したが、あまり一般の読み手のことは考えていないみたい。新書にする上でもう少し叙述を整理してほしかったなあという読後感は残る。

08/19 22:56
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ドネツク人民共和国の分離独立運動が真剣に左翼的な理念に根拠づけられた社会革命として評価されているのが興味深い。(極左などは言うに及ばず) ロシアの思想界や共産党とクレムリンとの間にある微妙なズレもこのようなことの現れなのだろうか?
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ハンギ
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ウクライナはマイダン革命後に大統領を憲法違反ながら解任し、その支持母体であるドンバスへ武力侵攻した、というのは言い過ぎだろうか。クリミア分離も右翼の暴力を政府が抑えることができないこと、経済情勢がどんどん悪くなったことに起因するかもしれない。プーチンがいなくなってもウクライナは良くはならない、という言葉にウクライナウォッチャーの絶望を感じる。もちろんプーチンの武力侵攻も問題だろうが、ある程度の合理性についても言及されている。カラバフ紛争など、旧ソ連圏はなかなか大変だなあと感じた。
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koba23
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単純なNATO対ロシアの構図ではなく、ソ連崩壊からのいろいろな経緯があった上でのことを考えると、一体誰が一番悪いのだろう?と考えてしまう。やっぱり一番得しているアメリカ?
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takao
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ふむ
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たくやよ我に帰れ
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武骨で大学の講義を聞いているようなグルーヴ感のある新書だった。私はクリミア問題は名前くらいしか聞いたことがなくドネツクやドンバス、ユーロマイダン革命などは全く知らなかった。今日の露ウ戦争はプーチンによる独断と偏見に基づく思い付きの類ではなく、ソ連崩壊から続くウクライナの問題であり、こうした政治的問題に対して責任や覚悟を持った政治家の不在、ポピュリズムといった現代的な問題も内包していると感じた。また、旧ソ連の地域においては自治や国家などのイメージが多層的で複雑で、それがより一層の困難に結びついているのかも。
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CHRONO
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2023年7月刊。ウクライナ、クリミア、ドンバスにロシアがどう関わっていたかのリアルタイム研究書。ソ連解体後のウクライナの混乱から現在の戦争状態まで解説。ウクライナ西部とクリミア、ドンバスの帰属意識の違いと2014年前後からの描写がリアルで、全体的にウクライナに厳しめな書きようだが、納得せざるを得ない。484Pが心に刺さる。「ウクライナの再生に協力したいと考えている日本の市民には、ウクライナについて知ってほしいと思う。善意は知識の代わりにはならないし、プーチン政権を倒しても、ウクライナはよくならない。 」
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(ま)
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「諜報国家ロシア」が裏からの陰惨な陰謀史なら、本書はソ連崩壊後のウクライナ南東部の表の凄惨な歴史 オレンジ革命、マイダン革命を調べないと...
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紙狸
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2023年刊行。ソ連解体に伴い独立して以降のウクライナ政治の詳細な分析。2014年にロシアに併合されたクリミア、2022年以降のロシアの全面侵攻で併合されたドンバス地方に重点が置かれている。2014年にヤヌコヴィッチ大統領を失脚させた大衆運動「マイダン革命」について、日米欧のメディアの報道とは違って批判的だ。マイダン革命で権力を握った勢力には、反対派への暴力・殺害など未解明の疑惑がある。クリミアやドンバスのロシア語系住民から見ると、マイダン革命派に対して拒否感を抱いても当然だったという見方だ。
0255文字
perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇿🇦🇵🇸🇾🇪🇸🇾🇱🇧🇨🇺
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2023年7月刊。本書は長周新聞で和田春樹氏が言及していた本。「ウクライナ戦争は何から何になったのか――松里公孝著『ウクライナ動乱』を読み解く 東京大学名誉教授・和田春樹」https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/27735 同様の『ウクライナ・ナショナリズム』は読了済み。著者の専門はロシア帝国史、ウクライナ等旧ソ連の現代政治で、世界的に有名なウクライナ研究家。はじめに。「キエフ」を「キーウ」と表記するのはウクライナ語的にはまったく正しくない。→
perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇿🇦🇵🇸🇾🇪🇸🇾🇱🇧🇨🇺

5.「ウクライナのネオナチ」は膨大な証拠があり、アメリカ・カナダ・イギリスを中心としたNATOがそれを軍事訓練していた。バンデラの名前が出てくるだけ。他に、ファシストのステツコは世界反共連盟(WACL)に関わる重要人物なのに。 以上の事実を著者が知らない訳はない。500ページも費やして「書く価値がない」と言う判断だろうが、不可解。この為に本書の価値は大きく下がった。他書との併読は必須。→

02/04 21:02
perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇿🇦🇵🇸🇾🇪🇸🇾🇱🇧🇨🇺

なお国際法についてガザ民族浄化の大虐殺でイスラエル・アメリカおよびその属国がICJの判決を拒否して破りまくってくれているので完全に無価値となった。これらのファシスト国家を排除して新たに作り直さなくてはいけない。 もう一つ、NATOによるユーゴ空爆と露ウ戦争を対比させているが、ミロシェヴィッチやカラジチと言う民族主義者による民族浄化はでっち上げ。彼等も内戦回避の努力を続けていたが、ムスリム人に戦争回避をさせないように圧力をかけたのもアメリカであり例示として不適当。

02/04 21:02
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0255文字
淺野 昌規
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ウクライナの再生に協力したいと考えている日本の市民には、ウクライナについて知ってほしいと思う。善意は知識の代わりにはならないし、プーチン政権を倒しても、ウクライナはよくならない。 (p.484)
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フンフン
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とにかく読みにくい。著者は日本の読者はウクライナの地名にも独立以来の政変にも無知なのだということをわかっていないらしい。自分で年表をこしらえ、ウクライナの州区分地図をネットで手に入れ、苦労してなんとか読み切った。ドンバスの親露政権はロシアが無理にこしらえた傀儡政権と思っていたが、そうではないことがわかった。ドンバスの分離を承認するしかなさそうに思えたが、これはウクライナにとってもロシアにとってもなかなか解決困難なことがわかった。
フンフン

著者はウクライナ語とロシア語には堪能らしいが、日本語に関しては、はっきり言って文才がない。谷崎潤一郎の『文章読本』ぐらい勉強してから本を書けといってやりたい。

01/19 15:00
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sagatak
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著者の経歴でも分かるが現地の事情が確かだ。プーチンがウクライナ全土に攻撃したのは驚いたが、それが起こり得た条件が詳しく述べてある。気まぐれではないのだ。関連人物が多すぎてきちんとは把握できなかったが、全体像は見えた気がする。プーチンがウクライナをナチスに例えたのは言い過ぎとしても実際にウクライナ政府が東部地域に対して取ってきた政策が酷いものであったのも事実で、そこに今度の戦争の原因はあるようだ。昨日プーチンが言い出した停戦も弱気と取るか実際的と取るかくらいの考え方の違いがでる。
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Toska
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我々はソ連に復讐されているのだろうか。政治的にも経済的にもボロボロだったソ連末期、この「お荷物」さえ放り出せばすぐ幸せになれると誰もが思い込んでいた。反面、ソ連が営々と築き上げてきた産業や学術などのシステムをご破産にすることで何が起きるのか、真剣に考えた者はいなかった。結果、2020年のウクライナ実質GDPは1990年当時の63.2%(!)にとどまるという惨状。ロシア経済がこれよりましなのは資源があるからにすぎない。この貧しさこそがあらゆる問題の根源と著者は喝破する。
Toska

渦中のクリミアとドンバスに触れた第三〜五章は最大の読みどころ。現地調査も交えながら産業・社会構造や住民の気質を丹念に分析し、しかも過剰な思い入れに囚われることがない。著者一流の活き活きとした文体と相まって、ルポルタージュ的な面白さがある。彼らは単なる傀儡でも犠牲者でもなく、独自の行動原理を持つ重要なアクターなのだ。他方、伝統的に親欧州とされるウクライナ西部については切り込みが浅く、バランスに欠けるのが難点か。

12/22 11:53
Toska

単純な善悪二元論を排した著者の冷静かつ綿密な研究態度は支持したい。ただ、ロシアが絶対に許されない一線を越えてしまった現在、このような姿勢がもっと単純な「どっちもどっち」論を利する危険性もあり、悩ましいところ。本当に、あのプーチンって野郎は…ともあれ、色々な意味で読み応えのある一冊。今後の状況次第では、本書のこの分析がますます価値を持ってくるかもしれない。

12/22 11:53
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とりもり
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ボリューム・内容ともに新書を超えて学術書レベル。大戦後にウクライナに移管されたクリミアがロシアへの帰還を望むのは分かり易いが、ウクライナ南東部はウクライナ自身の多民族国家の否定政策に端を発してそれを望むようになったとは知らなかった。そして、親ロシアなクリミアに続けて、南東部2州も離脱すれはウクライナのNATO加盟を促進する可能性が高いことから、ロシア自身がそのシナリオは望んでいなかったということも驚き。ボタンをかけ違いまくった結果が今の混迷だと言わざるを得ない。とにかく停戦が実現せんことを願う。★★★☆☆
0255文字
しょすたこおびち
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2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵略について多くの本が新書で発行されたが、見る限りこの本が一番厚い。私見では国連憲章と国際法に照らしてロシアは無法行為を止めて即時撤退すべきだし、アメリカがふりまく、価値観の違いという世界を分断する主張も排除すべき。ただし旧ソ連からのロシアとウクライナを取り巻くダイナミズムを解明することは意味のあることだし本書は詳しく解説している。特にウクライナにおける正教会問題はとても興味深かった。少なくともクリミア併合の2014年に歴史を巻き戻せたらと思う。
0255文字
司馬太郎
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ロシアによるウクライナ侵略が始まって2年近いが終戦はおろか停戦の兆しも見えない。本書はウクライナの内政・外政をソ連末期の時期から詳細に解説しており、今回の戦争の原因がプーチンの誇大妄想だけではないことがよく分かった。ただ本書を読んでも毎日新聞の伊藤某が唱える「露も悪いがウクライナにも責任がある」論にはとても賛成できない。ゼレンスキーの対露戦略が稚拙だったのは間違いないが、自国民の保護を理由に他国の民間人の虐殺、幼児誘拐が正当化される訳がなく、被侵略国に責任が生ずることはないことだけは揺るぎようがない。
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ピラックマ
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開戦前夜までのウクライナの政治・社会状況の詳細を知るための必読本。以前、佐藤優氏がロシア対ウクライナは毒蛇と毒サソリの闘いなので関わらない方がよいと語っていたのがむべなるかな。
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ぐうぐう
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連日トップニュースで報じられるパレスチナ情勢を見ていると、まるでロシアによるウクライナ侵攻が終結したかのような感覚に陥ってしまう。あれほど紙面や時間を要して報じられてきたウクライナが、パレスチナ問題の陰に隠れて姿をなくしてしまっているからだ。マスメディアは一色に染め上げることを得意とし、それは別の色の存在を希薄にするという負の効果を促していく。そんな歪な状況だからこそ、現在読むべきではないかと、本書を手に取った。(つづく)
ぐうぐう

奇しくも本書は、偏って報道されることの多い露ウ戦争を、別角度から照射し解釈しようと試みている。本書の主張の一番の特徴は、ロシアがウクライナに侵攻した理由を、従来解説されてきた動機とは別に、ソ連崩壊時に遡っている点だ。あるいは、ロシアによるクリミア併合も異なった風景として描かれている。こう書くと一見、ロシア寄りの論調のように聞こえてしまうが、著者はロシアにも辛辣な眼差しを向けている。いわゆる西側に生きる私達は西側の報道を目にする機会が圧倒的に多く、結果として染まってしまう。(つづく)

11/24 21:26
ぐうぐう

その染め上がりが綺麗であればあるほど、その色に正義が宿ってしまうのだ。強い正義と強い正義のぶつかり合いが戦争を起こすことを考えれば、ひとつの色を信用しようとする私達もまた、戦争を起こす一員であるのかもしれない。パレスチナの問題もまた、同じことのはずだ。

11/24 21:26
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れうしあ
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経済、分離紛争、安全保障の分野において、ソ連末期以来の社会変動が今日まで続いている。独立後の非工業化は経済的困窮と社会不満をもたらした。旧ソ連圏における戦争は全て分離紛争の再燃である。ソ連の民族連邦領域制は民族を政治化し武力紛争を招いた。国際組織は親国家を支持し、分離政体はロシアに依存した。プーチン政権は旧ソ連地域への関与を弱めることで反一極世界外交に転換した。ユーロマイダン革命はウクライナ政治の分極化の結果であった。東部地域主義とウクライナ民族主義は親露親欧と結びつき東西対立を規定した。
れうしあ

ドネツクは工業化による多民族地域であり、垂直的産業構造は集権的恩顧政治を生んだ。企業の私有化に伴う地域閥間闘争はドネツク人に二重の剥奪感を与えた。マージナル層による分離派は革命の正統化前に人民共和国の独立を果たしたが、新政権は空爆を開始し内戦へと突入する。彼らはロシアへの統合を望んだが、ミンスク合意を押し付けられる。連邦化にはコミットメント問題があり、履行されなかった。ゼレンスキーが再征服に傾くと、プーチンは人民共和国を承認し、ウクライナの体制変更戦争へと進んだ。

11/04 20:58
れうしあ

力誇示による自壊誘導を図ったが、読みは外れ抵抗にあった。クリミア回廊の確保を目標とする領土獲得戦争へ変更したが、兵力不足など軍の脆弱性が露呈した。著者はウクライナは多文化国家であり中立五原則を守るべきであったとし、信託統治や共同主権のような主権国家的でない解決法を提案する。分離紛争の要因は地政学的対立ではなく、社会不満、不公正への怒りであった。それが国家間対立へと矮小化された。両体制は共鳴しあう関係にある。

11/04 20:58
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0255文字
ふぁきべ
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ロシア寄りというよりはウクライナ東部の独立派寄りな姿勢はやや垣間見えるが、ウクライナで起こっている問題の根源的な背景を非常に丁寧かつ詳細(ともすれば詳細すぎるほど)に紹介している。私にはロシアのこの問題への姿勢が場当たり的で、ウクライナ内部の政情に引っ張られた結果としてのウ露戦争であるとは思えないが、ウクライナの民族主義的な志向がロシア語話者の動向に多かれ少なかれ影響を与えたことは否定できないだろう。ウクライナの独立とその領土の一体性は支持するが、分断を招く政策には修正が必要に感じる。
0255文字
fukurou3
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ウクライナで行われている戦争について、ゼレンスキーが善でプーチンが悪という単純なものではないことがわかる。ウクライナ自体が成り立ちからして複雑。さらにこの本自体が量が多くて、詳細な上に馴染みのない人名がたくさん出てくるので、読んでくうちに混乱してくる。
0255文字
ポルターガイスト
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2014年以降のウクライナ政治に焦点を当てて紛争の要因を深掘りしている。戦争開始後の情勢の推移よりクリミア・ドンバス情勢が詳しい。ロシアを一方的に断罪する論調ではなく,ウクライナ側の問題点についてもかなり詳細に述べられているのが特徴的。初学者なら山川出版社の『講義 ウクライナの歴史』のほうがより広い範囲をカバーしているのでいいかなあと思うが,2014年以降の情勢の推移について政治的・政策的観点から知りたいなら本書はかなり心強い。
0255文字
Satsuki
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2014年以降を中心に、ウクライナ内政を主に見る。露のウクライナ侵攻は、さすがに正当化はしない。プーチン含む露指導者の主観的認識では、この戦争は「強いられた」とするが、著者はこの認識には同意しない。その上で、その至る過程で絶対的正義や善はないという著者の視点が分かる。ユーロマイダン革命後の右派民族主義伸長、国内でのイデオロギー化、両極化や地政学化も否定的に見る。またドンバス戦争では、ウクライナ軍の民間人攻撃も指摘。同時にクリミアとドンバスでは露の介入も指摘するが、それ以上に各分離運動の自主性を重視する。
0255文字
お抹茶
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現在の戦況よりも,クリミア,ドネツクでの時系列が非常に詳しい。コーカサスにも言及。ジャーナリストの戦地レポと違う点は,国際社会がやや軽視してきた2010年頃からの十年間の動きと背景を網羅していること。加えて,現地での調査・取材も行っていて,ウクライナ国民はもとから一枚岩ではないことがわかる。幾多の登場人物が出てくるため,ある程度この分野の知識を持っていないと,ついていけなくなる。ちなみに,キーウという発音ではウクライナ人には通じず,ウクライナ語に近いのはクィウ(クィヴ)らしい。
0255文字
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
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☆ serial number 282(282/345)著者は東大大学院でロシア帝国史や旧ソ連圏の現代史を教えている。アカデミックな考察だが,マイダン革命前後からのウクライナでフィールドワークを重ねており,ここまで読んだウクライナ史関連の書籍で1990年代以降の同国史で最も優れた内容と思う。やや大部なので,はじめにを読んだら終章とあとがきに目を通し,各章も章末の「まとめ」に目を通した後で中身を読むのが理解を深めやすいと思う。また著者がはじめに(15頁以降)で記載している「発音と表記」は必読。(②へ続く)
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)

②(承前)☆ ①の末尾に書いたように写真を見ると"大人しそうなおじさん"なのだが,結構クセが強い。例えば「私が外国の政治を研究するにあたって心がけていることは、様々な登場人物の見解を聞き、紹介するということである。これは決して、価値中立、両案併記的な姿勢をとるということではない。しかし、現に対立があるのに、片方の言い分だけを聞いて書いたものを学術的な労作と認めるのは難しい。」(同著12頁)という具合だ。また時々強烈な毒をさり気なく感想の形で吐いているのも面白い(さらに首肯できる)。(③に続く)

09/11 22:33
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)

③(承前)☆ 一方,著者の専門性に追い付けない部分が若干あった。一例を挙げると21頁の国名の英字略称。また単独研究であるため(ただしアカデミズムの確認には十分耐えうるレベル),ジャーナリズム系の類書との関係は読み合わせが必要。また,著者も162頁で引用している高橋沙奈美『迷えるウクライナ』は既読だがこの部分を理解を深める上で極めて重要だと思う。

09/11 23:18
0255文字
ザビ
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ウクライナの史実(マイダン革命、ミンスク合意など)の概要は理解済み前提で、さらに専門的な分析を加えた本なので理解が追いつかなかった。ただ著者は、基本的にロシアの立ち位置からウクライナを視ていると思う。「今のウクライナの広大な国土はソ連解体の棚ぼた」「親欧米が親ロシアを排除すべく共産主義思想と共産党を非合法化」「親欧政権では民族主義=国民分断に頼り支持を集めますます経済は悪化」親欧米政権支持の市民とロシア側を維持したい市民の対立が2014年以来のドンバス紛争。紛争の裏には経済的困窮や民族差別の影がある。
0255文字
鏡裕之
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ロシアとウクライナの問題は、米ロ対決の問題ではない。ソ連崩壊後、資源を持つ共和国は豊かとなり、資源持たぬ共和国は貧乏になった。貧乏になった1つがウクライナだった。ソ連の中にあった時は得意の産業が有効性を発揮したが、西側との自由な貿易世界では、ウクライナは戦うことができなかった。本来ウクライナは経済発展を、産業をどうにかしなければならなかったのに、誤魔化す形で民族問題にすり替えた。その結果発生したのがクリミア独立であり、ドンパスであった。モルドヴァのように中立を保つべきだった……という話。
鏡裕之

著者はこう述べている。「ウクライナ分離紛争を、米露の地政学的対立の一事例と見るのは間違っている。ユーロマイダン運動がそうであったと同様、クリミアの分離運動にも、人民共和国運動にも、その背景には、社会主義解体後のウクライナの貧困化に対する不満、社会的不公正への怒りがある」。分離したクリミアやドンパスからすれば、ウクライナは親にあたる親国家である。そしてロシアはパトロンに位置するパトロン国家にあたる。親国家をパトロン国家が潰しに行っているのが、今回の露ウ戦争ということになる。

08/13 07:17
鏡裕之

2014年の時点では、ロシアは軍需産業をウクライナにかなり負うていた、それゆえウクライナに対する本格的侵攻は2014年ではなかったという指摘は興味深い。政権獲得のために民族的な分断を利用した代々のウクライナ政権は、国家の安保を考えるなら西側にシフトするのではなく、ロシアと軍需産業的なつながりをキープしておくべきだったのだろう。ウクライナ語の強制とロシア語話者の切り捨てといった民族的政策は、ウクライナにとっては発展とは真逆の未来につながっているように見える。ロシアを退けても、ウクライナの未来は明るくない。

08/13 07:21
0255文字
Francis
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502頁もある大著。ウクライナは旧ソ連の崩壊により誕生した多様性に富んだ国家であったため、ドネツク、ルガンスク両人民共和国、クリミア併合などの分離運動を生み、それがロシア・ウクライナ戦争を招いたことが語られる。と書けば簡単なのだが、問題が複雑なうえ、登場人物も多数に上るため理解するのに時間がかかった。このような多様性のある国をまとめるには経済成長と繁栄が必要であり、、イデオロギーや言語はあてにならない、とはその通りなのだと思う。あとは独立戦争時に宗主国と一緒に戦った、と言う物語も必要なのだろう。
0255文字
ごはんたべたい
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分厚さに違わぬ大変な大著。この問題のウクライナ側での問題点を地方別、産業構造別にみていくというもの。結局東側が解体された後に不況に陥り、西側からの出資が得られず、経済的にロシアや中国への依存が強まってしまった、そしてそれらを含めた諸問題に対してイニシアティブを取れる政治家が存在しなかったことも問題なのだと説いている。
0255文字
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ウクライナ動乱 ――ソ連解体から露ウ戦争まで (ちくま新書 1739)評価84感想・レビュー35