形式:単行本
出版社:スイッチ・パブリッシング
原文は旧約聖書が書かれた当時の言葉、それを日本語しかも歴史的仮名遣いに翻訳。流石の柴田氏、空気感迄の再現には舌を巻く。「ローマ熱」これもさっと読むと意味不明~再読 再開した2人は幼馴染、一人の男性について語り合う・・が推して当然。微妙に食い違うひんやり感、シニカルな言葉が絶妙「納屋を焼く」1行目からフォークナー舞台の幕あけ・・延々と続く長文、サートリス♪延々と続く道をなかなか走れない馬のあり様を表して「淡い色のリボンが恐ろしく緩慢に・・」少ししか齧っていないが、この作家の何もかも別格。「広場でのパーティ」
アフリカから連れ出された黒人らが米で受けた処遇の極みが一部綴られる・・眼を覆いたくなる惨さ‥あといかほどの時間、終結に繋がるのに要るのだろうか。「分署長・・」作品の舞台から推して翻訳し辛い作品の最高ではと感じる。メンタルをやられたような連中が自己弁護、保身のためにわめき散らす。その状況はシュールの頂点かと。ここでも柴田氏は現場を見ていない日本人が解るように言葉を選び、空気の再現を成し遂げている・・脱帽!
続き)これが一番今の読者にも面白さがわかる作品かもね。シュウォーツ「夢の中で責任が始まる」現実と夢が入り乱れる不思議な世界で手塚治虫に漫画化してもらうとすごく面白い気がする。フォークナー「納屋を焼く」この家族は苦労するな・・父さんなぜこんな人物なのか。あと高価な絨毯を洗うのは信頼置ける人に頼まないとあかんて。エリスン「広場でのパーティ」これは問題作・・怖い(泣)これは当時発表できないのわかる。他の作品もどれも一筋縄ではいかない感じでじっくり読んだ。黒人がメインの作品が多い印象。
翻訳者あとがきもじっくり読む。ヘミングウェイについて「抽象語を排し、目に見えるものを尊重して他人の内面に安易に立ち入らない、『膨らませる』よりも『削ぎ落とす』ことを旨とするその小説作法」は後世に大きな影響を与えた、とあって刮目する。長編も読んでみたい。そしてわかりやすい面白い作品では得られない栄養があるなと今回手強い1冊を読んで感じた。大変だけど手強いむつかしい作品も読んでいきたい。
フォークナー『納屋を焼く』(1939):きっと原文が難解だから訳注が多い^^;黒人奴隷よりもみすぼらしい白人小作人。ラストで地の文で父の出征の理由が明らかにされ、息子の気持ちとは違っていることがわかるのが残酷で良かった。
エリスン『広場でのパーティ』(1930年代後半):『見えない人間』で有名な黒人作家の未発表作品。黒人がリンチでガソリンで焼き殺されるのを白人少年が見ている。ものすごく恐ろしい描写と、結局貧乏白人たちのガス抜きにはならず、黒人の反抗心も消えはしない雰囲気が漂い始める時代だというのが伝わってくる。 オルグレン『分署長は悪い夢を見る』(1947):チンピラ一杯地域の分署長の正に悪夢の勤務時間。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます