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スラヴ世界とその周辺―歴史論集

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Toska
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1992年に出た古い論集だが、フルシェフスキーのウクライナ史学を取り上げた論考(阿部三樹夫)が収められている貴重な一冊。自前の国を持たないウクライナの歴史を把握する上で、フルシェフスキーは国家・政治的な要素を相対化し、経済・文化的要因と「ナロード(民衆)」を重視した。こうしたアプローチは、国制史に絡め取られた歴史観へのアンチテーゼとして有効である一方、実証性に乏しく主観的な方向へ流れる危険性も秘めているように思う。いずれにせよ、今後深められるべき論点であることは間違いない。
Toska

他には、イヴァン3世時代のモスクワでドラキュラことワラキア公ヴラド・ツェペシュの伝記が出ていたという想像力を刺激される話題(田辺三千広)。ポーランド分割後のロシア帝国政府に提示されたユダヤ人管理政策(高尾千津子)。近代ロシアの教育改革にバルト・ドイツ人が果たした役割(今村労)。ミロシュ・オブレノヴィッチ時代のセルビア農村における冠婚葬祭(高田敏明)。ハンガリーの地理学者アールミン・ヴァームベーリが示した「反露主義」について(稲野強)等々。

01/01 13:53
Toska

スラヴ史というよりは日本史の範疇だが、パリ万博に参加した徳川昭武(慶喜の弟)が現地でアレクサンドル2世暗殺未遂事件に遭遇した話(森仁史)も興味深い。ロシア皇帝とは同じ万博ゲスト仲間であったにも拘らず、昭武をはじめ日本人側はこの事件を「亡国遺民(犯人はポーランド人の青年だった)による義挙」と受け止めていた。幕府は意外に詳しくロシアの国内事情を知っていたものらしい。一方で、テロや暗殺への抵抗感が薄い幕末維新期のメンタリティも垣間見える。

01/01 16:32
0255文字
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