形式:単行本
出版社:紀伊國屋書店
形式:Kindle版
単行本で500ページを超す大作ではあるが、哲学者たちの人間ドラマは大河小説のようでもあり、引きずり込まれるようにして読んでしまう。特にハイデッガーとその恩師に当たるフッサールとの関係は、ハイデッガーがナチスに接近し、フッサールがユダヤ人であったことから袂を分かっていく様子は哀切である。また戦後には、そのフッサールやハイデッガーの教えを受けたサルトルやボーヴォワールが中心となって、実存主義者及びその同調者たちが雑誌『レ・タン・モデルヌ(現代)』を中核に生き生きと活躍し始める様子が描かれる。
サルトルもまた、カミュやメルロ=ポンティとは、その政治的な意見の相違で分かれていくことになるが、彼らが亡くなったときのサルトルの追悼文は、昔日の友情に思いを馳せる胸を打つものだった。この著作では、特にボーヴォワールが『第二の性』でフエミニズム(だけでなく、人間関係論)に与えた大きな影響、それとメルロ=ポンティを「知的ヒーロー」と捉えている点に興味をもった。彼らの著書や関連した本を読みたくなる。この本は、そうした思想家たちの人間ドラマとしても優れているが、実存哲学(者)入門としても相応しいと思う。
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