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日米同盟の地政学:「5つの死角」を問い直す (新潮選書)

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K
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日米同盟を基地使用、指揮統制、事態対処、出口戦略、拡大抑止という視点から紐解く書。いずれも、日米同盟は米国視点では米韓同盟を含む東アジア地域における安全保障システムの一機能との認識が示され、この指摘は非常に重要。「極東1905年システム」など、外交史を専門とする筆者ならではの歴史的視座が展開される。筆者が批判的に記述する、巻き込まれ論や一国平和主義論など、現代の安保問題に係る日本の世論、メディア論調に警鐘を鳴らす。本書の内容は非常にわかりやすく、論理だてられており、一般読者にも是非推薦したい。
0255文字
おんだい
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「日本は島国だが、海と空は世界とつながっている。そして、日本人が日常生活を営むために必要な物資の大半は海と空を通って運び込まねばならず、敵対する勢力も海と空を渡って攻撃をしかけてくるし、海と空の交通を封鎖されれば我が国は立ち行かなくなる」 著者が明言しているわけではないが、我が国の安全保障を議論するうえで誰も否定できない前提条件ではあるだろう。であるが故に、著者が言うように「朝鮮半島有事」「台湾有事」は日本人にとって他人事ではなく、(続く)
おんだい

(続き)いざその時に日本だけが無関係、局外中立の立場を取ることは物理的に不可能だ。日米安保条約の条文がどうであろうと日本に米軍基地と部隊が存在すること自体が極東有事に対する抑止力となっていることは現実だ。しかし日本人は(日本人に限らず人間とはそういうものなのかもしれないが)「戦争になってほしくない(こうあってほしい)」「戦争は絶対に起こしてはならない(こうあるべきだ)」という「願望・理想」が先行し、その「願望・理想」が破綻したときにどう対処してどう終わらせるか、という議論自体がタブー視されている。(続く)

09/29 11:00
おんだい

(続き)有事の際、敵対勢力は日本人のそのメンタリティを突くことで日米の連携を妨害することで自らにとって有利な形勢を作り出そうとするだろう、というのが本書の趣旨である。そう考えると、(少なくとも外交や安全保障について)日本人はあの戦争から何も教訓を見いだせず、自らの意識を変えることもできなかったのだろうか…?

09/29 11:08
0255文字
ちいだ
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書店で購入。副題のとおり5つの着眼から「鎖の最も脆い箇所」を点検する。「日本的視点」はまさに内向きの論理で、良くて法的整合・悪くてただの世論迎合のレトリック。軍事的リアリズムはそれを許すほど甘くない。昨今は現実へのすり合わせが図られているように思料。 出口戦略が気になったので別著書も読んでみたい。 各ケースの中では核恫喝を受けて核武装論にフリ切れることはありそう。戦略縦深が狭いのは核保有国イギリスも同じ。どうしてるのかな。やおらフリ切れるくらいないら「穏健な核武装」の可能性(の議論)があってもいいかも。
0255文字
金吾庄左ェ門
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日米同盟がいかに盤石であっても日本の希望通りにはいかないのは自明の理ですが、それを改めて思い知らされました。日本のその気にならなければ、アメリカも日本との同盟関係より中国やロシアのような国との外交関係を優先せざるを得ません。その時に日本がどのくらい配慮してもらえるかなど考えるだけムダでしょう。日米同盟以上に日本が自力でどこまでやできるのかが重要です。とりわけ考えさせられたのは、有事の際の自衛隊の指揮権の問題で、日米共同で対処する以上は自衛隊の指揮権を米軍に委ねる必要があるという国家主権の問題が生じます。
金吾庄左ェ門

確かに有事の際に指揮権にバラバラではやりにくいのでしょうが、そこまで米国に頼み委ねなければならないのでしょうか?韓国やNATOのような例もありますが、少なくとも現時点では自衛隊を米軍の指揮下に委ねる事には賛成しかねます。

09/17 02:32
0255文字
小鳥遊 和
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「おわりに」に掲げられた2ケースが興味深い。ケース1:北朝鮮が韓国との偶発的小競り合いをエスカレートさせ米韓連合軍と戦闘になり、短距離弾道ミサイルを韓国軍・在韓米軍の拠点、日本の排他的経済水域に発射。米軍は在日基地から戦闘行動をとるため日本政府に事前協議を求めたが、日本の一部政党、大手メディアは基地使用拒否の声をあげ(実はこの動きは北朝鮮につけ入られていた)、日本政府の使用許可回答まで時間がかかる。結果、戦闘終息までが長引き、米韓連合軍の死傷者数は想定を超えた(続く)。
小鳥遊 和

ケース2:中国が台湾に侵攻、在日米軍基地・自衛隊基地に弾道ミサイル攻撃、与那国島・石垣島を占領。日本では「即時停戦・外交的解決論」が広がる。米国は中国軍に壊滅的被害をもたらしたが中東情勢の緊迫もあり、台湾の継戦論を拒否し中国との休戦会談を開始。日本の二島は自衛隊単独の奪還作戦も厭戦的世論のため実行されず、占領されたまま。・・・と、現在の日本国内の政治・社会・報道環境に関して、限りなく悲観的な見通しばかりだ。著者のような「安全保障意識高い系」の人は、どうしてかくも自分は少数派だと思っているのだろう。

08/26 12:10
0255文字
Satsuki
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日米同盟の必要性を認め肯定的な立場から、基地使用、部隊運用、事態対処、出口戦略、拡大抑止という五分野を解説。新しい事実や解釈というより現状を解きほぐす感じで、基礎的事実も丁寧に説明する。特に、一国平和主義や憲法解釈等の、著者によれば「日本側の都合や願望に基づく日本的視点」と、安全保障環境の現実を俯瞰した上で何が必要かを考える「第三者的視点」を対比させる。著者は当然前者に批判的。また著者の以前の著作のテーマだった出口戦略、朝鮮有事と台湾有事での「現在の犠牲」と「将来の危険」という部分が新鮮かつ興味深かった。
0255文字
Mc6ρ助
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『日本政府と事前に協議しなければならない仕組みがある。・・実際には、事前協議をバイパスできる日米両政府間の「密約」が存在・・日本が事前協議でノーの立場をとってアメリカによる韓国防衛が成立しなければ、結局日本自身の安全も脅かされるだろう。(p11)』ノーと言える可能性が低い事実とノーと言えない「密約」がある現実が同じ地平で比較される。密約、密約と大人の事情な日米同盟、植民地日本とつぶやきたくなる。著者の米国に疑問を抱かない様は子供だとも思うが日本は米国に踊らされてキャンキャン鳴くしか道がなさそうで辛い。
0255文字
takao
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ふむ
0255文字
はるぱ
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北朝鮮や台湾海峡問題への危機意識から、基礎知識を得るために。半分は論文みたいな書籍だから、専門用語をこねくり回していて、文章もかなり回りくどい。それでもページはサクサク進んだ。終戦後の日米同盟の法的根拠の変遷や現状がコンパクトに理解できた。上記の事態が発生した場合の「出口戦略」がシュミレートされているのが一番の読みどころだったかな。いずれにしても「日本だけ単独でなんとか巻き込まれませんように」などという“願望”がまったく無意味であることは国民全体で理解しておく必要がある。
0255文字
バルジ
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タイトル通り地政学的な軸となる「極東1905年体制」と日米同盟を5つの観点からその相互作用を捉えながら論ずる快著。日本の安全保障論議でとかく見失われがちな「第三者」の視点から日米同盟の死角を炙り出す。最近話題の在日米軍司令官の格上げや中距離ミサイル配備を巡る問題などを見る際に本書は前提となる知識を与えてくれる。日米同盟は米韓同盟と表裏一体。沖縄の「核抜き本土並み」はアメリカの核戦略と国際環境の変化の産物、等多様な論点がちりばめられ充実した読後感である。
0255文字
お抹茶
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川名晋史『在日米軍基地』を先に読むと理解が深まる。日米同盟は二国間同盟としてアメリカの他の同盟網から独立した存在ではなく,アメリカが極東防衛の中心となる米日・米韓同盟の一機能であるという現実が大事。日本政府は日米部隊間での指揮権の共有や移譲は考えていないという立場だが,一国平和主義や必要最小限論による日本的視点だけで決められるものではない。極東有事でのアメリカの軍事行動に対し,事前協議制度を通じて一線を画せるという日本的視点と,アメリカの軍事行動と日本の便宜供与の一体化という第三者的視点にも乖離がある。
0255文字
Go Extreme
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日本的視点:一国平和主義・必要最小限論 第三者的視点:現状を歴史的背景・地域全体のなかで俯瞰 地政学的競争の時代 日部案と条約:物と人との協力 アジア太平洋のハブ・アンド・スポークス型同盟網 極東1905年体制 1978・2015年ガイドライン策定 指揮権一体型体制・指揮権調整 武力行使との一体化論 事態:国際平和共同対処・極東有事・重要影響・存立機器・武力攻撃 現場ではない現場 紛争原因の根本的解決or妥協的和平 非核三原則と拡大抑止 日本的視点の帰結:巻き込まれ論・即時停戦論・核武装/核持ち込み論
0255文字
TSUYOSHI
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先日、岩国航空基地の「フレンドシップデー」に参加した。海自・米海兵隊共用の本基地は、一朝事あれば日米共同による事態対処の要となるだろう。一方で、そうした軍事的協力の基盤たる日米同盟をめぐっては、その背景や眼前にある歴史的経緯・地政学的現実と、日本人が抱く一国平和主義的な願望との間の懸隔が大きい。そこで、本書は前者の見地に基づく俯瞰的視座から「基地使用」「部隊運用」「事態対処」「出口戦略」「拡大抑止」の5つの分野におけるギャップを明らかにし、日米同盟に対する日本人特有の思考様式の転換を促す。⇒(1/3)
TSUYOSHI

⇒前提として、日米同盟は筆者が「極東一九〇五年体制」と呼ぶ地域秩序を維持するための同盟網の一環だ。つまり中国・北朝鮮に対して日韓台の勢力均衡を保つことが目的であり、日米同盟は米韓同盟、米台安全保障連携と密接な関係にある。ところが日本人は、戦争を忌避するあまり国内向けの論理(集団的自衛権違憲論等)構築に汲々としたり、核兵器に対するアンビバレントな感情に引き裂かれたりして、安全保障を観察する眼を曇らせ、日米同盟の地政学的意味をずっと直視しないままに過ごしてきた。このことを筆者は強く危惧する。⇒(2/3)

05/12 15:24
TSUYOSHI

⇒朝鮮有事も台湾有事も「極東一九〇五年体制」を突き崩し、近代以降の極東における勢力図を塗り替える事態にほかならない。日本が無視を決め込めるはずもないが、一部世論はそうした危機への備えを求める声や、中国の覇権主義に対抗する日米同盟の再編を「戦争を煽るもの」と唾棄して、筆者が危惧するドメスティックな論理の殻に閉じこもったままだ。そういう人たちには、本書末尾の「シナリオ」を読んでほしい。もし内向きの態度を克服できないにままに有事が起これば、日本は戯言では済まされない屈辱を味わうことになるだろう。(3/3)

05/12 15:25
0255文字
TAMON BOLIVAR
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日本の安全保障において重要な基盤となる日米同盟について、特に論争になりがちな「基地使用」、「部隊運用」、「事態対処」、「出口戦略」、「拡大抑止」の観点から第三者的視点で分析した本である。最大な特徴は、先の5つの視点を非核三原則や一国平和主義などの日本側の視点で語られがちなところ、日本の安全保障環境という第三者的視点からその妥当性を確認していることである。
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