例えば、「野良犬」「羅生門」「七人の侍」「蜘蛛巣城」など、初期の黒澤明の作品をプロデューサーとして支えた本木荘二郎は、金銭問題が元で東宝から追われる。クロサワとも袂を分かった本木は、ピンク映画の世界で監督・プロデューサーをしながら、人知れずアパートの一室で亡くなる。しかしそれは栄光から追い落とされた男の哀しい最期ではない事を、本書の著者・鈴木義昭氏は熱い追跡取材によって解き明かしてゆく。その顛末はぜひご一読して頂きたい。また、歌舞伎界の異端児として知られる武智鉄二は、自らピンク映画の世界に飛び込み、
谷崎や漱石を原作に、スキャンダラスな映画を次々と制作してゆく(実は「白日夢」とか、結構アマプラで観れる・笑)。その武智が制作しながら、お蔵入りしてしまった幻の作品、漱石の「夢十夜」が原作の『幻日』…それがある時発見され、限定上映される事になる。都市伝説のような作品の幻影を追い求める鈴木氏の眼前に現れた映像とは? まさに水滸伝の好漢たちのように、正史では評価される事のない人々の生きざまに一条の光を当てる、渾身のルポルタージュである。
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ピンク映画出身の監督たちの名前を挙げれば驚くだろう。 若松孝二、武智鉄二、山本晋也、本木壮二郎、高橋伴明、神代辰巳、中村幻児、藤田敏八、長谷部安春、石井隆、金子修介、森田芳光、黒沢清、神代辰巳、瀬々敬久、根岸吉太郎、周防正行、城定秀夫、今岡信治、……まだまだ大勢。にっかつロマンポルノの監督たちは、まさに職人。あ、長谷川和彦。